アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

「あやしいルネサンス」

2016-09-13 06:43:07 | 画材、技法、芸術論、美術書全般、美術番組
すぐわかる 画家別 幻想美術の見かた【改訂版】
 千足伸行著
 2000円+税 東京美術 *写真左

あやしいルネサンス
 池上英洋 監修・著 深田麻理亜 著
 1800円+税 東京美術 *写真右

 書店で安価な幻想美術の画集を探していて、写真左の「すぐわかる 画家別 幻想美術の見かた」しか見つからず、がっかりしていた方に朗報。ついに出た、待望の一冊が写真右の「あやしいルネサンス」だ。

 幻想美術の解釈によるが、写真左の「すぐわかる 画家別 幻想美術の見かた」は、例えて言えば、全ての文学作品はSFだ、の論理に従い(そういうことを言うSFファンも一部いて、それはそれで一理あるのだが)、SFガイドブックに多数の古典文学を紹介するようなもので、何かが間違っている。
 モロー、ベックリン、デ・キリコなどは許容してもいいけれど(それすら駄目って人だって中には当然いるでしょうが)、アングルやゴーギャン、ロートレック、ルソーとなると、もう完全に話が違う。読者はそんなものを求めてはいない。多分に美術史寄りの選択で、偉い大学の先生に任せるとこうなってしまう典型でもある。

 幻想美術といって、一般の人が求めるのは、もっと空想的なもの、今となっては異質な、現代人の目から見れば不思議な、異様なものであるはずだ。そうした欲求に見事に応えてくれるのが写真右の「あやしいルネサンス」だ。
 題名が「あやしいルネサンス」なだけに、ルネサンス限定だが、見る者の想像を刺激し、見る者に読み解くことを要求する作品が満載だ。画家が想像力を駆使して描き出したこれらの世界は、現代人には大変魅力的で訴求力がある。

 さて、この本を買って満足された方も多いだろうが(かく言う私もその一人だが)、掲載作品の大半を知っている人も多いはず(私も八割方知ってました)。とはいえこうして1冊にまとめてあるのはうれしいし便利だ。なあーんだ、知っている作品ばかりじゃん、と言わずに買いましょう。
 個人的には第2弾を希望。ルネサンスは探せばいくらでも「あやしい」作品はあるし、何もルネサンスに限らなくていいから、この視点で見つけてくれればいい。第3弾、第4弾と、行けるところまで行ってほしい。でもそのためには売れないといけない。だからみんな、この本買って。


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