今月から、特定の産地と結びついた農水産品を「地理的表示」に認定する制度が始まった。不正使用は国が直接取り締まり、違反者には懲役や罰金も科して国が産地を守るという(「地理的表示」きょうから、農水産ブランド、国が守る、黒酢・かぶせ茶…産地を強く。 2015/6/1 日本経済新聞朝刊)。
「国税庁は11日、外国産の清酒との区別を明確にするため、国産米や国内の水を使って国内で醸造された清酒だけを「日本酒」として販売できるようにする方針を固めた」(「日本酒」名乗り、純国産だけ、国税庁、秋にも、輸出増へブランド保護。 2015/6/11 日本経済新聞夕刊)という記事も、「地理的表示」認定制度に関わるものだろう。
また、「多胡本家酒造場(岡山県津山市)は焼酎やビールのOEM(相手先ブランドによる生産)の受注を拡大する。全国から豆や芋、根菜などを送ってもらい、焼酎やリキュールにして出荷する」(2015/6/13 日本経済新聞地方経済面中国)という事業を行なおうという企業もある。この場合、「地理的表示」はOEMの発注元になるのだろうか、それとも製造業者のある岡山になるのだろうかという疑問もある。
以前ブログに書いたが、「福島県の歴史」(山川出版社:丸井佳寿子、工藤雅樹、伊藤喜良、吉村仁作 P201~P202)に、品質の悪い偽ブランド品を防ぐために幕府に冥加金を支払い、福島の信達産蚕種は良種として本場銘を記入することが認められたが、冥加金の納入が必要な本場種は価格が高くなり、安い他産地の蚕種との競争に負けるようになったことが書かれていた。「地理的表示」が認定されても、コストパフォーマンスが悪ければ産地間競争に負けてしまうだろう。
投資家の目線470(農産物のブランド化) 2014/6/29
また、「地元メディアが最近、当局が同社の一部製品から許容量を超えた水準のうま味成分、グルタミン酸ナトリウム(MSG)を検出したと報道」(ネスレ・インディア、即席麺20万袋の回収命令受ける(フラッシュ) 2015/6/1 日経産業新聞)されているという(ただし、「FSSAIが問題とするのは、(1)許容量を超える鉛と、(2)MSG無添加とうたう製品からMSGが検出されたこと」と報じられている ネスレ「マギー」、販売停止命令、即席麺インドでピンチ―安全局が調査拡大、日清食品も対象(アジアFocus) 2015/6/14 日経MJ))。後者の記事には『MSGは一般に「許容量を設ける必要のない安全な物質と国連機関にも認められている」(日本うま味調味料協会)』とあるが、世界にはMSGを好ましく思わない人々がおり、「NO MSG」をうたい文句にしている食品やレストランもあると聞く。MSGに無頓着な日本発の食品がどれだけ世界で受け入れられるかは疑問である。
さらに『米食品医薬品局(FDA)が16日、「トランス脂肪酸」の食品添加物を2018年6月から原則禁じると発表した』(米「トランス脂肪酸」禁止、食品・外食、使用削減急ぐ。 2015/6/18 日本経済新聞朝刊)。しかし日本では、『厚生労働省は「日本人の通常の食生活で健康への影響は少ない。現時点で規制を導入する予定はなく、今後も継続して検討すべき課題」とする』(米「トランス脂肪酸」禁止、食品・外食、使用削減急ぐ――山崎製パンや日本KFC、製造過程で改良。 2015/6/18 日本経済新聞朝刊)という。日本製食品にトランス脂肪酸が含まれる場合、その食品は米国に輸出できないことになる。それを避けるには、現地で日本食を製造するか、日本の工場にトランス脂肪酸を使用しない専用ラインが必要になる。しかし、3月には台湾で、福島第1原子力発電所の事故以降輸入が禁止されている福島、茨城、栃木、群馬、千葉で生産、製造された食品が産地を偽装され流通していた問題が発覚した(馬総統「日本食品への規制緩和、産地偽装問題解決後に」/台湾 2015年5月14日 中央社フォーカス台湾 )。こんな偽装がまかり通る日本製食品を、「トランス脂肪酸を使用していません」と表示しても外国では信用されないのではないだろうか。「地理的表示」だけでなく、いろいろ改善しなければ日本からの食品輸出は難しいと思う。
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・先週の円安を要因とする悪影響・値上げ発表等記事
砂糖卸値―原料下落も円安で相殺(市場の話題) 2015/6/16 日経産業新聞
ブルドックソース、25年ぶり値上げ、8月に3~9%。 2015/6/16 日本経済新聞朝刊(円安や世界的な需要増による原材料の高騰が理由)
合成ゴム原料13円値上げ、東海カーボン、来月から。 2015/6/16 日本経済新聞朝刊(原料価格が為替の円安で上昇しているため)
円安に渋い表情 世界進出も視野。 2015/6/17 日本経済新聞地方経済面北関東(ファームドゥの岩井社長「輸出はないのに輸入はあるので、ドルの支出だけが増えている。現在の円安は進み過ぎだ」)
木材―ホームセンターで値上がり(店頭サーチ) 2015/6/18 日本経済新聞朝刊(円安の進行で輸入コストが上昇しているため)
中小の景況感 小幅に改善 県内5月。 2015/6/19 日本経済新聞地方経済面静岡(円安で原材料コストが上昇。「仕事量を確保できても利益が伴っていかない」(生産用機械器具))
日本に逆輸入、円安重荷―日本貿易振興機構海外調査部アジア大洋州課課長池部亮氏(中小企業海外展開のツボ) 2015/6/19 日経産業新聞
缶リサイクル、円安の余波―輸出増で国内循環に危機感(サーチライト) 2015/6/19 日経産業新聞
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