投資家の目線

投資家の目線872(最近の中東に関する記事)

 トルコが、サウジアラビアの記者、カショギ氏殺害の審理をサウジアラビアに移管した。「カショギ氏はサウジの実力者、ムハンマド皇太子に批判的で、米紙にも寄稿していた。」(「トルコ、中東諸国と改善急ぐ 記者殺害の審理はサウジへ」 2022/4/7 日本経済新聞WEB版)人物だ。米国では、当時のトランプ大統領はムハンマド皇太子と友好的であったが、「民主党幹部らはトランプ氏がムハンマド皇太子への対応を怠っていると批判、米国はサウジへの支援を打ち切るべきだと主張した」(『米大統領「サウジとは堅実なパートナー」、皇太子が記者殺害把握でも』 2018/11/21 ロイター)。バイデン大統領就任の直前、『米国務長官などを歴任したヒラリー・クリントン氏は13日木曜、自身のツイッターにおいて、サウジ総領事館での殺害の瞬間までのカショギ氏の人生を描いたドキュメンタリー映画「The Dissident」の広告を掲載して、「サウジ政権がカショギ氏暗殺の責任者である」としました』(「ヒラリー・クリントン氏が、サウジのカショギ氏暗殺を認める」 2021/1/14 Pars Today)、「サウジの人権問題に関心を示すバイデン米政権は21年2月に公表した報告書で、カショギ氏の殺害は皇太子が直接承認したと断定した」(「トルコ、中東諸国と改善急ぐ 記者殺害の審理はサウジへ」 2022/4/7 日本経済新聞WEB版)。このように、米国の民主党はムハンマド皇太子に批判的であったため、『皇太子はサウジへの投資に消極的になった米欧に不満を示し、経済面での協力拡大に前向きなロシアを「真の友人」と呼んだこともある』(『中東、増産しない理由(上) 「協調減産で成功」引きずる』 2022/4/12  日本経済新聞朝刊)という事情も理解できる。ウクライナで事変が発生した初期から、サウジアラビアとロシアの関係は強固だった(「ロシアとプーチン氏がサウジ皇太子と電話会談、同盟関係の強化を図る」 2022/3/4 Bloomberg)。3月末のOPECプラスの会合でも、「決定に先立ちOPEC加盟国のサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は、エネルギー市場におけるロシアとの協力関係を維持し、増産して西側諸国を支援することはしない意向を表明していた。」(「OPECプラス、追加増産見送り 原油価格急騰でも」 2022/3/31 ダウ・ジョーンズ配信)。サウジアラビアはエジプトに経済援助を行い(「[FT]サウジアラビア、原理主義弾圧のエジプトへ経済支援」 2022/4/1 日本経済新聞WEB版)、同国石油大手のサウジアラムコは中国石油大手のシノペックと長期協力の強化で合意している(「中国石油化工とサウジアラムコ、長期協力に関する覚書締結」 2022/3/10 新華社)。米国の政権交代の影響を緩和するため、サウジアラビアにとって、中国との関係は長期的な戦略に基づくものだろう。

 「トルコの強権体制を懸念するバイデン政権との関係が悪化。パレスチナを圧迫するイスラエルを批判していたが、同国がアラブ諸国との和解を進めるとトルコの孤立が鮮明になった。2月にエルドアン氏がUAEを訪問して和解を演出した。3月にはイスラエルのヘルツォグ大統領をトルコに招いた」(「トルコ、中東諸国と改善急ぐ 記者殺害の審理はサウジへ」 2022/4/7 日本経済新聞WEB版)。トルコ政府はギュレン運動を2016年7月のクーデター未遂事件の主犯として批判している。そして次のように、ギュレン運動は民主党のヒラリー・クリントン氏と親密である。「ギュレン運動は先進国の中でもとりわけアメリカとの関係が深い。ビル・クリントン政権と良好な関係を築いたと言われており、クリントン政権下の1999 年にギュレン師は病気療養のためにアメリカに渡り、現在もペンシルヴァニア州に滞在している。2016年のアメリカ大統領選挙でも、ヒラリー・クリントン陣営にはアメリカのギュレン運動関係の団体から多額の献金があったと報道されている[Hürriyet Daily News 2016]。」(「なぜアメリカとトルコの関係は悪化したのか」 今井宏平 立教アメリカン・スタディーズp132)。バイデン政権はサウジアラビアとトルコ共通の敵といえる。また、トルコはベネズエラのデルシー・ロドリゲス副大統領とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談していた場所だ(『対ロ「戦略的関係」を確認 ベネズエラ』 2022/3/11時事ドットコム)。

 イエメンでは、ハディ大統領が、フーシ派の反発の強いアルアフマル副大統領を解任するとともに、自らの権限を大統領評議会に委譲。『フーシ派の交渉責任者は今回の動きを茶番とし、「外国の傭兵を再編するための必死の試み」だと非難した。サウジ政府は評議会に対し、イランと連携するフーシ派と「最終的かつ包括的な解決に向けて」交渉するよう求めた』(「イエメン大統領、評議会に権限移譲 内戦終結へサウジは協議訴え」 2022/4/7 ロイター)という。一方イランは、追加制裁など米国との関係改善が進んでいない(「米、イランに追加制裁 弾道ミサイル開発めぐり」 2022/3/31 日本経済新聞WEB版)。イエメンでの動きは、サウジアラビアがイランとの関係改善を目指す動きの一環ではないだろうか?

 サウジアラビアと連携するUAEのアラビア首長国のムハンマド皇太子は、ロシア非難の国連決議に反対したシリアのアサド大統領と会談し(「シリア大統領がUAE訪問 内戦後初、首脳会談」  2022/3/19 日本経済新聞WEB版)、エジプトのシシ大統領やイスラエルのベネット首相と会談し(「エジプト・イスラエル・UAE首脳が会談 食糧供給めぐり」 2022/3/22 日本経済新聞WEB版)、アブダビの政府系ファンドはイスラエル企業に出資している(「[FT]アブダビ、イスラエルのスパイウエア企業に出資」 2022/4/4 日本経済新聞WEB版)。

 中東は欧米諸国とは独立した動きをしているようだ。

追記:2022/4/18
 イエメンの政変の影に、サウジアラビアの圧力があったと報じられている(「イエメン大統領の権限移譲、サウジ政府が圧力か」 2022/4/18 ダウ・ジョーンズ配信)。サウジアラビアは、イランとの関係改善を目指しているのだろう。

2022/4/24

↓やはりサウジアラビアとイランは関係改善を目指すのか
 
Iran and Saudi resume talks to repair ties, cut  Mideast tensions 2022/4/23 Bloomberg
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「政治」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事