投資家の目線

投資家の目線914(OPECプラスとBRICS共通通貨創設)

 1日、OPECプラスが原油生産の日量200万バレルの減産を続ける方針を維持した(『OPECプラス「原油減産、現状を維持」』 2023/2/2 日本経済新聞電子版)。その前の1月30日、ロシアのプーチン大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子が電話協議を行っており(「プーチン大統領、サウジアラビア皇太子と石油市場安定など協議」 2023/1/31 日本経済新聞電子版)、両国の連携は強固なようだ。サウジアラビアはBRICS加盟の方向が報じられている国だ。今週、フィリピンのマルコス大統領が来日するが(「フィリピンのマルコス大統領、8日から訪日へ」 2023/2/1 日本経済新聞電子版)、新冷戦体制に与しないフィリピンをこちらの陣営に引き寄せるのは難しいだろう。

 

 BRICS共通通貨創設が進行するなか、モディ首相とつながりのあるとされるインドの財閥アダニ・グループの株価急落、いわゆるアダニショックが発生した。そのアダニ・グループに株価操作と不正会計を行っていると米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチの創業者、ネーサン・アンダーソン氏が報告書を公表した。「ヒンデンブルグの報告書に対する市場の反応は当初、比較的小さかった。(中略)なぜ急変したのか? 空売り筋の長大な調査報告書を市場が確認し、内容を読みこなすまでには一定の時間がかかることがある。過去の例では、空売り筋による報告書の質はまちまちで、すべてがまともに受け止められているわけではない。」(「【焦点】印アダニ・グループ、株価急落の背景」 2023/2/3 ダウ・ジョーンズ配信)と報じられている。しかし、27日にグループ企業の株価が急落した原因は、「米著名投資家のビル・アックマン氏は26日、インドの財閥アダニ・グループに関する投資会社ヒンデンブルグ・リサーチのリポートについて、非常に信頼性が高いとの見方を示した。」(『アックマン氏、ヒンデンブルグのアダニ調査リポート「信頼性高い」』 2023/1/27 ロイター)ことが大きいのではないだろうか?アックマン氏といえば、今回のウクライナ事変に対して、「アメリカがロシアの原油を買うのを止め、ウクライナにさらなる武器や情報を供給するために力を尽くすべきだ」(ロシアのウクライナ侵攻は、第三次世界大戦が「すでに始まっている」ことを示している可能性も —— ビル・アックマン氏|2022/3/9 BUSINESS INSIDER)と言っていた人物である。アックマン氏は、『アダニ傘下企業には「ロング(買い持ち)、ショート(売り持ち)いずれの投資もしていない」』(『アックマン氏、ヒンデンブルグのアダニ調査リポート「信頼性高い」』 2023/1/27 ロイター)というが、ウクライナ絡みでロシア制裁に協力的ではない国に良い感情を持っていない可能性はある。ヒンデンブルグのつけた火種に燃料を注いで大火事にしたような感じだが、インド側はされるがままにおとなしくしているだろうか?

 

 サウジアラビア訪問時に歓迎されたトランプ氏が大統領のままであれば、BRICS共通通貨創設は難しかったろう。しかし、米国でトランプ大統領が再起しても、再び米国でバイデン政権のような政権ができることもあるから、USダラーに頼らないオルタナティヴな決済方法を創設する誘因は働いたままだろうと思う。また、決済通貨がUSダラー一極では、貿易によって決済用のUSダラーをできるだけ多く獲得し、準備することで国の信用力を高めようとする誘因が生じる。一方、トランプ大統領は貿易収支の不均衡の是正を目指していたので、決済用のUSダラー獲得がしにくくなる。結局、USダラー以外の決済通貨も必要になってくるのではないだろうか?

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