投資家の目線

投資家の目線727(イタリアの少額債券)

 イタリアで、政府が少額債券を発行して民間企業への未払い金や市民への税還付にあてる案が浮上し、「第2の通貨」とみなされている(『伊、財政難で「第2の通貨」案、少額債券、未払い金・税還付に、EU、ルール逸脱懸念。』 2019/6/20 日本経済新聞 朝刊)。欧州は国ごとに景気や財政の状況が異なり、イタリアの現状は「第2の通貨」を発行してでも景気振興を図る必要があるのだろう。

 日本でもこの少額債券と似た例を聞いたことがある。地域振興券だ。そのもともとのアイデアは、手間がかからないように税の還付を小切手で行おうというもので、それが政治の手によって地域振興券に化けたのだという。イタリアの少額債券を「第2の通貨」と呼ぶのなら、地域振興券も「第2の通貨」だ。このような「通貨もどき」でも、発行額が大きくなればマネーサプライに加えた方がいいのではないかと思う。

 ユーロという共通通貨を持ちながらローカル通貨を発行するのは、江戸時代の藩札に似ている。仙台藩の蔵元升屋が金一切・金二朱の二種の為替手形を発行、この為替手形はいつでも小判に引き替えることができるので、兌換できる実質的な藩札になっている(「宮城県の歴史」 渡辺信夫、今泉隆雄、大石直正、難波信雄 P232 山川出版社)。鍋島藩では幕府が藩札の新規発行を禁止していたので米筈(米札)という形で実質的な藩札を発行した(「佐賀県の歴史」 杉谷昭、佐田茂、宮島敬一、神山恒雄 P209 山川出版社)。通貨の形をとらなくても実質的な通貨になる例は割とある。
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