投資家の目線

投資家の目線71(リース業界再編)

 10月13日、三井住友銀リースと住商リースが2007年10月に合併することを発表した。同日、住友信託銀行は東証一部上場の住信リースの株式を公開買い付けし、完全子会社化することを発表した。また、19日には三菱UFJフィナンシャルグループのダイヤモンドリースとUFJセントラルリースが合併すると正式発表した。今まで大手リース会社が地銀系リース会社などの中小リース会社を合併する例が多かったが、ついに大手リース会社同士でも再編が起こるようになった。次には、みずほフィナンシャルグループ系のリース会社にも注目が集まっている。
 リースには賃貸契約のようなオペレーティングリースと、借り手自身の資産として使用するのとほぼ変わらない、融資のようなファイナンスリースがある。ファイナンスリース取引のうち所有権が借り手に移転しないものについては、今までは賃貸借取引に関わる会計処理を行うことができ、貸借対照表でそのリースに関する資産をオフバランスすることが可能であった。しかし現在、企業会計基準委員会において所有権移転外ファイナンスリースの賃貸借処理の廃止について審議がなされており、同取引にかかる資産はオンバランス化され、以前より借り手の資産が膨らむような方向に進んでいる。自己資本が変わらず資産が増加すれば、自己資本比率のような財務上の安全性指標が悪化し、企業側としてはリース取引を続ける意味が乏しくなってくる。この問題は2002年8月から同委員会で審議がなされてきており、その危機感が、大手リース会社が投資銀行業務などのリース以外の事業にも力を入れてきた理由である。業界団体である(社)リース事業協会は現行基準の改訂は不要という立場だが、それで押し切れるかはわからない。消費者金融業界の出資法上限金利引下げの影響と並んで、業界再編を促すような制度変更といえよう。
 それにしても、住信リースが上場したのは2003年12月で、3年足らずで上場廃止となりそうだ。既に同会計処理改訂の審議が始まっており、リース業界が苦しくなることはわかっていたはずで、その最中に上場させたのはどのような経営判断があったのだろうか?以前と異なり、上場というものが将来的にずっと継続されるものではなく、企業あるいは企業グループ戦略により、上場・非上場(上場廃止)をフレキシブルに選択する時代に入ってきたと言えるのではないか?
(このように、上場、上場廃止が頻発するようになると、今までの4桁の銘柄コードではコードが足りなくなる懸念がある。桁数の多いAISINコードが銘柄コードの主力になっていくのだろうか?)

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 ほとんどの一般紙が報道を避けているが、民間指定確認検査機関だったイーホームズの藤田社長が、東京地裁での判決後に行った某ホテルグループに関する耐震強度偽装問題発言は本当であろうか(『有罪藤田社長 「爆弾発言」本当か』10月18日 J,ASTニュース、『藤田社長爆弾告発、安晋会関連物件も偽装』10月19日 日刊スポーツ)?日本の建築物は本当に大丈夫なのか?「ライブドアショック・謎と陰謀―元国税調査官が暴く国策捜査の内幕」(著:大村大次郎 あっぷる出版社)には、「耐震強度偽装問題隠しに利用されたライブドア」という章があったが、藤田社長の証言が本当であればその著者の推測も当っているのかもしれない。

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