コソン
1
守は学校帰りの路地で、思わず相手を殴っていた。自分のしたことが怖くなり、逃げ出
した。
幸いその時は、追いかけてくる相手をうまくかわしてしまった。
その上級生は、いつも守たちの遊びの中に入り込んできては、べつな遊びを強要した。
従わなければ、みんなを並ばせ、ビンタを食らわしていった。しかし、いつも守だけはビ
ンタを食らわず済んでいたのだ。
彼はそれがいやでしょうがなかった。誰も何も言わないのに、彼の無意識が責めた。
『おまえは、奴の囲われ者か!』とみんなが言っているぞ……
そのストレスがバネになり、相手を殴ってしまったのだ。
しかし、3日後の金曜に学校の廊下でそいつと鉢合わせしてしまった。
「あ、こいつだ!」そういうと上級生は、守を徹底して追いかけ、守が転んだ所で馬乗り
になり、何発もぶん殴った。偶然、数学の先生が通りがかり、守を助けあげた。
「どうした、やめないか!」と先生が言ったとたん、相手はすばやく逃げてしまった。
「喧嘩はいかんな、顔少し怪我しているじゃないか、保健室に行きなさい」守は殴られた
悔しさより、保健室の先生に会えることのほうがうれしかった。
「どうしたの、……喧嘩したのね。君は確か鴨居守君」
「先生僕を知っているんですか?」
「もちろんよ、だって君の親戚なんだもの」
「ええ、ほんとうですか」
「そう、ちょっと遠いけどね、まちがいなく親戚よ。いつだったか、法事の時、みかけた
。その時はまだ1年生ぐらいだったかな」
守はうれしかった。家に帰ってからも、そのことばかり考えていた。母親がパートから
戻ってくると、さっそく聞いた、
「ね、保健室の南和子先生って、僕んちの親戚なの」
「ええ、ちょっと遠いけどね」
「先生もおなじようなことを言っていた、『ちょっと遠いけどね』って」
「おまえ、どうしたの、その顔は?」
「うん、ちょっとね、上級生に殴られた」
「何!いじめられてるの?」
「そんなんじゃないよ。僕の方が先に手をだしちゃった」
「まったく、人に暴力振るっちゃいけませんよ」
「ちがうんだ……」
守は事情を話そうとしたが、母親はすぐにキッチンへ行ってしまった。
守はいつものようにアニメを見ながら夕食をとると、二階の自分の部屋にこもった。
彼は天体観測が大好きだった。父親からもらった双眼鏡で毎日観測するのを楽しみにし
ていた。
その日の夜、六つぐらいの点がふたご座を左から右へと移動していった。最初は人工衛
星だと思ったが、考えてみるにそういう飛び方をする人工衛星はあるだろうか?と思った
。
マモルは記録を残した:
時間:2023年4月15日午後20時56分
場所:西の空、ふたご座ポルックスとカストルとの間
それから、父親が作ってくれた小さなロボットのプログラムの修正をやった。基本は、
父親が作ってくれたが、細かいところの動作は宿題にされてしまった。
しかし、途中でめんどうになり眠ってしまった。
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