米国がバイアメリカン政策を採ることは批判できない。「一九五七年までに、ヨーロッパ諸国と日本は経済の再建を終わり、高能率の工場と低い労賃でわれわれと貿易戦争を始めた。この結果、アメリカの輸出黒字は減少し、一九五七年の六十億ドルから一九五九年には九億一千万ドルに落ち込んだ」(「アイゼンハワー回顧録2 アメリカ6」 仲晃、佐々木謙一、渡辺靖訳 みすず書房 p527)と、国際収支不均衡の問題はアイゼンハワー政権時代から存在していた。その結果、「こうした国際収支の弱い基調が続くにつれて、ますます多くの人びと―伝えられるところによるとその一部はアメリカ人だった―が外国市場でドルを金(きん)に替え、一九五八年から六〇年の間に合衆国は約五十億ドル相当分を失った。こうした金の流出を招いた理由の一部は、ドルの平価切り下げの可能性に対する不安―ないしは投機―であった。(中略)われわれは、海外でドルがフラン(フランス)やリラ(イタリア)など他の通貨の裏付けになっていることを知っていた。もし世界中の人びとがドルへの信頼を失い、金へのだ(兌)換にワッと集中してくれば、自由世界の通貨制度は崩壊してしまうだろう」(同p528)と懸念を表明していた。国際収支を均衡させれば、米国連邦政府はUSダラーの安定に悩まされることもなくなるだろう。今まで、日本をはじめとする外国政府は米国との国際収支不均衡の是正に大して協力してこなかった。
国際収支の問題だけではない。最近では、国際物流のひっ迫も自給の重要性を再認識させる。「米カリフォルニア州南部の港では約100隻のコンテナ船が荷揚げを待っており、渋滞解消には予想以上に時間がかかる可能性があるとシティは指摘する」(「【市場の声】米加州の港湾渋滞、解消に時間かかる可能性」 2022/1/13 ダウ・ジョーンズ配信)と、物流ひっ迫終息の見通しはまだ立っていない。以前にも書いたが、伊ベネトンなどグローバル企業がより近い国に生産拠点を移転する動きをしている(投資家の目線849(見直される国際分業体制) 投資家の願い)。欧州でトルコから衣料品輸入が増えているのもその流れに沿ったものと言える(「新型コロナ: トルコ衣料品製造沸く 欧州の輸入、アジアからシフト」 2021/11/17 日本経済新聞WEB版)。
日本は米国から遠く、米国向けの生産拠点としては適さない。対米貿易が細るなか、今後の東アジアでは輸出に頼る国より、自給型で米国との貿易が少ない朝鮮民主主義人民共和国のような国が有利になるのではないだろうか?
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