日本でもこの少額債券と似た例を聞いたことがある。地域振興券だ。そのもともとのアイデアは、手間がかからないように税の還付を小切手で行おうというもので、それが政治の手によって地域振興券に化けたのだという。イタリアの少額債券を「第2の通貨」と呼ぶのなら、地域振興券も「第2の通貨」だ。このような「通貨もどき」でも、発行額が大きくなればマネーサプライに加えた方がいいのではないかと思う。
ユーロという共通通貨を持ちながらローカル通貨を発行するのは、江戸時代の藩札に似ている。仙台藩の蔵元升屋が金一切・金二朱の二種の為替手形を発行、この為替手形はいつでも小判に引き替えることができるので、兌換できる実質的な藩札になっている(「宮城県の歴史」 渡辺信夫、今泉隆雄、大石直正、難波信雄 P232 山川出版社)。鍋島藩では幕府が藩札の新規発行を禁止していたので米筈(米札)という形で実質的な藩札を発行した(「佐賀県の歴史」 杉谷昭、佐田茂、宮島敬一、神山恒雄 P209 山川出版社)。通貨の形をとらなくても実質的な通貨になる例は割とある。
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