「別冊太陽」のシリーズで、中原中也特集の本が出ていた。
思わず買ってしまった。
タイトルは「中原中也 魂の詩人」。2200円。
中也の写真というと、有名なのは、帽子をかぶって中性的な顔をしてる顔アップ写真だろう。
今回紹介するこの本の表紙に使われた写真は、更にそれより若い頃の写真だろう。甘く、端正な顔つきはそのままだ。
本の中には、中也の家族の写真、中也の幼い頃の写真、晩年の写真、周辺人物の写真、中也の生い立ち、作詩ノート、生原稿、美しい自然写真に乗せられた詩、詩の検証、彼のファッション、色んな中也研究、色んな人の中也評、彼の生きた時代の世相への言及、などが収められ、全体的に中也を多角的に捉えた本になっている。
ファンなら、ぜひ持っていたい本だ。
中也関連の色んな写真がふんだんに盛り込まれ、視覚的に中也を、そして彼の詩の世界を、楽しめる出来映えになっている。
特に、彼の写真に関しては・・・私は彼の写真は、帽子をかぶった中性的な彼の若い頃の顔のアップ写真(そう、一番有名な写真)しか知らなかったので、この本に収められた何点もの彼の写真は興味深かった。
あの有名な写真を見てた時、中也は容姿も悪くなかったんだな・・とは思っていたが、この本に収められた彼の何点かの写真を見て、改めて、彼は容姿にも恵まれていたなあと思った。
甘く、端正な顔。
とはいえ、彼は議論好きで、かなり弁舌は辛辣だったらしいが・・。
もともと中原中也は人気のある詩人なのだが、ここ最近、その人気が再燃してる感じ。
インターネットがすっかり定着し、ブログなどで文章を書く人が増え、その結果「言葉」というものに対する認識が強まっている。
だからこそ、言葉の宝庫である作品や人物が再評価されてるのではないだろうか。
ディランの人気再燃もその流れとは無関係ではないような気もするし、中原中也の人気再燃もそれとは無関係ではないような気がしてならない。
思うに、70年代フォークが見直されたのは、今のJ-ポップの歌詞では失われたような内容の歌が70年代フォークにはあったからのような気もしている。
今ではもう歌の題材にされないような題材が、当時は歌にされていたりしたからね。
歌謡曲全盛の時代にあって、フォークが新鮮に映ったのは、そのへんにも起因してるような気がするし。
ネットの普及は、言葉に対する関心を高めたというメリットがある反面、言葉をぶちこわす風潮も生んだ。
その意味では功罪両面がある。
とりあえず、言葉に対する関心を高めたという「良い点」は大事に捉えていきたい。
今の時代にいて、中也の詩を読んでると、もしも中也が今も生きていたら、どんな言葉を使うのだろう、どんな言葉を残すだろう・・なんて思うこともある。
そんな「もしも」遊びをしながら、この本を読むと、またひとつ別の思いにとらわれたりもする。
人の胸をうつ言葉は、いつの世もうつ。それも、形を変えてうつこともあれば、本来の意味でうつこともある。
多少の時代傾向に影響されることはあっても、普遍の言葉は残っていく。
夭折の詩人、中原中也が今この本の中にいる。お勧め。
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