投資家の目線

投資家の目線109(明星食品のケースのおさらい)

 ブルドッグソース買収の件で、東京高裁がスティール・パートナーズ(以下SPと記す)を濫用的買収者と認定した。そこで、SPが大株主となっていた明星食品のケースをおさらいしてみる。
 EDINETの大量保有報告書(含む変更報告書)を見ると、SPは2003年11月に明星食品全株式の9.66%を保有する大株主として登場し、2004年12月に保有比率合わせて23.11%まで買い増した。同報告書に登場してから3年たった2006年12月、同社は日清食品に1株当り870円で買収されて、日清食品の子会社となった。SPのファンドは48億円を投入し、85億円を手にしたことになる。
 SPは日清食品の大株主でもある。2005年11月に5.17%を保有する同社の大株主として登場した。2006年11月15日の日清食品による明星食品TOB発表後も、11月16日から21日にかけて日清食品株を797,600株買い増した。同期間の同社の最高値は3,750円、最安値は3,600円だった。また、2006年11月29日の大量保有報告書記載分から2007年4月9日記載分までファンド合計で5,139,950株、取得金額にして207億円増加しており(その間の平均取得単価は4,044円と計算できる)、その時点で14,537,750株(取得金額485億円)と発行済株式数の11.41%を占めるまでになっている。つまり、明星食品の売却によって手に入れた以上の資金を日清食品に投資したことになる。
 これらの状況を見ると、SPは明星食品の1株当り870円という価格は驚くほど割高な価格ではないと考えていたと見られる。もし明星食品の価格が高過ぎるものだったら、日清食品株式を買い増す行動は合理的ではない。少なくとも3,000円台後半、その後の状況を見れば4,000円程度なら、明星食品買収に330億円程度かかっても日清食品株式は割安と考えていたと解釈できる。7月13日の大量保有報告書では14.89%まで買い増しているのだからなおさらだ。もっとも、2006年9月期の連結貸借対照表を見ると、明星食品は現預金95億円、投資有価証券を41億円保有する一方、有利子負債は21億円(短期借入金17.8億円、長期借入金3.5億円)に過ぎず、実質的な買収金額はさらに少なかったと見なすことができる(なお、本社は明治通り沿いで山手線原宿駅から徒歩7分といったところか)。

 このように見てくると、売却益があったといってもSPが極端に高い価格で明星食品株を日清食品に売りつけたわけではないと判断される。また高裁の決定要獅ノ「様々な策を弄して」とあるが、交渉事では「対話と圧力」があるのは普通だろう。ただ取得価格より高値で売却したからといって、濫用的買収者と判断するのはいかがなものか。国債のような安全資産と比較して、リスクに見合った収益が上げられない企業は社会的に存在意義が薄いと考えられる。歴史が長いといっても、そのような企業をどこまで守る必要があるのだろうか。
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・政治的案件であるNHKの機能縮小や新聞の特殊指定廃止は選挙戦の争点にならないのかな。
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