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私が自分のもっとも好きな漫画家として名前をあげる人は、水木しげるさんとつげ義春さんであることは、これまで何度もブログやHPで書いてきている。
つげさんを好きになったきっかけは、以前ブログに書いた。
だが、水木さんを好きになったきっかけは、これまでまだ正式には書いてきていないような気がする。
もちろん、幼少の頃に出会った「悪魔くん」「ゲゲゲの鬼太郎」「河童の三平」は大好きだったし、それらの作品がきっかけで水木先生に幼少の頃に親近感を持ったことは間違いない。その時点で、お気に入り漫画家の1人にはなったのは確か。
それが、やがて「もっとも好きな漫画家」として水木先生を捉えるようになったのには、別のきっかけがあった。
それは、学生時代に、水木先生の読み切り短編集に出会った時が、そうだった。
友人の家に、水木先生の短編集の単行本がけっこうあり、その友人宅に遊びに行った時に何気に読んだ何冊かの水木短編集が、どれも面白くて。
こうなったらもっともっと水木短編集が読みたい!と思い、当時書店で並んでいた水木短編集を、次々に買いこむようになった。
そして読んでみれば、本当にどれも面白い。
やがて水木短編目当てで、古本屋巡りもするようになった。
しまいには、普通の本屋とか古本屋とか区別なく、私の未所持の水木短編を見つけるたびに即買いするようになった。
やがては、普通の本屋や古本屋では売っていない古い戦記モノの全集なども、注文して買うようになった。
こうなると完全に水木信奉者だ。
で、いつしか水木しげる先生は私の最も好きな漫画家になった・・というわけだ。
また、水木先生と共に私が最も好きな漫画家である「つげ義春」先生が、一時は水木プロに加わり、水木作品を手伝っていたという事実は、嬉しかったものだ。
水木作品は、鬼太郎や悪魔くんや三平だけでなく、いや、時にはその代表作よりも短編集のほうが心に残ることがある。
ここで私は一つの持論を持つようになった。
本当に優れた漫画家は、代表作が面白いのはもちろんだが、短編集がまず面白い。
たとえば、つげ先生などもその良い例だし。
水木作品の短編には名作は数多い。宝の山といってもいい。お気に入り作品はたくさんある。
今回取りあげる「かえり船」は、数ある水木短編の中でも、特に私のお気に入りの作品のひとつで、とっておきの作品。
この作品を初めて読んだ時、私はたまたま通学電車の中にいたのだが、この作品のラスト近辺で涙がこらえきれず流れてきてしまい、不覚にも電車の中でウルウルしてしまった。いやあ、恥ずかしかった(笑)。
私の思う水木作品は、良い意味でどこか乾いており、あまりウェットな作風の印象はない。
だが、この「かえり船」は、私にとって涙なくしては読めない作品だった。
ある意味、水木作品としては珍しいくらいの「涙の名作」だと思う。
版によっては「怪談かえり船」という題になっている場合があるが、この作品の内容自体は決して怪談ではない。
むしろ、悲しく切ない物語である。
水木作品らしい不思議で幻想的な要素をはらんで物語は始まり、中盤では少し怖い・・というか、ドキドキするような展開になり、終盤はもう・・ただただ悲しくて、切ない。涙涙。
そして結びは、これまた水木短編らしい、教訓や風刺、世の中へのメッセージを込めて締めくくられている。
ストーリーのほうは、ここで書くことも可能だが、読んでいない方にとって「ネタばれ」になるのは忍びないので、やめておく。
だがまったく内容を書かない・・というのも、ここでは説得力に欠けるとも思う。
なので、あえて簡潔にだけ書いておく。
この作品は、1人の女性をめぐる、2人の男性の葛藤の物語だ。そして、本当の幸せとは何か?愛する相手の幸せとは何か?を考えさせられることになる。
自分のエゴより、愛する人の幸せを考えた場合。
この作品に出てくる二人の男性は、恋敵ということになるのだが、それ以上に友である。
互いに同じ女性を心から愛しながらも、二人の男性の友情の結末が・・・切ない。
しかもその結末は、どちらもその女性の幸せを心から想うが故でもあった。
と同時に、友でもある互いへの気持ちが読者の胸に迫ってくる。
この作品でのメイン登場人物の画風は、まだ貸本漫画家時代の画風で、なにやら気品があり、そんな点も好きだ。
この作品が映像化されたことがないのが、惜しくてならない。
決して映像化できないような内容ではないと思うのだが。
アニメはもちろん、ドラマでやっても大丈夫な内容だと思う。ドラマ化が困難な内容の作品ではないと思う。
入手困難であることがこの作品の映像化を邪魔しているのだとしたら、いつでも入手できるようにしてもらえないだろうか。色んな人がいつでも読めるように。
そして、いつしかこの作品が映像化されることを願ってやまない。
「かえり船」、それは水木しげる先生の数多い短編作品の中でも、珠玉の名作。
悲しく切ない、感動的な1編だ。
入手困難な現状ゆえ、この作品を取り上げた記事は、あまり見かけない。
それゆえ、このブログでこの名作を取り上げることができることを、幸せに思う。
そして・・
最後に一言、悪態をつかせてほしい。
それは・・
「こんな名作を埋もれさせておくなんて、どうかしている」
・・・ということ。
今回は水木しげる先生の事をテ一マにしておられますが、私も、水木先生の『悪魔くん』や『ゲゲゲの鬼太郎』などの話を聞くと、少年時代のノスタルジアを感じます。私は、水木先生の『妖怪カ一ド』(メンコみたいなものですが)を持っており、『たからもの』にしております。
今回御紹介の『かえり船』は、存じておりませんが、機会があれば是非読みたいと思います。二人の男性が一人の女性を愛する物語ということですが、確か、武者小路実篤先生の名著『友情』もそんな話だったと思いますが、ニュアンスは少しちがうかもしれません。
さて、この連休は、一日だけ野山にでかけただけで、あとは、つげ義春先生の作品を読むのに没頭しておりました。
特に、『ねじ式』『紅い花』『ゲンセンカン主人』に強烈な印象をうけました。本当に奥の深い作品ですね。
★だんぞう様のブログ、はかにもいくつか拝見しましたが、ほんとうに広い話題を持っておられることに感銘をうけました。『月光仮面』や『隠密剣士』、『大阪万博』なども興味深かったです。そういう世代のかたが読めば、懐かしい思い出話になるでしょうし、別の世代の人に対しては、その時代の事を説明する格好の事例になるでしょう。
今後とも、面白くてためになる話題を期待しております。
さまざまな、夢を織りなす、夏の夜。 綺蘭
嬉しいです。
水木さんというと、つい「鬼太郎」「悪魔くん」「三平」などの作品名があげられますが、それ以外の読み切り作品にも傑作は実に多いのです。
この記事を書いたのは、上記の思いからくるものが大きかったのです。
妖怪カード??そういうものがあったのですか。知らなかったです。
今では貴重品ではないでしょうか。所有されてる中森さんがうらやましいです。
「かえり船」は、名作だと思います。水木さんの作品の中でも、「隠れた傑作」だと思います。というか、「隠れて」いるのがもったいないぐらいです。
もっと表に出てきてもらいたいですし、そのためには映像化は良い手段だと思えます。
つげ作品は、一度読んでも、何度も読み返したくなる作品が多く、不思議と何度読んでも飽きない魅力があります。
物語もさることながら、絵の魅力も大きいです。ともかく印象的な作品を描く漫画家ですよね。おっしゃる通り、「奥が深い」作風です。
「ねじ式」と「ゲンセンカン主人」を初めて読んだ時は、けっこう衝撃的でした。
このブログの「話題」に関しては、私の趣味からくるものを、好き勝手に書いています。
そのため、あちこち話題が飛んだりもします。
そんな私のブログをこうして読んで下さり、本当に感謝しています。励みになります。
ちなみに「月光仮面」も「隠密剣士」も、私はリアルタイム放送では見れなかった世代です。よくて再放送だったり、のちにVHSテープやDVDなどで復刻されたものを見た上で、このブログで記事を書いてるケースは多いのです。
これからもよろしくお願いいたします。