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あちこちのCDショップを巡って探してたのだが、どこにも売ってなかった。
マイクの初期3部作と呼ばれる「チューブラーベルズ」「ハージェストリッジ」「オマドーン」のうち、「オマドーン」だけがどこにも売ってなかった。
限定生産ということなので、もうこうなったら中古狙いに走るしかないかな・・と思ってたのだが、最近やっと入手することができた。
良かった・・・。
「オマドーン」。 by マイク・オールドフィールド。
私がこれまで聴いてきて全てのジャンルの無数のアルバムの中で、私にとってはナンバーワンの位置に君臨するアルバム。
このアルバムに対する思いはことさら強く、それだけにいくら言葉を尽くしても尽くし足りないぐらいだ。それぐらい好きで仕方ない。
私がこのアルバムから受けた影響は、果てしないくらい大きい。
最初に聴いた時の衝撃は忘れられない。今でもその時のことを覚えている。震えるくらい感動した。
あんな経験、そうそうあるものではない。
映像などなくたって、生でなくたって、本当に素晴らしい音楽は、それだけで人の心を揺り動かす。聴覚だけで。
映像がなまじなかったぶん、聴き手は自分なりの映像を、あの音楽に重ねて、しかもそのイメージをどんどん膨らませることができた。
映像が浮かんでくるような音楽なのだ。
出だしからいきなり心を鷲掴みされ、いきなり「ビビッと来た」。もうこうなると、相性の問題だった。最初のインスピレーションだけで「お、これは・・・」と、かまえて聴いた。聞き流すことなどできそうもない・・そんな気がした。
間違いなくこれは好きになる・・・そんな予感が、初めて出だし部分を聴いただけで心に去来した。
で、その期待は最後まで裏切られることなく、予感は現実のものとなった。
そして、長い曲にも関わらず、次々と展開が変わってゆく曲調に「飽き」や「長さ」を感じさせる隙はなく、あれよあれよと引き込まれ、ただただ聴きほれるのみ。あっけにとられながら。
メロディの変化、リズムの変化、音量の変化、転調、・・など、次々と展開していきつつも、共通の精神性は一貫しており、その流れにまったく、無駄がない。奇跡のような作品に思えた。
静けさ、神秘さ、自然の息吹、優しさ、激しさ、心の高揚、やすらぎ、楽しさ、可愛さ、至上の美、情念、繊細さ、大胆さ、青空、森、空間、無邪気さ、純粋さ・・その他、無数の要素が詰まっている気がした。
心が洗われるように無垢な気持ちになれたり、一緒にフォークダンスでも踊りたくなるような個所もある。
その脈打つ鼓動と盛り上がりに、鳥肌が立つ個所もある。
牧場で放し飼いになってる動物たちの中にいて、微風を感じてる気分になる個所も。
かといえば、森の中で妖精たちに囲まれてるような錯覚を覚えたりもする。
夏も、冬も、雨の降る日も晴れの日も、平和な気持ちでいられながらも、心の中では孤独感の陰りも感じたり。
都会にいるより、自然の中にいたい・・そんな衝動にも駆られる。
馬に乗って自然の中にいて、その気になれば、精神だけでも宇宙にまで飛翔できるような気分にもなれるのかもしれない。
な、なんなんだ、これは。
ジャンル分け・カテゴリー分けという概念が、この音楽の前ではバカバカしく思えた。
そして、聴き終わって、この一大音楽絵巻が終わってしまったことへの喪失感や、それから来る虚脱感。
もっともっと聴いていたくなる・・・そんな作品だった。
そんな「オマドーン」のデラックスエディション。
最新リマスターのバージョン、オリジナルバージョン、オマドーンと近い時期に作られた短い曲たちと、そのプロモ映像。
そして、「オマドーン」の未発表デモバージョン。
内容は以上の通りである。
個人的に興味があったのは、最新リマスターバージョンで、オリジナルとどうサウンドが変わったか。ということと、何といっても「未発表のデモバージョン」。
私にとっては、この二つがこのデラックスエディションの目玉だった。
まず、最新リマスターバージョン。
あちこちに、オリジナルバージョンとの違いは感じたが、特に感じたのは各楽器の臨場感がアップして、より浮き出る感じになっていたこと。
弾き方の細かいニュアンスが伝わってくる感じになってる気がする。
それと、途中のドラムの音。アフリカンパーカッションではなく、ドラムの方だ。
これが以前はもっと隠れていたような気がするが、今回のリマスターで、よりクッキリしている。
今、化粧しなおしたオマドーンを新たにじっくり聴いて、冷静な気持ちで、自分なりに、なぜこの作品が良いのか見つめなおしてみても、パート1(LPではA面)に関しては、その構成や展開には今更ながら非のうちどころがなく、完璧だ。
強いていえば、パート2(LPではB面)の冒頭部が、やや長いかな・・という気はしないでもない。
だが、パイプが出てきて、まるで花畑にでもいるような平和な雰囲気になる個所や、フォークダンスでも踊れそうな躍動感ある中盤部分は、パート1に勝るとも劣らないくらい好きだ。
そう・・・今、弱点を見つけようとしても、それぐらいしか見いだせなかった。
また、リマスターによる変更点では、一点だけ残念な部分もあった。
それは、パート1のクライマックスのあたりで、本来ならテーマメロディがドーン!!とリプライズで出てきて、ドラマチックな効果をあげ、統一感と共に大きな感動をリスナーに与え、クライマックス感満点だったのだが・・・今回のリマスター版では、そのクライマックスでのテーマメロディのリフレインが後ろに引っ込んでしまっていること。
ここは大きな感動ポイントだったのに・・・そこが引っ込んでしまうとは・・やや肩透かしだったかなあ。
まあ、その分、リズムが強調されているのだが、やはり、クライマックスでのテーマメロディのリプライズはしっかり強調してほしかったかなあ。
なぜそのトラックを引っ込ませてしまったのですか~、マイクさん。
まあ、それ以外は、「新たな気持ちで、化粧直しをしたオマドーンを聴く」という贅沢を味わわせてもらえた。やはり素晴らしい作品であることは間違いないですよ、マイクさん。
それと。
目玉の一つである「未発表デモバージョン」。
これは興味津々だった。無くなってしまったと思われてたテイクで、後の完成版「オマドーン」の原型になったテイク。
細かいフレーズやテーマメロディなどは完成版と同じではあるのだが、散りばめられた箇所が違う。
曲の展開や構成は、微妙に違ったり、大幅に違う箇所もある。
大幅に違う箇所は、途中男性のしゃべりの掛け合いが出てくる箇所。これは完成版には存在しない。
完成版をよく知ってるだけに、興味深く、面白いテイクだ。
だが、全体的に、完成度という意味では、やっぱり後の完成版のほうがさすがに上だ。
マイク自身も、やりなおして正解だったと思ってるようだし。
だが、原石であることは間違いない。これがあったからこそ、後のオマドーンの完成度の高さにつながっているのが分かる。
元々、ヒットチャート狙いの商業主義音楽とは対極にいる作風であり作品であるがゆえに、今の時代に聴いてもまったく古さは感じない。
今聴いても、ホント、新鮮な作品である。こういう音楽、他にないもの。
オマドーンは、古さ・・とか、新しさ・・とか、そういう基準をあてはめられるような作品ではない。そういう価値観とは別次元の音楽なのだ。
まさに独自の音世界であり、音楽絵巻でもある。
この曲を、まだ聴いたことがない方は、「初めてこの曲を聴く」という贅沢が待っている。新曲として、この曲を聴けるという特権がある。
ぜひ、その贅沢を、特権を、ものにしてほしい。
また、この曲をこれまでに何度も聴いてきてる方は、「化粧直しをしたオマドーンが聴ける」・・という幸せが、このデラックスエディションにはある。
最後に・・・マイクさん、オマドーンを日本で生で聴ける日がくるのを、待ってます。
前回の来日公演に行けなかった私としては、特に。
オマドーン。 ジャンルや時代を超越した、世紀の傑作アルバム。
若かりし頃のマイク・オールドフィールドのほとばしる才能の結集が、記録されている作品だ。
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