投資家の目線

投資家の目線322(早期の脱原発に備えましょう)

 九州電力の隠ぺい工作事件で、指示した中村明原子力発電本部副本部長(上席執行役員)が解任される。この問題では、古川康佐賀県知事が九電副社長との会談で、メールで原発運転再開の賛成意見を出すよう促したととれたり、県議らへ原発運転再開支持の働きかけを求めたりするメモがあったと報道されている。現状では玄海原発の運転再開は難しいだろう。

 福井県では、敦賀市とは異なり、原発に隣接する小浜市や越前市の議会が脱原発の意見書を可決している(2011/6/29 福井新聞web版)。

 石川県の志賀原発では、地域金融機関の首脳が「トラブルが多すぎる」と不満を漏らしている(2011/7/7日本経済新聞(地方経済面 北陸版))。

 茨城県東海村の村上村長は、「日本で原発を保有するのは危険が大き過ぎる。『脱原発』の思想、理念に市民権を与え、国民全体で真剣に考えるべきだ」と発言している(2011/8/2 茨城新聞web版)

 事故のあった福島県は復興ビジョンの基本理念に「脱原発」を掲げた(2011/8/11 共同通信)。同県では放射線を気にして他県に転居する人たちがいる(2011/8/6 日本経済新聞 夕刊)

 北海道の高橋知事は泊原発の再稼動を容認する模様だが、原発関連情報や原発がらみの交付金を受ける10キロ圏内と異なり、そこから外れるニセコや倶知安の町長は道や北海道電力から情報などが得られず、強い不満を持っている(後志・泊10キロ圏外の町村 道・北電に協議要請へ 「無視され 言葉にならぬ」2011/8/12北海道新聞)。原発が稼動すれば、南半球など海外からの観光客の多い「ニセコ」ブランドは保てるのだろうか?

 静岡県知事の原発対応についてのアンケートで、静岡県内企業は支持する方が多い(2011/7/5日本経済新聞(地方経済面 静岡版))。自動車メーカーのスズキは、浜岡原発で事故があった場合に備え、静岡県内の拠点の分散を考えている。浜岡原発の停止問題が起きてから、「拠点を静岡県外につくりたい」という声が増えたという(2011/8/2日本経済新聞(地方経済面 静岡版))。大手企業なら拠点分散も可能だが、下請け・孫請けの中小零細企業にとって工場移転は厳しい。それくらいだったら、浜岡原発を廃炉にした方がマシということになるだろう。

 不二家の子会社が鳥取市内に拠点を設けた理由として、付近に原発がないことをあげている(2011/6/29 asahi.com My town 鳥取)。財界は電力の必要性を訴えているが、企業のほうは「脱原発付近」を始めている。企業が進出候補地から原発に近い地域をはずすことは十分考えられる。地域に原発を抱えることは、原発関連以外の地域の雇用に悪影響を与える可能性が大きく、割に合わない。地元が原発の運転再開を認めなければ、結果的に脱原発が達成されることになる。やはり脱原発に備えた方が良い。

追記:
 泉田新潟県知事も柏崎刈羽の再稼動を認めない方向だ(2011/7/26 読売新聞web版)。柏崎市には、ピストンリングのリケンなど原発関連以外の企業もある。新潟県民に選ばれた知事として地元の雇用や安全を守る姿勢は当然だ。それに引き換え、他の知事がこの当たり前のことができるのか?

 18日の毎日jp(鹿児島)は、川内原発の再稼動、増設反対の請願・陳情に対して、県議会が10月に原子力安全対策等特別委員会を開催すると報道している。

 ヤマハ発動機も地震、津波、放射能、液状化の被災想定を評価し直している(2011/8/16 日本経済新聞 地方経済面 静岡版)。






 2011/8/14の日本経済新聞朝刊に「原発賠償条約、加盟へ」という記事があった。米国の原発事故賠償金額には約1兆円の上限があり、日本が東京電力を破綻させない賠償スキームをとるのもそれとの整合性だろうと思う。この原発賠償条約加盟も、日本を米国のビジネススタイルに合わせる一環であろう。

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・8月8日の衆議院予算委員会で、菅総理が沖縄で死亡事故を起こした米軍属男性に対する米軍の処罰が弱いと発言した。日米地位協定のためその男性は日本で不起訴になったが、その後の処分に対して不満を漏らしたのだ。鳩山政権誕生時の連立三党合意は、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地の在り方についても見直しの方向で望む」だった(辺野古移設見直しではない)。菅総理も開き直ったようだ。
 
 8月14日の琉球新報をはじめとする沖縄各紙は、元在沖米軍人が枯葉剤を生めたという証言を報道している。今年、大韓民国でも同様の話があったので、やっぱりそうかと思う。


・8月5日の週刊金曜日、佐藤優氏の「丹波実元外務審議官による孫崎享批判の陰険さ」というコラムを見た。丹波氏の批判する孫崎享氏の著書「日本の国境問題」(ちくま新書)は既に読んだ。同書は国境問題に関する争点を整理するうえでよい本だと思う。
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