時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

我が心(?)の、西荻のあの中華料理店

2009年10月31日 | 懐かしい系、あれこれ
かつて、仕事で西荻にちょくちょく行ってたことがあった。

行く時間はまちまちだった。

行く度に、ちょくちょく入ってた店があった。

駅前の小さな路地みたいな道を少し歩くと、その店はあった。

お店自体は小さかった。

お世辞にもこぎれいとは言い難かった。

店の主人の応対も、決して愛想がいいほうではなかった。
とはいえ、私にとっては、感じが悪かったというわけではなかったので、念のため。

店のドアはいつも開けっぱなしだったような気がする。

店に入ると、地面が(床?)が油でヌルヌルしていた。

席はカウンター席だけだった・・と思う。

なにやら、初めての人は入りにくい雰囲気もあったかもしれない。

この店の味を知る客だけが入ってゆくような感じの店だった。

私がいつごろ、どういうきっかけでこの店に入るようになったのかは、もう記憶がおぼろげだ。

この店のあるエリアには、他にもおいしそうな店が並んでた。

なのに、私は、何の気なしにこの店に入ってしまったのだった。

で、最初はチャーハンと餃子を頼んだような気がする。

で、食べてみたら・・

「むむ・・これはウマイ!!」。

チャーハンにはニンニクのスライスも入っていたように思う。

餃子の焼き加減は、絶妙だった。

食べてる最中も「ウマイ」のだが、食べ終わって店を出たときに、そのうまさが後を引いた。

「いやあ、うまかったなあ」と、しみじみ。

その後、西荻に仕事で立ち寄るたびに、この店に入るようになった。

しまいには、どこか他の場所をまわった時に、ちょいと遠回りしてわざわざ西荻に足をのばしたりするようになった。

西荻に立ち寄ってこの店に入るために、昼飯や夕飯を我慢するケースも多くなった。

やがては、店の主人にすっかり顔を覚えられ、ある時

「大将! 食うの、ちょっと早くないか?」

と声をかけられるようにもなった(笑)。
愛想のない顔で。

おっと、この「食うの、ちょっと早くないか?」という台詞は、決して苦言ではない。
それは、口調のニュアンスでよく分かった。
要するに、・・ちょくちょく私が食べにいくもんだから、主人のほうで私に「気安さ」を感じていたのかもしれない。

「大将」というのは、この場合、私のことだった(笑)。

私は「そうかなあ? いやあ、ウマイからねえ」・・と答えたような気がするが、それって返事になってたのだろうか(爆)。


チャーハン、餃子もうまかったが、ラーメンもまたうまかったし、焼きそばなんか、私にとっては絶品だった。

今考えると、他のメニューも食べておけばよかった。
行くと、だいたい・・チャーハン、餃子、ラーメン、焼きそば・・のどれかをオーダーしてたからね~。


当時、私の会社では、料理にうるさい「グルメ」社員がいて。
いつも彼のお気に入りの店を周りの人に自慢していた。
まずい店には手厳しかった。
自分のみつけた店を、いつも自慢してたのだ。

そこで、私はその店のことを教えてあげた。
その店は、私にとっては、何気なく入り、偶然見つけた「おいしい店」だった。
「私も、こんなウマイ店を知ってるぞ」という意識が私の中にあったのかもしれない(笑)。

そうしたら、その数日後、彼もその店にわざわざ食べに行った。
で、帰ってきたので、「どうでした?」と私が聞いたところ・・。

「いやあ、感動したよ! 今は、あの味を自分の中から逃がしたくない。」と感嘆の台詞(笑)。


ふふ、してやったり!

どんなもんだい・・・と私は、自分の手柄でもなんでもないのに、心の中で胸をはっていたのだった(笑)。そんな自分が妙におかしくて。



その後、仕事の関係で、西荻方面に行く用事がほとんどなくなった。

で、数年たった。


ある時、ひょんなことから数年ぶりに西荻に行く機会があった。

「なんだか、なつかしいぞ。久しぶりに、その店に行こう。何食べようかな」
・・などと思って、店の前に向かったのだが・・。



数年のブランクの後に来たその場所には・・・もうその店は営業してなかった。

定休日・・という雰囲気ではなく、「もう営業してない」雰囲気であふれていた。

残念だった。


後で風の噂で聞いたところによると、主人は・・・亡くなったらしい・・ということが分かった。


愛想はよくないし、こぎれいじゃないし、狭いし、床は油っぽい、そんな店だけど、味は抜群だった。

残念でならない。


主人が初めて私に雑談めいたことを言った時の「きっかけ」の言葉、
「大将! 食うの、ちょっと早くないか?」
は、もう聞けない。

主人。
あなたは、おいしい味を客に出すために、この世に生を受けたんだね、きっと。
で、その使命(?)は、見事に果たしていたよ。

あの味が・・忘れられない。

うまかったよ、主人。

もっと、食べたかったなあ。


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