Sound of sunrise by begin
私がビギンを知ったのは「イカすバンド天国」というアマチュアミュージシャンの勝ちぬき系の深夜番組だった。
そんな人は多いかもしれない。
「イカ天」は一世を風靡した深夜番組で、この番組は多数のミュージシャンを輩出した。
有名どころでは、まずこのビギンをはじめ、「たま」「ブランキージェットシティ」「人間椅子」「グレイ」他多数。
派手で個性的なバンドが多い中で、このビギンは一見地味だった。
奇をてらったコスチュームを着るわけでもなく、派手な音楽でもなく、音楽だけで勝負してる感じだった。
だが、そのサウンドの心地よさや、ボーカルの声質などでリスナーを魅了し、グランドチャンピオンになった。
その後、イカ天で歌った曲「恋しくて」を収録したファーストアルバム「音楽旅団」でメジャーデビュー。
その曲はスーパーヒットというほどではなかったかもしれないが、そこそこヒットしたと思う。
それ以後、ヒットチャートの1位を何週も続けるほどのスーパーヒット曲というのはないものの、「涙そうそう」「島人ぬ宝」などの名曲を世に送り出し、地道に息の長い活動を続け、安定した人気を保っていると思う。
ビギンがメジャーデビューした頃、私は郊外に住んでおり、交通アクセスの悪い場所だったので、車は必須だった。
買い物に行くにも車が必要になることもあった。
たまに友人が当時の私の家に遊びに来る時は、たいがい「泊り」になった。
友人たちに言わせると「だんぞうの家に遊びに来る時は、旅行気分で来れるよ」。
周りにはけっこう田園風景が残ってたからね。
友人が来ると、車でミニドライブに行くことも多かった。自然風景がかなり残されてたので、友人たちにとっては確かに「ミニ旅行」であったろう。
昼間ミニドライブに行くこともあれば、夜にミニドライブに行くこともあった。
私の家に泊りにきた友人たちの1人は、私の家に来る時は車のカーステでかけることを前提に自身のお気に入りのカセットを持ってきたりした。
で、その人がよく持って来ていたのが、ビギンのファーストアルバムが入ったカセットだった。
ビギンの音楽は、どちらかというと朝とか昼間が似合いそうな感じに私には思えた。
沖縄出身の彼らなので、そういうバックボーンから産み出された音楽は、聴く場所的には海もピッタリであっただろう。
でも私がビギンを聴く時は大体夜だった。
ビギンのカセットを持ってきた人が、夜のドライブでビギンをかけてほしがったからだった。
なので、ビギンのファーストアルバムを聴くと、私は当時の夜のドライブで見えていた風景が思い起こされてしまう。
特に1曲目の「サウンドオブサンライズ」ののどかさや広がりは、夜の田園風景や夜空に広がっていくように思えた。
曲調を考えると、このさわやかさや穏やかさや、のどかさからいって、さわやかな朝に向いてそうに普通の人は思うかもしれない。で、それは間違ってないとは思う。
でも、案外夜の田園風景の静けさの中で聴いても、実によかった。
周りには高いビルはなく、背の低い住宅地の向こうには、ところどころシルエットと化した低い里山があったりもして、里山は夜の闇に紛れるかのような木々で覆われていた
道路はあまり車の数は多くなく、山向こうにまっすぐ続いている道路はところどころ街灯で照らされていた。
ちょっと脇道に入ると、車も人もほとんど見かけなかった。
上を見れば、広がる夜空が見えていた。空をさえぎる高いビルがないぶん、夜空はあたり一面に広がっていた。
そんな中でビギンのこの曲を聴いてると、心が休まる気がした。
シンプルなサウンド、おだやかでゆったりとして伸びのあるメロディ、そしてあのボーカルの声だ。
郊外の景色の広がりと、この曲の広がりがシンクロしてるようで、より癒される気がした。
これが都心の混み合った場所だったら、あんな広がりは感じなかったかもしれない。
夜であれ、昼であれ、朝であれ、静かで広がりのある環境であれば、この曲はよく似合うと思う。
平和で心が休まるような、癒し系の良曲だと思う。
ボーカルも、メロディーも、サウンドも、実に優しい。
アルバムのオープニング曲では派手めな曲を持ってくる例が多いが、こういう曲をいきなりオープニングに持ってくる構成により、よりビギンの音楽が味わい深い印象になぅている気がした。
個人的には「恋しくて」よりも、こちらの曲の方が好きだった。
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