時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

あの町を流れた信濃川

2010年02月22日 | 音楽活動
東京で生まれ、東京で育った私は、本来「帰れる田舎」というものを持たない。

小学校のころ、夏休みや冬休みに田舎に帰れる子がうらやましくて仕方なかった。

田舎で育ったわけでもないのに、古い民家や田園風景には、いつも惹かれていた。

なぜか、懐かしさなども感じていた。

不思議だった。

今でも、古い民家の外観や、内側の佇まいを見ると落ち着くし、観光名所でもなんでもないただの里山風景を見ると安心感を覚える。
そういう環境で生まれ育ったわけでもないのに。


・・・それには理由があった。


私は、幼稚園に入る前の幼い時期に、母方の祖母の家に預けられたことがある。
当時の母は仕事が忙しくて、幼いわが子(この場合、私のことだ)の育児に困って、私を家政婦さんみたいな人に預けたらしいのだが、それを知った祖母が、孫を一時引き取る・・と言い出したらしい。

祖母は新潟で生まれ、そのまま新潟でずっと暮らしていた。

私は・・・東京を離れ、新潟に行くことになった。

祖母に連れられ、新潟に向かう途中・・あるいは、祖母の家に着いて、そこで暮らし始めた時、どんなことを思ったか、どう感じたか。それはもう覚えていない。


後から知ったことだが、新潟で暮らした期間は、たった1ヵ月半くらいだったらしい。


でも、幼稚園に入る前の年代の幼い子供にとっての1ヵ月半と、大人の1ヵ月半では、同じ1ヵ月半でも、体感する「長さ」が違う。

その「たった1ヵ月半」は、私にとっては、数年分くらいに感じた。

きっと、濃厚な時間が流れたのだろう。


たった1ヵ月半という期間で、しかも、幼稚園に入る前の幼い頃。

普通なら、そういう体験は、記憶の底の底に埋没し、記憶の海の海底で地層化し、その記憶の大半は忘れてしまい、普段その記憶は姿を表さないであろう。

だが・・私は違ったようだ。


その時の風景がかなり頭の中に映像として残っているのだ。
いつでも取り出せる「現役の記憶」として。

それほど、私にとって、大きな体験だったのだろう。


去年、親孝行も兼ねて、私は母と旅をした。
夕飯の時に、幼稚園に入る前に1ヵ月半過ごした田舎町の風景の記憶を一つづつ母に話して聞かせたところ、ほぼ私の記憶通りだったことが分かった。
私としては、てっきり、いろんな過去の風景がごっちゃになっているような気もしてたのだが。

母いわく「まさに、その通りの景色だったよ」。

祖母の家は、母にとっては「生まれ育った町」であるから、母は当然私よりもはっきり覚えている。

母は・・「そんなに小さい頃の、短い期間のことを、なぜそんなに覚えているんだ・・」と、感心しながらも、半ば絶句したように呆れていた(笑)。


で、母はしみじみ続けた。

「あんた(私のこと)は昔から古い民家や自然風景のある田舎が好きだった。それは、その新潟での1ヵ月半の生活が、心に残っているからだったんだねえ。理由がよく分かったよ。幼い頃の新潟での1ヵ月半は、その後のあんたの人間形成・価値観に大きな影響を与えたんだね。」


そう・・・それは・・私にとっては「一生ものの体験」だったのだ。


あれから長い年月が過ぎ去った。
その町では変わらぬ風景も若干残されてるようだが、全体的には今や表記名をはじめ色々と変わってしまったようだ。
ならば・・私の記憶にある「昭和30年代(後半かもしれない)」のその町の風景を、歌にして残しておきたいと思った。

そんな歌が一体、誰かの何かに役にたつのだろうか?
きっと、何の役にも立たないと思う。

でも・・とりあえず、自分のために・・自分の原点のために、歌にして残しておきたい。


そう思って、出来上がった歌が・・・


「あの町を流れた信濃川」

である。

この歌、歌詞が13番くらいまであり、おそろしく長い。

その分、早いペースでポンポン歌い進んでゆく曲調にしてみた。
スローな曲にしてしまったら、1曲歌い終わるのに20分くらいかかってしまうだろう(笑)。


この歌を人前で歌ったのは、某居酒屋で酔っ払って、勢いで歌った1回のみ。

この長さゆえ、1曲フルで歌いきるのは非常に勇気と決断とエネルギーが必要で、歌い終わったらヘトヘトになり、ぐったりとしてしまった(笑)。

また、聞かされるほうにとっても、こんな長い歌を聴かされるなんて、たまったもんじゃないだろう(笑)。
聴かされる側にとっては迷惑であり、聴いてて飽きてシラけてしまうこと必至。

なので、今後も人前で歌う事は、まず無いと思う。


でも・・あの時代のあの町の風景の写真は、私の手元には残っていない。

ならば・・せめて、記憶の風景を歌詞にした、この歌を公開しておきたいと思って・・・


残しておくことにしました。


昭和30年代の、田舎の、とある町の風景を、この歌の中に保存しました。


「あの町を流れた 信濃川」 こちら ↓
http://homepage2.nifty.com/oborokage/sinanogawa.html





この歌で描いた風景は、私の「心の中の原風景」の一つです。

皆さんにも、心の中の原風景というものがあるのではありませんか?

それは一体、どんな・・・?



ちなみに・・今では、祖母の家は、跡形もないそうです。
母も、場所を特定できないくらい、町の風景は変わってしまったそうです。

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