パブロ・クルーズ。
アメリカのサンフランシスコのロックバンド。
私の学生時代、自分のまわりに音楽仲間はたくさんいたが、パブロ・クルーズを知ってる友はいなかった。
そんな友達の中で、私は一人でパブロ・クルーズの名前を会話に出し続け、まわりに広めていた。
皆に知ってもらいたくて。
パブロを聴いた友人の多くは、パブロを好きになってくれた。
しまいには、友人たちが組んでるバンドで、パブロの曲をカバーしたりもしはじめた。
着実にパブロは、私の一部の友人たちの間で広まっていった。
パブロ・クルーズというバンドの存在を私が知ったのは、「ミュージック・ライフ」という音楽雑誌の新着アルバムレビューのページで・・だったと思う。
そこで紹介されていたのは、パブロのサードアルバムで「ア・プレイス・イン・ザ・サン(邦題「太陽のあたる場所)」であった。
凄く高評価なレビューが書かれていた。
「太陽のあたる場所」という邦題、そしてトロピカルなジャケット、そして評価の高いレビュー・・・これらの要素から興味をひかれ、なんとなく気にはなっていた。
で、レコード店に行ってジャケットを確認。
ヤシの木、海、太陽・・・この3要素のジャケットに私は当時弱かった。
当時、見知らぬアーティストのアルバムを、ジャケットにつられて買うケースが多かった私だったが、パブロのこのアルバムもまた「ジャケット買い」する価値はあった。
特に、ヤシの木、海、太陽・・の要素を含むジャケットのアルバムを、中身もよく分からぬままに「ジャケット買い」して、私の趣味の中で外れたケースはあまりなかった。
なので、このアルバムも、なんのためらいもなく購入したのだった。
当時、ポパイという雑誌が、アメリカ西海岸志向を強く押し出し、巷で大人気だった。
西海岸のライフスタイル、ファッション、スポーツ、そして音楽が雑誌では毎回紹介され、私は愛読者の一人だったといえるだろう。
特に、西海岸の音楽・・・いわゆるウエストコーストサウンドと呼ばれた音楽は、私の好みに見事に合致し、さまざまなウエストコーストロックを聞きまくっていたものだった。
パブロもまたウエストコーストロックの一員とみなされていたし、またサーファーに人気があったことからサーフロックなどとも呼ばれていた。
ウエストコーストロックの特徴としては、まずはさわやかで明るい曲調、広がるコーラス、エレキバンドでのアコースティック楽器の導入のうまさ・・・などがあげられたと思うが、それはパブロにも見事に当てはまった。
エレキとアコースティックの融合サウンドが好きだった私が、パブロを気に入らないわけはなかった。
パブロのアルバムの中で「ア・プレイス・イン・ザ・サン」を一番最初に聴いた・・ってのがよかったのかもしれない。
このアルバムは、数あるパブロの中で最高傑作とされている名盤。
ほんと、いいバンドの良い時期に、良いアルバムにめぐり合った・・そう思っている。
パブロの魅力は、元気いっぱいのボーカル、明るくノリのいい曲調、さわやかできれいなコーラスなどがそうだが、彼らが他のウエストコーストロックバンドと一線を画していたのは、コリーの弾くピアノだったのではないか。
ジェンキンスの歌心あふれるメロディアスなギターもバンドの看板だったが、それ以上に、コリーのピアノは存在感があった。
クラシックの素養を感させる品の良さ、そして華麗なメロディライン。
私は当時様々なウエストコーストロックを聴いたが、パブロのような、ピアノを前面に押し出したバンドは・・・他に中々なかったように思う。
ジェンキンスのギターに勝るとも劣らない歌心あふれるピアノフレーズは、パブロの一大看板だったと思う。
来日公演に行った時、コリーは、フレーズごとに客席を見つめ、演奏しながら目で客と会話していた。
そう、客とアイコンタクトしながら演奏していたのだ。
その姿が極めて印象的だったのが忘れられない。
「ア・プレイス・イン・ザ・サン」というアルバムは、楽曲の良さもさることながら、そのアレンジも凝っており、明るく元気なボーカル、きれいなコーラス、親しみやすくメロディアスな楽曲、歌心あふれるリードギターとピアノ、ファンキーなリズムだけでなく、アレンジにはフュージョンやプログレ風な味付けも施されている。
そんな良い意味での「ごった煮」的なよくばり感覚が私は大好きだった。
このアルバムは収録曲全てを私は気に入っているが、中でも特に好きなのが「トゥナイト・マイ・ラブ」と「アトランタ・ジェーン」。
「トゥナイト・マイ・ラブ」は、かつて二名敦子さんという女性シンガーによって日本語でカバーされたことがあるので、ご存知の方も多いかもしれない。
千葉にバンド合宿に行って、あたりに千葉特有の田園風景が広がり、海に近い道を走っている時に、何気にラジオをつけたら、聞き覚えのある曲が流れた。
その曲が大好きな私だったので、その曲がなんであるかを間違えるわけはなかった。
その曲は、パブロの「トゥナイト・マイ・ラブ」だった。
だが・・・どうもどこか違う。
いや、サウンド的には、ほぼオリジナルと変わらない。
でも、なんとなく違う。
・・と思ったら、いきなり女性ボーカリストの声で、しかも日本語で歌われ始めた。
びっくりした。
この曲をカバーする人が現れるなんて。いいセンを突いてくるなあ・・・と、その選曲センスに感心し、なおかつ嬉しくもなった。
日本語で歌われる「トゥナイト・マイ・ラブ」を聴きながら、「え?こういう内容の歌詞なの?」と思ったりした。
パブロのオリジナル英語バージョンは、歌詞にあまり注意を払わないまま、私は聴いていた。
LPジャケット内には、訳詞は載ってなかったし、かといって自分で訳してみようともせず、ただただそのサウンドとメロディに酔いしれていたからだ。
サウンドとメロディだけでも、私にはこの曲は十分すぎるほど魅力的だったから、歌詞の内容のほうは勝手に自分で自分なりにイメージを膨らませて聴いていた。
二名さんによって歌われた歌詞内容は、私がこの曲に対して抱いていたイメージ内容とは少し違った。
待ち望んでいたタイプの異性と、今夜やっと出会うことができ、その異性はこの歌の主人公の部屋にやってきた・・・・そんなシチュエーションだった。これから始まる恋の歌。
後から分かったことだが、パブロのオリジナルの歌詞とは違う内容になっていたようだ。日本語で歌うにあたって、独自の歌詞をつけた・・そんな感じだったようだ。
私がこの曲に抱いていたイメージは、広がりのある自然風景があって、その風景の中で恋人と一緒に過ごして、前進している・・そんな感じだったので、少し面くらった記憶がある。
まあ、実際のこの曲の歌詞の内容と照らし合わせて聴いたわけではないけれど。
とりあえず、日本語を乗せることで、日本人にこの曲がもっともっと知られるようになるなら、それはそれで悪くないと思った。
この曲のファンとして、そしてパブロクルーズのファンとして。
なにより、アレンジを変にいじくらず、オリジナルの通りに再現していた点に、私は共感を持ったものだった。
二名さんが歌うことで、この曲はオリジナルよりも少しオシャレなポップス風になっている気がしたが、それはパブロがキーぎりぎりっぽい高さでロックっぽく張り上げて歌っていたのに比べ、二名さんは女性シンガーであるというキーや声質の違いのせいか、けっこう落ち着いて余裕で歌っていたので、その差が出ていたのかもしれない・・・と今となっては思う。
そう、二名さんのバージョンは、割とシティポップス(古い表現だが)っぽく聴こえ、パブロのオリジナルはもっとロックっぽく聴こえた。
ともあれ、この曲のおかげで、車を運転しながら、かなりいい気分で千葉の田園風景の中を進んでいたのを私は思いだす。
バンド合宿がひとつの旅行であるなら、この曲にはそんな「旅の思い出」が私にはある。
だが、この曲に関する私の「旅の思い出」は、これだけではなかった。
その記憶に関する記述は、次回の日記で書くことにする。
というわけで、この日記は・・・パブロ・クルーズの「トゥナイト・マイ・ラブ」という曲に関する私の記憶は・・・
次回に続く!
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