投資家の目線

投資家の目線973(平壌でのW杯予選中止)

 平壌でのサッカー・ワールド・カップ(W杯)2次予選日本対朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)が中止になった。理由として、日本における劇症型溶血性レンサ球菌感染症の流行を挙げている(「【日本代表】北朝鮮が警戒する劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?人食いバクテリアとも…」 2024/3/23 日刊スポーツ新聞社)。DPRKといえば、新型コロナウイルス感染症対策として厳重な出入国制限を行っていた。その結果同国では、副作用の報告があるワクチンに、頼らない防疫体制が確立された。また、新型コロナウイルス流行を理由としてカタールW杯予選や東京五輪をボイコットしていた(【サッカー】北朝鮮が東京五輪に続きW杯予選もボイコット決定|東スポWEB 2021/5/3)。2019年12月には、東京五輪女子サッカー最終予選も不参加だった(「北朝鮮サッカー女子欠場へ 東京五輪の最終予選」 2019/12/26 産経新聞)。理由は不明だが、その頃には中華人民共和国(中国)武漢市で新型コロナウイルスによる肺炎の流行が始まっていた。スポーツイベントより防疫を優先するのは当然だ。

 

 以前書いたが、朝鮮戦争当時、細菌兵器の使用が取りざたされていた(投資家の目線968(「七三一部隊の生物兵器とアメリカ バイオテロの系譜」)。米国が細菌戦争の手段を使っていると中国が主張していたことは、英国の首相を務めたイーデンの回顧録(「イーデン回顧録Ⅰ 運命のめぐりあい 1951~1955」 湯浅義正・町野武訳 みすず書房 p17)にも書かれている。DPRKの現在の統治機構は、その当時の防疫体制がもとになっているという。DPRKは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症を新型コロナウイルス並みに危険なものと見ているのではないだろうか?

 

 DPRKの金与正氏の談話(『北朝鮮、日本との交渉を「拒否」 金与正氏がまた談話』 2024/3/26 日本経済新聞電子版)に続いて、同国外相も日本との対話に関心がないと表明した(『北朝鮮外相「日本との対話に関心なし」、拉致問題協力せず=KCNA』 2024/3/29 ロイター)。同国外務省は、西側諸国に対して否定的な発言をする傾向があるが、与正氏の発言と違って、同国の公式見解とは採れる。ロシアのプーチン大統領が、『「朝鮮民主主義人民共和国は独自の核の傘を備えている」と述べた』(『プーチン大統領の「北朝鮮独自の核の傘」発言の思惑とは…「韓国を揺さぶること」』 2024/3/15 ハンギョレ新聞)という。ロシア政府は、DPRKが友好国に対して「核の傘」を提供できるほどの核兵器大国になったことを認めたようだ。核兵器保有国でも、DPRKほどのミサイル技術を持たない国もある。そのような国はDPRKに接近する道を選ぶだろう。DPRKにとっては、どうしても日本との関係改善に固執する理由に乏しい。

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