投資家の目線

投資家の目線364(原発事故調査委員会)

 5月29日、菅前総理に対する原発事故調査委員会の参考人聴取が行われた。菅前総理個人の資質の問題に矮小化する報道が多いが、原発事故はあくまでも制度設計の不備が最大の要因だ。

 2011年3月30日のロイターの記事、「特別リポート:地に落ちた安全神話&沒㈹エ発危機はなぜ起きたか」において、


引用開始

 そもそも、政府の対応を決める原災法自体が、原子炉が制御不能になる事態を想定していない。菅直人首相は11日、同法に従って原子力非常事態宣言を出した。「原災法のもともとの狙いは、原発事故の際の地域住民の避難や屋内退避をどのように行うのかという点にある。制御不能になった原子炉そのものをどうやって止めるのかは主眼に入っていない」と経産省のある幹部は明かす。「誰もリアリティを持って、法律を作らなかった」(同)のである。

引用終了


と、原災法の不備を経済産業省幹部自身が認めている。原災法に定められている地域住民の避難についても原子炉の状況が分からなければ、指示の出しようがない。情報がなければ東京電力が手に負えなくなっても、自衛隊出動(事故そのものを止める能力はないにしても)等のどのような次善の策を取ればよいのか分からない。前総理の現地視察でベントが遅れたという話もあるが(ただし、「遅れの最大の理由は、12日朝の菅直人首相の視察ではなく、電源喪失だった」2011/4/9 MSN産経ニュース)、ベントは午前3時頃には指示されており、東京電力にはそれを即時に行う能力がなかった。現地視察がなければ水素爆発がなかったかは怪しいものだ。

 立法府は議会とはいえ、日本の場合、実際には霞ヶ関の官僚が法制度の企画設計を行っている。原発事故では、警察や消防、自衛隊などの現業部門が、ャ塔Rツの企画部門(霞ヶ関の役に立たない人、略して霞が関の役人)の尻拭いをさせられたというところだろう。エマニュエル・トッド著「デモクラシー以後」(石崎晴己訳・解説 藤原書店)には、「民主制とャsュリズムを分かつものは、民衆がエリート層の必要性を受け入れ、それに信頼を寄せることでさえあると言える」とある。ろくな法制度の設計もできないエリート層を、民衆が必要とするだろうか?


 ケビン・メア著「決断のできない日本」(文春新書)では、3月12日午後(日本時間)に「東京電力から『在日米軍のヘリは真水を大量に運べないか』という問い合わせが駐日米国大使館にあった」と記されている(東電が廃炉を嫌がっていたことや、東電と米国の駐日大使館にはつながりがあることが伺える)。早い段階から米国が原子炉の冷却系に問題を抱えていたことを知っていたことになる。米国はそれをただ見ていただけなのだろうか?まあ、そこら辺は事故調査委員会では明らかにされないとは思うが…。


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・日本のマスメディアは報じていないようだが、5月29日に行われた日本外国特派員協会での講演で、石原都知事が、『「尖閣に関しては、わたしはアメリカはあまり頼りにならないと思う」と述べた。』(2012/5/30 WSJ日本版 JAPAN REALTIME)という(追記:講演ではその理由として、90年代半ばのモンデール駐日大使の尖閣諸島への日中間の緊張に米軍が介入しない趣獅フ発言を挙げている)。米軍が頼りにならないということは、石原都知事の思考は①中国(含む台湾)が実力行使に出て来ることはないという確証がある、②実力行使に出られても自衛隊だけで十分対処可能である、③尖閣を失ってもそれ以上の何がしかのメリットがある、④後先を考えずに緊張だけを高めている、の4パターンが考えられる。④の場合、グルジアの二の舞いになりかねないのではなイカ?


・読売新聞が「中国人スパイ」問題を煽っている。しかし、ロバート・ホワイティング著「東京アンダーワールド」(松井みどり訳 角川書店)では、「CIAが合衆国政府にかわって、自民党政権に月々100万ドルの資金援助をしていたことは〈ニコラ〉の一部の常連客のあいだでは、いわば公然の秘密だった」と記している。正力松太郎(CIAのコード名PODAM)氏が社主だった読売新聞では、米国によるスパイ行為は不問に付されるのだろう。
 それにしても機密情報の漏洩ってそんなに悪いことなのだろうか?それだったら、国民に見せる前にSPEEDIのデータを外国に見せるなよなー。


・2012/6/3日本経済新聞朝刊に『「消費増税諦めれば国際信用に傷」、米CSIS日本部長が強調。』の記事が・・・。国際信用ではなくて米国のジャパン・ロビーの信用の間違いでは?CSISのマイケル・グリーン日本部長は、段階的消費税増税やTPPを推奨する、CSISと日米財界で作成した提言書「Partnership for Recovery and a Strong Future」の米国側のディレクター。自分が関わった提言なのだから野田政権に実行させようと圧力をかけるのは当たり前。


・2012/6/2の日本経済新聞地方経済面西部特集に「ひとりごと、鳩山氏への評価に温度差。」という記事があった。沖縄県の「ある県議は「首相の指示に従わず、県外移設を妨害した防衛・外務官僚こそ沖縄にとって『敵』だ」と憤る」と書いてある。また、同記事は「沖縄では県外移設を貫かなかったことへの批判はあっても、余計なことを言って辺野古移設を駄目にしたという批判は少ない。ここに本土と沖縄の温度差がある」と結んでいる。このような記事は、今までは沖縄県内だけだったが、九州島内ぐらいまでは広まったのではなかろうか。

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