投資家の目線

投資家の目線151(Jパワーの役員人事と天下り、TCIの提案)

 4月30日にJパワーの役員人事が発表された。大蔵省OBの松下康雄監査役が退任し、JASDAQ会長を退任する藤原隆氏が監査役に内定している。藤原氏は元金融庁審議官で大蔵省OBだ。天下り先であるJASDAQがなくなろうとしているとは言え、TCIとの対決が注目されているなかで、天下りの順送りのような人事をするとは・・・。ちなみに常務に昇格する藤富正晴取締役も通産省OBである。
 繰り返すようだが、TCIの提案は次の観点から理にかなっていると思う。

ご参考:「J-POWER事業計画 - 経営陣が検討するべき事項」 2008.03.27

http://www.tcifund.jp/pdf/news_jp14.pdf


1.資本コストの削減
 倒産コストがそれほど大きくならなければ、負債利用により加重平均資本コスト(WACC)(ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法における割引率)が低下し、キャッシュフローの割引現在価値は上昇するため企業価値は上昇する。

2.国外投資
 正味現在価値(NPV)法を使えば、国外投資のようにリスクの高い事業には高めのリスクプレミアムをつけた割引率を使用することで投資が、リスク調整後で不採算と判断される場合もある。昨年、プラント事業で大幅な業績の減額修正をした企業がいくつかあった。高めのリスクを織り込んで見積もりをしていれば、あそこまで大事にならなかったかもしれない。

3.余剰資産
 ジェンセンのフリーキャッシュフロー仮説からいえば、内部留保が過剰になると有益ではない投資に使われることも多い。平成16年にあった中部電力の中国古陶磁購入問題を思い出す。この観点から、持合株式の制限、自社株買いや増配は支持される。
 なお株式持合についてJパワー側は、「民間企業としての電気事業分野における業務の安定的遂行、効率化および高度化、そして、その周辺分野でこれまでに狽チた人材とノウハウを活かせる新しい事業の創出は重要な経営課題の一つで」、「国策会社の時代には電源開発促進法が当社事業の範囲を規定しておりましたため、当社の経験やノウハウは極めて限定されておりました。このため、民間企業としての事業推進の観点から、当社は他社との連携を積極的に進める戦略を採用しており、そのための一つの方法として、シナジーの期待できる企業の株式を取得することも適宜実施しております」(JパワーHP「株主提案に対する当社取締役会の意見について」2008年4月30日)として正当化しているが、そのような経験やノウハウを持っている人材を適正な報酬で中途採用することでも取得できると思うが、そのような取り組みはされているのだろうか。

4.ROE目標
 当期純利益は負債資本提供者へのリターンである支払利息や、租税を差し引いたものであり、役員賞与の支払いにも充てられるが、基本的には株主に帰属する。したがって、当期純利益を株主の資本で除して求めるROEは、株主が重視する指標として適当である。また、ROAが負債利子率より高ければ、負債比率を高くすることでROEは上昇する。

 JパワーはTCIの提案を「株主の皆様共同の利益の最大化を妨げる」として反対しているが、利益の最大化と言ってもそのためのリスクが過大であれば、ふさわしい状況とはいえない。どうリスク管理が行われているかの説明も必要であろう。
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・4月末、東和銀行が前頭取に対して不適切融資の損害買収請求の手続きを開始した。前頭取は旧大蔵省の審議官だったこともある。大蔵省からの天下りだからといって銀行経営に適材とはいえない前例を残したといえよう。
・JR東日本等が株券電子化に伴う端株の整理を行うために、1株を100株に分割する(ただし、単元株式数は100株)。これも百分割の一種?
・ZAITEN2008年5月号に続いて、6月号にもこんな記事が。
産経新聞 住田社長と「三面の女」  
産経新聞で何かありますか?

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