投資家の目線

投資家の目線431(東京五輪と財政負担)

 猪瀬都知事が9月15日のテレビ番組で、『都が整備する競技施設などについて「(約四千億円の五輪開催準備)基金の中で何とかやらないといけない。資材価格が上がっているから、きちんと精査したい」』(2013/9/16東京新聞朝刊)と発言した。約4,000億円の基金があるとはいえ、インフレが発生すれば、建築資材価格や建設労働者の賃金が上昇して今までの見積もり額を超えることになる。

 また、安倍政権が消費増税と同時に景気対策として財政政策を行おうとしているが、それでは小さな政府ではなく、政府の裁量が大きくなる大きな政府の誕生ではないか。


 三上隆三著「江戸幕府・破産への道」によれば、米価引き上げ・不況対策を狙う物価水準引き上げを狙った元文の貨幣改鋳のとき、ギャロップ・インフレが発生した。元文の改鋳は出目(通貨発行益、中央銀行が買い入れた国債からの利息等)を狙ったものではないが、それでも若干の出目があったという。そして、同書では「元禄大改鋳を除いては、出目を求めての改悪鋳も、悪戦苦闘にもかかわらず、それに続くインフレによって出目がかなり相殺されてしまい、あたかも穴のあいた容器に注水するようなもので、幕府財政の頼り甲斐のある援助手段にはなりえなかったということになる」と総括している。インフレは過去の債務を清算するだけなら実質的な債務の軽減に役に立つかもしれないが、新規事業のコスト増になり、財政負担の軽減にはならないのだろう。
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