萩本欽一さん・・・・いや、ここは親しみを込めて「欽ちゃん」でいきたい。
欽ちゃんといえば、日本のお笑い界の頂点の存在。
古くはコント55号、その後は「欽ドン」などで超人気を博し、担当する番組がどれも高視聴率を稼ぎだすものだから、視聴率100%男などと称賛されたほどのコメディアン。
私も子供の頃から好きだった。
随分前のことだが、誰かがこんなことを言っていたと思う。
それは・・
「日本のお笑い界は、まず頂点に欽ちゃんがいて、その下にたけし、タモリ、さんま・・の3人がいる」と。
欽ちゃんとは、それほどの存在。
子供の頃のある日、いつものようにテレビを見てたら、欽ちゃんが出てきて、歌を歌った・・・のだと思う。
それが私とこの曲の出会いだったと思うが、あまりに子供時代なので、私の記憶はおぼろげだ。
だが、テレビで欽ちゃんが歌うこの曲を聴いて、一発で好きになったのは確かだ。
ただ、他の番組で欽ちゃんがこの歌を歌ってるシーンは見たことがなかった。
でも、この曲が聴きたい、いつでも聴けるように「持って」いたい・・・その気持ちは私の中でおさまらなかった。
いてもたってもいられないぐらい、この曲が欲しくなった。
小遣いを貯めまくって、初めて自分のお金で買ったレコードがこれだったと思う。
おやつを何日も我慢して、お金を貯めて、やっとの思いで、このレコードを入手した時は嬉しかった。
で、自宅の安いステレオで、この曲をしみじみ聴いた。
何度も何度も。
この曲は、欽ちゃんの自主制作映画「手」という作品の中で使われていたようだが、あいにく私はその映画を見たことがない。
なので、映画に関しては何も書けない。
ただただ、この曲にほれ込んだことぐらいしか書けない。
ひたすらこの曲を聴きながら、勝手に映画を妄想するだけだった。
普段、笑いをとりまくっていた欽ちゃんのイメージとはうってかわったような、哀愁を帯びたメロディが秀逸で、悲しく切ない曲であった。
曲は、基本的に欽ちゃんの語りの部分と、歌の部分が半々ぐらいでできていた。
最初は「語り」で始まり、ずっとそのまま語りでいくのかと思いきや、サビでしっかりメロディが出てきて、欽ちゃんがしっかり歌っている。
しかも、こんな悲しく切ない歌詞とメロディを。
普段テレビで視聴者を笑わせまくっていた欽ちゃんと、この曲での寂しげな欽ちゃんの対比・・・というか、ギャップが、ともかく印象的だった。
あの欽ちゃんが、なぜこんな切ない曲を・・・。
私が入手したのはシングルで、裏面には同曲のインストバージョンが収められていた。
メロディが良かったからインストバージョンも良かったが、やはり私は欽ちゃんの語りと歌が入っていたA面のほうが好きだった。
当時、クラスには私同様にこの曲が好きな子は、けっこういたと思う。
曲そのものはスーパーヒットとまではいかなかったが、少しはヒットしたんじゃないかな。この曲を知ってる子の中では、密かに人気が高かった。
できれば映画「手」も見たかった。
この曲のラストが割と壮大な感じで感動的に終わるから、映画への関心も非常に高まったものだった。
いったい、どういう映画だったのだろう。
今現在、その映画「手」を見るすべはないのだろうか。
ともかく、こんな切なくて哀愁の名曲がどう使われていたのかが知りたかった。
私にとっては、けっこう感動的な曲だったので、映画への関心が高まったものだった。
その後の欽ちゃんの心の中では、この曲の存在はどんなものなのだろう。
欽ちゃんが、その後この曲を歌っている姿は一度も見たことがない。
もっと知られてほしかった。
欽ちゃんの本職はコメディアンなので、正直歌は決して上手ではないかもしれない。
歌うオファーは、ずっと断っていたともいう。
ただ、この曲に関しては、作曲者に印税を渡したいから、例外的に歌ったらしい。
というのは、この曲を作曲した方は、欽ちゃんからギャラをもらうのを辞退したらしいからだ。
なんでも、この曲を作ってくれた方に欽ちゃんが「ギャラはいくらお支払いすればいいですか?」と聞いたら、「この映画を作るのに、(萩本さんは)かなりお金がかかったのではありませんか?なので、ギャラはけっこうです。お役に立てたのなら、それでいいです。」と答えたらしい。
でも欽ちゃんは何とかお礼がしたくて、この曲を自ら歌ってレコード化して、その売り上げの印税が作曲者に入るようにしたらしい。
そんな理由があったから、普段は歌う仕事は受けない欽ちゃんは歌ったそうな。
なんか、心がほっこりするような逸話ではある。
で、出来上がったこの曲なのだが、なによりメロディが良いし、欽ちゃんの語りが寂しげで切ない。
この曲は、今では知らない人の方が多いだろう。
でも、かつて・・・欽ちゃんは若いころ、こんな素敵な曲を歌っていたことがあるのだ。
そう思うと、欽ちゃんの別の面が見えてくる・・・そんな気にさせられる良曲だと私は思っている。
それにしても、この歌詞に出てくる「お前」とは、一体誰のことなのだろう。
かつての恋人のようにも思えるし、可愛がってたペットのようにも思えるし。
それとも、それ以外の誰か? あるいは何か?
欽ちゃんも、もうけっこうな年齢になられている。
いつまでも元気でいてほしい。
あの、暖かいキャラと、アドリブの芸を、一日でも長く、我々に見せていてほしい。
普通の素人さんの普通の反応を、一瞬のうちにお笑いに変えて笑いをとってしまう名人芸を。
で・・無理なお願いかもしれないが、いつかこの切ない曲を何かのついででいいから、また歌って聴かせてほしい。
皆さん、あの欽ちゃんが歌っている曲があったなんて、けっこう意外でしょう?
しかも、歌っていた曲はコミックソングではなく、こんなにセンチな曲であったことが。
ジャケットの方も、お笑いの香りはせず、けっこう2枚目の路線?
「何処かにお前が」
作詞 萩本欽一
作曲 小泉正
編曲 川口真
歌と語り 萩本欽一
こちら ↓
https://www.youtube.com/watch?v=pJ4Ox4tFvBI
私も、欽さんに、このようなバラードがあるとは初めて知りました。
又、「作曲家のために」優しい欽さんも初めて知ったエピソードです。
だんぞうさんは、この楽曲を何度も何度もお聴きになられていた頃、既にオリジナル楽曲を持っていらっしゃったんですよね。
自然の流れとして、影響を受けて作られた音楽も、あるかもしれませんね。
欽ちゃんは、歌を歌うことさえ珍しく、珍しく歌った曲がこういう悲しい歌であるというのは意外でした。でも、芸人が歌を歌う場合、必ずしもコミカルな曲とは限らないケースは、普通にありますね。
ビートたけしさんにも哀愁の曲はありますし。
この曲を聴いた頃は私はまだ幼少でしたから、せいぜい鼻歌くらいの自作曲しかなかったと思います。
何かしらの形で、影響は受けてるかもしれません。