時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

自分が育った街への、小さな旅。

2011年01月21日 | 

ちょっと前のことになるが、先日の正月休みに私はかねてから考えていたことを実現させた。

それは、自分が育った街に行き、なじみの場所の多くを歩いてまわり、現在どうなっているのかあちこち写真を撮ることだった。

細かい場所まで行って写真を撮るには、同じ場所を何回も通ることもあるだろうし(つまり、ウォーキングコースが重複するということ)、歩く時間はそれなりの時間を要するだろう。

日頃運動不足の自分にとっては、適度な運動にもなるし、昔よく通った飲食店が今も営業していれば、懐かしい味に再びありつける。

歩く時間は数時間に及ぶだろうし、しかも寒風の中。

途中でトイレにも行きたくなるだろう。

そんなこともあるので、行く前日には、翌日その街に行ってどういうルートでどういう場所を巡るかは、それなりに計画をたてた。

まずどこから始まり、どういうルートを通り、途中どこに立ち寄り、どこを見て歩くか。

トイレは公園にあるはずなので、今も公園が残っていれば大丈夫。公園は数か所あったはずだし、全部なくなってるということはないだろう。ルートの中に適度に公園を組み込めばトイレの心配はない。

腹が減りそうな時間に、かつての馴染みの店の近辺を通るルートにすれば、時間のロスも防げる。

 

めったにない機会だし、重い腰をあげて出かけるには、体力や気力の続く限り、なるべく多くの場所を見てまわりたい・・そう思った。

 

このウォーキングを考えたのは、もうかなり前だ。何年も前から考えていた。

だが中々実現できなかった。

あまり暑い時は嫌だし、前日ゆっくりできていて、しかもその決行日の翌日は仕事は休みであってほしい。

もちろん、決行日には他に何も予定が入っていないことも条件だった。

出かけるつもりでいたのに、当日になったら面倒くさくなったり、雨が降ってたり・・という理由で実現しなかったこともある。

 

正月休みは数日間の連休。行くなら今だ・・と思った。

 

で、意を決してでかけたのだが、最初のルートでいきなり「ついでにあちらにも行こう」という気持ちがわきあがり、最初から足をのばしての寄り道・立ち寄りの連続。

 

それは、小学校時代・中学校時代の級友の家のあった場所にも行ってみようと思ったからだ。

思い出すと、けっこう多数の級友の家のあった場所を思い出すことができた。

こんなにたくさん、当時の級友の家を覚えてたのか・・と思うと自分でも意外だった。

 

思い描いていた「歩いて、見てまわるコース」は・・・

実家のあった場所。これは基本。

通った学校。幼稚園、小学校、中学校。

通学路。通学時、私は「行き」と「帰り」でルートが違ったので、そのどちらのルートも歩く。

自分がよく遊んだ場所。

自分がよく外食したお店。

あと、当時通った駄菓子屋のあった場所をまわるのもマストだった。

それと、前述の通り、級友の家があった場所。

 

主に上記の場所を歩いて散策し、今はどうなっているのかを写真に収める。

それがテーマだった。

当時住んでた場所の、自分の活動エリアの多くを網羅することになるので、一日で歩くとなると、けっこう大変。

ルートや場所によっては、同じルートを何度もまわる必要も出てくる。

だからこそ、前日ゆっくり休めていて、翌日も休める・・ということが条件だった。

 

実家のあった場所や学校は、以前にも行く機会があって、今どういう風になっているかはある程度分かってはいた。

特に、実家のあった場所は、昔と今では全く違う風景になっているので、改めて訪れてみると、寂しさがいつも湧き上がる。

はっきり言って、地形すら変えられている。

実家はもとより、周りの家屋も、今では跡形もない。

「ここに本当は門があって・・・」とか、この道でキャッチボールして、ここにあった塀で忍者ごっこして、ここにあった空き地で虫取りしたり、秘密基地作ったり・・とか。

今の現地では、そんなこと何一つできない感じになっている。

 

小学校は今も現役なのは救いだ。

幼稚園はとっくに閉園になり、建物の半分は取り壊されて駐車場になっている。残ってる建物は廃屋っぽく残されているが、シャットアウトされており入ることはできない。

窓ガラスごしに中を覗くと、中には「きくぐみ」の看板が残ってたりするし、棚なども残っている。今では誰にも使われることはないのだろうか。

ちなみに私は「たけぐみ」だった・・・と思う。

敷地内屋外の遊具はかろうじて一つだけ残っている。

これはほとんど地形の一つになっているので、取り壊されずに放置されているのであろう。

動かして撤去できる遊具は、もうない。

 

神社は、地形そのものすら変えられている感じで、通り抜けできた道が塞がれていたりする。

 

昔駄菓子屋は数店あったのだが、今ではどれも跡形もない。まあ、これは予想されたことだが、かつて駄菓子屋があった場所に、近代的な家屋が建ち並び、路地すらなくなっている様は、見てて少し呆然としてしまう。

級友の家があった場所をあちこち見てまわると、思いがけない光景もあった。

もちろん、ほとんどの家はなくなっていたり、別の名字の人が住んでいるのだが、中には同じ場所に、その級友の名字と同じ表札が出ている家もあった。

建物は新しくなっていても、そこに級友の名字の表札があるのを見ると、なにやら少し嬉しくなった。

とはいえ、名字が同じでも、級友本人が今もそこに暮らしているとは限らない。

級友の実家ではあっても、級友本人はもうその家にはいない可能性は高い。

仮に級友本人が今も住んでいるにしても、何十年ぶりに私をいきなり見ても、分からないだろう。

 

かつて級友の家があった場所には、たいがいは大きなビル(スーパーやマンションなど)が建ってたり、駐車場になっていたり、別の人が住んでいたりしており、そういう光景を見るたびに、「あいつ、ここに住んでたんだよなあ」とか、「あの子、今はどこでどうしてるのかな」なんて思ったりした。

 

馴染みの飲食店は・・・運よく(?)まだ健在の店が何店かあった。

健在の店の一つに入り、メニューを見ると、値上がりはしているものの、昔と変わらぬメニューがあると、妙に嬉しい。

で、オーダーして出てきたのを食べると・・「そうそう、この味!」と思う。昔と変わらぬ、「私が大好きだった味」が、そこにあった。

 

 全体的には、街はすっかり変貌し、まったく別の街のようになっていた。

ここまで変わるか・・と言いたいくらい。

 

結局、どれぐらい歩いたのだろう。

ゆうに4~5時間は歩きまわっていたと思う。途中昼飯を食べた時以外は、基本的にずっと歩きっぱなし。

自分の当時の活動エリアすべて・・とまではさすがにいかなかったが、それでも大半はまわることができたように思う。

 

日頃の運動不足がたたり、帰宅したら一気に疲れが出た(笑)。

これでも学生の頃は、一晩かけて山手線を歩いて一周するロードハイクに毎年参加してたものだ。

夜7時に池袋を出発し、山手線を歩いて一周し、朝7時に池袋に戻ってくる・・そんなイベントだった。

12時間くらい歩いてたことになる。

それに比べたら、今回の4~5時間のウォーキングは、たいしたことはない。

 

・・はずなのだが、やはり日頃の運動不足は大きかったようだ。

 

この「自分が育ったエリアを、あちこち歩いて、今の姿を見るウォーキング」では、色々な思いを得ることになったし、新たな発見もあった。

街のその変貌ぶりに、寂しさをあらためて実感することも多かった。

 

思うに、こういうテーマのウォーキングは、自分一人で歩いたからいいのだろう。

なぜなら、目に入る光景はほとんど「何の変哲もない、普通の街風景」ばかり。

それぞれの場所に思い入れがない人が歩いても、面白くもなんともないだろう。

絶景ポイントがあるわけでもなきゃ、観光名所があるわけでもない。ただの、よくある街風景。

 

それぞれの場所に自分の記憶が埋まっているから、見て歩いて意味があるのだと思う。

このエリアに縁のない人と一緒に歩くと、かえってその相手に気を遣ってしまい、歩くルートを省略したり、行き直したりはしにくいだろう。

自分一人だからこそ、何の変哲もない街風景の同じ場所を何度も歩いたりすることもできたのだと思う。

 

あくまでも自分一人だけで、自分が育った街を、記憶を蘇らせながら歩く・・・・中々いいもんです。

育った街から離れて暮らしている方、いかがでしょう、時間がある時に、貴方の育った街を訪れて歩く「小さな旅」をなさってみては。

きっと、得るものや発見があると思います。

 

こういった「小さな旅」は、一人で歩いてても、実は一人じゃないのです。

心の中に色んな人がでてくるはずですし、なにより大きなパートナーがしっかり貴方と共に居ます。

 

そのパートナーとは・・・    

 

 「記憶」です。

 

 

最後に。

何の変哲もない普通の町をうろつき、あちこちで立ち止まり、パチパチ写真を撮ってた私は、住人たちにとってはさぞかし「怪しい奴」に見えたことだろう。

実際、怪訝な表情で私を見てる人はいた。

私・・・決して怪しい人間じゃありませんよ(笑)。

単に、その町で育って、久々にその町を訪れた・・ってだけの人間です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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