980523
長く苦しかった一つの仕事が終わった
彼は久しぶりにぶらりと本屋に入った
今日は何を選んでもいい
それなのに
彼はいつもの場所に
それはパソコンのプログラム言語のコーナー
電子技術のコーナー
しかし満たされぬものを捜し求めるように
今日は仕事からはなれよう・・・・
彼は別なコーナーへ行く
いやらしい本を捜す
ない!
宇宙の本を捜す
あった!
最新の天文写真
宇宙望遠鏡が見せてくれる別世界
ダイナミックな宇宙映像
星の爆発、
銀河のブラックホール
そこから吹き出す数十万光年のジェット
ガス星雲の中に
無数に生まれる星の赤ちゃん
見れば見るほど刺激が広がって行く・・・・
しかし彼はすぐに別な本を求めさまよう
宗教のコーナー
いやここほど裏切りに満ちている所はない
趣味のコーナー
なにもやる気が起きない
ガーデニングに興味が出てきたものの
やる気が起きない
この空白を満たしてくれる本はないものか・・・・
ニセモノでない
読めばよむほどその世界へ埋没して行くような
想像の空間を散歩するのが楽しくなるような・・・・
30年も前いちどだけ
そんな本にめぐりあったことがあった
そこで一人の貧しい青年が最悪の罪を
論理で正当化し実行してしまった。
しかし今はそういう本は読む気がしない
彼は本屋を出ていった。
夜の町をぶらつく
彼には飲み屋へ入る勇気もなかった。
そこですばらしい女にめぐりあったことがなかったから・・・
仕事のはざまの空白よ
この時を受け止めてくれるもの、
そして裏切らないものはないものか・・・・
また彼はロジックの世界へもどって行く
そこだけが
かれを裏切らない世界になってしまった・・・・
そこだけが・・・・