ポエブクロウ

自由詩_Azukizawa

一人暮らし

2023-02-28 01:08:02 | 

    一人暮らし 971221


老人はさみしいおもいで暮らした。
少女がこなくなったのだ。
しかしそれはいいことかもしれん・・・・
夕暮れの河原で少女とおしゃべり、
    まいいさ、少しでもできたんだから。
彼女は河原の人生哲学教室の最初の卒業生だ。

長い一人暮らし、いつまでやってられるか、
ある日突然終わりがくるのかもしれん。
体のあっちこっちが痛み始めている。
ある日突然、「あなたは癌です」なんていわれたら・・・・
ちぇ、この年になって命をおしむとは。
老人は青春時代を思い出した。
朝鮮や満州での兵隊生活が彼の青春だった。
彼の記憶の中には、内地に帰ってから耳にする
 日本軍の残虐行為は信じがたいものだった。
それは彼がけっこういいかげんな性格でどこへいっても
 現地人と仲良くなってしまうからだった。
貧しいアジアの人々の独立のため命を落としてでも
 戦う、これが日本軍の誇り、と彼は信じて疑わなかったのだ。
彼は山本五十六元帥を心から尊敬していたが、
 なぜだか陸軍の兵隊になってしまった。
あとで耳にする日本軍の狂人的な数々の行為は
どうしても信じられなかった。
それらを真実として受け入れた時から彼は
戦争体験を誰にも話さなくなった。
それは彼の記憶の片隅でただ命令でやったことの中に
蛮行にあたるものが含まれていたからだ。
信じて行動する事のなかに狂気がひそんでいたのだ。
 あんたはいい人、しかしその手は血で汚れている。
その一言が彼を五十年も苦しめたのだ。

 

 

 

 

 

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2023-02-08 03:51:42 | 

        花  980108

人の世ははかなしという花
みじかい命をなげくより、
一日ひとつやるべしことやっていれば
一日が一生にもなる。
一年は三百六十五章の物語。

人の世はうれしという花
命のいたみをなげくより、
争いの剣をおさめ
単純さの美しさに気づけば
すべてが楽しくなる。


------------------
トルコで大きな地震があったというニュースは毎日のように……
かなりの犠牲者になりそうだ
世界中から救援隊が行っている

──しかし、ウクライナでは人がミサイルによって
同じような状況を作り出している
救助隊が行ったとしても
やつらはかまわず攻撃するだろう
20世紀の戦争の時代から一転し、
21世紀は助け合いの時代であるはずだ
しかし、独裁国が世界の71%にもなり、
助け合いどころか
領土の奪い合いに軍備の拡張にとんでもないお金を浪費している

二酸化炭素の増え方は、世界中の人々が助け合わなければ
地球そのものがあぶない、という状況になっている
……

 

 

 

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空白

2023-02-06 07:39:46 | 


          980523

長く苦しかった一つの仕事が終わった
彼は久しぶりにぶらりと本屋に入った
今日は何を選んでもいい
それなのに
彼はいつもの場所に
それはパソコンのプログラム言語のコーナー
電子技術のコーナー

しかし満たされぬものを捜し求めるように
今日は仕事からはなれよう・・・・
彼は別なコーナーへ行く
いやらしい本を捜す
ない!
宇宙の本を捜す
あった!
最新の天文写真
宇宙望遠鏡が見せてくれる別世界
ダイナミックな宇宙映像
星の爆発、
銀河のブラックホール
そこから吹き出す数十万光年のジェット
ガス星雲の中に
無数に生まれる星の赤ちゃん
見れば見るほど刺激が広がって行く・・・・

しかし彼はすぐに別な本を求めさまよう
宗教のコーナー
いやここほど裏切りに満ちている所はない
趣味のコーナー
なにもやる気が起きない
ガーデニングに興味が出てきたものの
やる気が起きない

この空白を満たしてくれる本はないものか・・・・
ニセモノでない
読めばよむほどその世界へ埋没して行くような
想像の空間を散歩するのが楽しくなるような・・・・
30年も前いちどだけ
そんな本にめぐりあったことがあった
そこで一人の貧しい青年が最悪の罪を
論理で正当化し実行してしまった。
しかし今はそういう本は読む気がしない

彼は本屋を出ていった。
夜の町をぶらつく
彼には飲み屋へ入る勇気もなかった。
そこですばらしい女にめぐりあったことがなかったから・・・

仕事のはざまの空白よ
この時を受け止めてくれるもの、
そして裏切らないものはないものか・・・・
また彼はロジックの世界へもどって行く
そこだけが
かれを裏切らない世界になってしまった・・・・


そこだけが・・・・

 

 

 

 

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死者の歌

2023-02-03 01:19:13 | 

   死者の歌      980323

死の山へ行こう
共に語り明かそう
真実という骸骨を集め
我等が失いしものをみいだそう

死の山へ行こう
その集いに加わろう
言うに言われぬという言葉を集め
我等がその歌を口ずさもう

死の山へ行こう
若者も年寄りもごちゃまぜに集い
死者の魂の叫びに耳を傾けよう
その集まりだけが人の真実の場所なのだから

死の山へ行こう
生きることと死ぬことの狭間に
人間存在の真実を見つけよう
そこは偽りの言葉のからの奴隷開放の場なのだから

死の山へ行こう
エゴとエゴのぶつかり合い
巨大権力の犠牲者
「侵略者」の嘘の犠牲者

死の山へ行こう
やさしいことなのだ
つまらぬことなのだ
その原因は・・・・

死の山へ行こう
そこでめぐりあった真実を枕にし
あらゆる偽りの言葉を退けよう
真実を語る者を暗闇にほうむってきたのだから・・・・

死の山へ行こう
避けてはならない 目をつむってはならない
だまされてはならない
真実は今なお泥の中、海底のへどろ

死の山へ行こう
骨と骨とを両手に持ち
うちならそう
そのリズムこそ我等の生なのだから

死の山へ行こう
この集いに金はいらぬ
僧正もいらぬ
温かさと冷たさがそのままふれあうことが真実の供養なのだから・・・・

 

 

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