投資家の目線

投資家の目線475(格差の問題)

 最近ピケティの「21世紀の資本論」という本が話題になっている。その本では資産格差が所得格差を生み、それが資産格差を再生産するということが示されているという。


 「茨城県の歴史」(山川出版社:長谷川伸三、糸賀茂男、今井雅晴、秋山高志、佐々木寛司 P200)には、18世紀後半から19世紀前半にかけて下層農民が没落、離村していったことが書かれている。このような没落、離村農民は潰れ百姓と呼ばれた。持ち高10石以上の農家は家族労働力や馬数に恵まれていたのに対し、10石に満たない農家は労働力など農業経営の基盤が弱く、農業だけでは生活が続けられなかったのである。前者のような資産を持った農家は馬のような「装置」を使って生産性を上げることが出来たが、後者のような資産の少ない農家にはそれが出来なかった。そして、こうした潰れ百姓の増加は残った農家に諸役銭などの負担を増加させた。


 また「栃木県の歴史」(山川出版社:阿部昭、橋本澄朗、千田孝明、大嶽浩良 P253)には、生活苦から働き盛りの中心的労働力が離れた農村では老人と女・子供だけが残り、出生率は激減、生まれた小児の成長率も貧困や流行病のために極めて低くなったことが書かれている。そして人口が減り、労働力が減少することは農業生産に痛手を与え、大きな手作り地・小作地を抱える地主経営も破綻したという。さらに離村農民が流入した都市とその周辺では、物価高騰時に下層民が打ちこわし騒動を発生させるなど治安を悪化させている。


 こうして日本の歴史を見ても、資産格差が所得格差を生んだことが見て取れる。しかし、格差の拡大は社会の維持を困難にさせ、結局富裕層を含めた社会全体を崩壊させていくようだ。
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