投資家の目線

投資家の目線805(サウジアラムコと人民元)

 昨年、日本経済新聞にサウジアラムコが人民元の調達を準備しているのではないかという記事が出た。「アラムコが今月、投資家向けに配った社債発行の資料で将来の人民元建て発行の可能性を明記した。送金制限や流動性、為替変動リスクがあることも説明している。元を調達する時期や規模は現時点では明らかにしていないが、実現すればアラムコと同社の株式の大半を握るサウジ政府にとって資金調達の多様化につながる。アラムコにとって、原油や石油化学製品の需要が底堅いとされるアジアの重要度は増している。サウジなど産油国の政府ファンドは中国への投資を拡大し、運用面でも関係が深まる。(中略)原油の売買の決済ではドルが用いられるため、多くの産油国は自国通貨をドルにペッグ(固定)し、輸入国は危機時に備えて外貨準備をドルで積み上げている」(「サウジアラムコ、人民元調達準備」 2020/11/21 日本経済新聞朝刊)という。

 米国はトランプ政権でもバイデン政権でも「バイ・アメリカン政策」を推進しようとしている。そのため、原油の輸入国は貿易によって外貨準備をドルで積み上げることが困難になってきている。昨年12月16日には米財務省はベトナムを為替操作国に認定するなど(「米、ベトナムを為替操作国に 対米貿易黒字が日本超す」 2020/12/17  日本経済新聞WEB版)、特別扱いはしない。車社会の米国はガソリン価格が家計に直結するため、天然ガスは輸出しても石油を輸出するとは思えない。輸入国にとってドル決済が困難になれば、製品輸出に見合う量の原油を売ってもらうか、再生可能エネルギーや石炭液化などで人工的に石油を作り出すなどして石油頼みでないエネルギー政策を構築するか、ドル以外の決済通貨を獲得するかしか方法がなくなるのではないだろうか?ただし、中東でも若者の失業が問題になっており、製品輸出より雇用を拡大させる投資の方が喜ばれるだろう。その場合、原油輸入国の雇用にはあまり結びつかない。

 記事のように、石油分野でアジア市場の重要度が増しているのなら、原油の決済で大国中華人民共和国の通貨、人民元の利用が進んでもおかしくはない。

 なお1月2日には、中華人民共和国の高級車ブランド「紅旗」の自動車400台がサウジアラビアに輸出されたことが報じられた(『中国一汽集団の「紅旗」、サウジ向け400台が天津港を出港』 2021/1/2 - 新華社通信 )。
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