投資家の目線

投資家の目線303(思いやり予算承認、原発事故)

・思いやり予算

 先月31日、米軍に支払ういわゆる「思いやり予算」特別協定が国会で承認された。年間約2,000億円を今後5年間支払うことになる。震災復興資金には少ないが、助けにはなる額だ。
 震災の発生で陰に隠れたが、3月初旬には国務省のメア日本部長(当時)の発言が問題視された。3月8日の琉球新報(電子版)が伝えるメア氏講義のメモには次のような文言があった。

引用開始

 私は、日本国憲法の9条が変わるべきだと思わない。私は、そもそも9条が変えられることを疑問に思っている。もし日本が米軍を必要としないことを理由に改憲したのなら、米国にとってよくないことだ。もし改憲したら、米国は米国の利益のために日本の土地を使用することはできなくなるだろう。日本政府が現在、支払っている高いホストネーションサポート(接受国支援)は米国にとって有益だ。私たち米国は日本に関して非常によい取引を得ている。


引用終了

 米国が自国の利益のために日本の土地を使用するのなら、高額の思いやり予算(ホストネーションサポート)を支払う必要はないはず。その分、原発事故の処理に米軍の手を借りなければならなかったのは影響が大きい。支援自体はありがたく、行方不明者の捜索などの災害援助は太平洋地域で米国と協力することでお返しはできそうだが、核の分野はそれと異なり、米国へのお返しが難しい分野と思われるためだ。今回は思いやり予算の承認に反対しづらい状況になってしまった。


 また、先月は前原外相が辞任した。前原大臣の発言としては、昨年10月1日の記者会見における次の発言を記憶しておきたい。

外務省HP 2010年10月1日前原外務大臣記者会見(日米関係)より引用

引用開始

【大臣】私(大臣)とクリントン国務長官との話をする前に、米国の政府高官から尖閣に関わる日米安保第5条の適用範囲について、明確にコミットメントする発言をしているということですので、是非それについて確認をさせていただきたいと思いまして、私(大臣)の方から会談で取り上げさせていただきました。まず私(大臣)から取り上げたのは、「米政府高官がこの尖閣問題に関して日米安保条約第5条の適用範囲であるということを仰っていることに敬意を表する」ということを私(大臣)が申し上げたところ、クリントン国務長官から、「領有権について我々はコメントはしない。しかし、尖閣は日本の施政下であり、日本の施政下に対して安保条約第5条が適用される」と。すなわち、尖閣列島は安保第5条の適用範囲であるということをクリントン長官が述べられたということでございます

引用終了
(太字は当方でつけた)

 結局、クリントン長官の発言は当時のクローリー国務次官補の発言と異なることはない。尖閣列島が現在日本の施政下にあるから安保の対象になる。このとき単に「尖閣列島は安保第5条の適用範囲である」という表現だけが取り出された報道は、日本の施政下にあるか否かに関わらず日米安保の対象になるかの印象を受け、ミスリードにつながると思う。


・原発事故

 福島の原発事故について初動体制が問題視されている。菅首相の福島原発視察については「ベント」が遅れたという批判もあるが、3月25日のダイヤモンド・オンラインでは、

世界が震撼!原発ショック 悠長な初動が呼んだ危機的事態 国主導で進む東電解体への序章 ダイヤモンド・オンライン 2011/3/25


引用開始

「ベントをやらなければならなかったが、本店は非常に消極的」(政府関係者)

―― 中略 ――

「しかし、本店を経由してしか現地に連絡できなかった。だから12日朝、菅直人総理がヘリで現地に飛び『ベントしろ』と言った。吉田所長の背中を押しに行ったんだ」(政府関係者)

引用終了

と報じられている。前者であれば原発に行かないのが正しく、後者であれば行くことは正当化される。どちらが正しいのかよく分からない。
 それより次のロイター記事の方が問題だ。

特別リポート:地に落ちた安全神話ー福島原発危機はなぜ起きたか ロイター 2011/3/30

引用開始

そもそも、政府の対応を決める原災法自体が、原子炉が制御不能になる事態を想定していない。菅直人首相は11日、同法に従って原子力非常事態宣言を出した。「原災法のもともとの狙いは、原発事故の際の地域住民の避難や屋内退避をどのように行うのかという点にある。制御不能になった原子炉そのものをどうやって止めるのかは主眼に入っていない」と経産省のある幹部は明かす。「誰もリアリティを持って、法律を作らなかった」(同)のである。

引用終了

 これでは、廃炉を前提とするような決断は電力会社の経営陣にしかできないことになる(それはそれでありだが、その場合、全ての責任は電力会社で負うべきだ)。避難誘導には電力会社から発電所内の状況がどうなっているのかという情報が、すばやく政府に伝わることも大切だ。その観点からすると今回の東京電力の対応には疑問が残る。深刻な原発事故への対応が電力会社という私企業の能力に余るのならば、法改正を含めたシステムの変更が必要だ。

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福島原発の冷却に、中国の三一重工が無償提供したアームの長さが62メートルあるポンプ車が稼動し始めた。この件については日本のメディアが報道しないので、少しでもこの話題を広めることで感謝の意を示したい。

・日本政府が中国の海軍病院船の派遣を断った。港湾への横付けが難しいためとのことだが、地域のパワー・バランスへの影響を危惧する勢力もいるのかもしれない。一方、イスラエルの医療チームは受け入れる。この違いはどこから来るのか?

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