投資家の目線

投資家の目線770(東条首相の裏ガネとアベノマスク)

 「アジア・太平洋戦争 シリーズ日本近現代史⑥」(吉田裕著 岩波新書)には、陸相を兼ねる東条英機首相は、陸軍省の機密費など(資金源は中国でのアヘン密売の収益という近衛の指摘もある)巨額の資金を使って皇族や枢密顧問官などに「附け届け」し、歓心を買っていたことが書かれている(p68~p69)。

 アベノマスクの差額はどういう使われ方をするのだろう?以前公表された興亜や伊藤忠商事、マツオカコーポレーションの3社にユースビオ社分の4億7250万円( 「アベノマスク4社目・ユースビオ社長 政府との癒着の噂全否定、脱税有罪も激白」 2020/4/27 デイリースポーツ online)を加えても、調達額は100億円に満たない。マスクの確保・配布費用合わせて466億円と見込まれていたので、配送コストを考慮しても相当の金額の使途が不明と言えよう。1973年のソウル地下鉄導入時、安倍首相の祖父岸信介氏など日韓の実力者にリベートを支払うため、日本商社連合が車両価格を水増していた(『<トピックス>切手に描かれたソウル 第14回 「地下鉄ソウル駅」 郵便学者 内藤陽介氏 2011/8/26 東洋経済日報』)ことは以前書いた(投資家の目線733(元KCIA部長の書いた「権力と陰謀」))。裏ガネ作りは得意そうだ。

 限界はあったものの、東条英機には独裁者となる「資質」はあったと思う。「アジア・太平洋戦争」(p78)には、東条が移動や視察に際してはオープンカーを使用したことが書かれている。途中で雨が降ってもオープンのままだったというから相当のこだわりを感じる。DPRKの故金正日総書記は金日成像が中心になるよう空間を設計し、民衆の視線が像に集中するようにしていたと聞いたことがある(隣に他の像を建ててはいけないとも言っていたようだ)。現代より自動車の台数もはるかに少ない中、首相がオープンカーで登場すれば民衆の視線は東条に集中するだろう。東条の曽祖父は能楽宝生流の出であったといわれている(同p79)ので、「視線の集中」への意識は家庭で自然に身に就いた資質ではないかと思う。

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