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気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

さよならアメリカ さよならニッポン  by  はっぴいえんど

2021年04月20日 | 音楽全般

 

今や伝説のロックバンドとして名高い評価を受けてるバンド、「はっぴいえんど」。

なにしろ、メンバーが凄すぎた。

その後の日本の音楽界を支えていくことになったメンバーばかり。超大物ぞろい。

 

大瀧詠一  ギター、ボーカル

鈴木茂   ギター、ボーカル

細野晴臣  ベース、ボーカル

松本隆   ドラム

 

どうであろうか?信じられないメンバー。「なに、このメンバー!!」って言いたい。

今考えると、ほとんどスーパーバンドである。こんな大御所ばかり集まったバンドが、本当にあったのか?と思いたいぐらい。

もっとも、このバンドの時代は4人ともまだ若く、あまり世間に知られてはいなかったが。

 

 

今回取り上げる「さよならアメリカ さよならニッポン」は、彼らの3枚目のアルバムにして、ラストアルバムになってしまったアルバム「Happy end」のラストに収録されていた曲。

 

はっぴいのオリジナル曲の作詞といえば、その後の日本の歌謡曲の大御所作詞家になった松本隆が有名だが、この曲の歌詞は

「さよならアメリカ さよならニッポン  

 さよならアメリカ  さよならニッポン

バイバイ バイバイ バイバイ バイバイ」

しかない。

この歌詞の繰り返しがひたすら続く。

で、この曲のソングライティングのクレジットは、作詞作曲が「はっぴいえんど」名義になっている。

 

事実上のラストアルバムのラスト曲にしては肩透かしをくらったような、あっけないぐらいの歌詞。

だが、ここには当時彼らが置かれていた状況と、それに対するメンバーの感情が込められていたそうな。

 

今でこそ全員大御所だが、当時は日本であまり認められなかった。

彼らが憧れてたアメリカに渡ってみても、アメリカでもあまり理解されなかったようだ。

自分らのやっていることは、革新的であっても、中々周りに認めてもらえなくて、その状況からくる感情が、「さよならアメリカ さよならニッポン」という言葉に集約されていたのかもしれない。

 

このアルバムは私が最初に聴いた時もすごく印象的だったし、気に入った覚えがある。

ともかく1曲1曲に良さがあった。

そんな中で、ラストが同じ歌詞を繰り返すこの曲だったことに、けっこう衝撃を受けた覚えがある。

え?この歌詞の繰り返しで終わるの?・・という感じで。

 

最初に聴いた時は、どこかやけくそになっているようにも思えた。

でも、サウンドは凄く良くて、面白かった。まるで混沌としてるような不思議なサウンドに思えた。

今でも、この曲のようなサウンドの曲は、なかなか見かけない。

メロディは、一発で覚えられる親しみやすいメロディ。

歌詞が超シンプルだったせいもあって、簡単に覚えられた。

あまりに印象的だったから私の心の中に深くインプットされ、その後たまにこの曲を口ずさんでしまうようになり、月日は流れていった。

 

その間に、メンバーはどんどん日本の音楽界の大御所になっていった。

この曲は、それまでの自分らや、取り巻く環境や状況への決別の歌だったのかもしれない。

今でこそ伝説のバンドとしてリスペクトを集めているが、当時は中々認められないジレンマもあったのだろう。

だから、言いたいことは心の中に山ほどあっても、それをいちいち口にせず、ただただ簡潔に「さよならアメリカ、さよならニッポン」という象徴的な言葉を繰りかえずことで、かえって言いたいことが山ほどあることが伝わってくるような気がした。そう、それは聴きこめば聴きこむほどに。

 

このアルバムのレコーディングはアメリカで行われたようだが、レコーディングには、ローウェル・ジョージやヴァン・ダイク・パークスも参加したらしい。

ローウェルといえば、あのリトル・フィートのギタリストで、スライドギタリストとしては特に評価の高かった人物。「ディキシーチキン」というアルバムは名盤だったっけ。

ヴァン・ダイクといえば、なんといっても、ビーチボーイズのアルバム「スマイル」の制作にもかかわっていた人物(もっとも、当時の「スマイル」は途中でとん挫してしまったが・・)。

 

 

はっぴいえんどは、初期の頃、あの岡林信康のバックをやっていたことがあることでも知られていた。

岡林さんの音楽性と、はっぴいえんどの音楽性にはけっこう隔たりがあったと思うので、今考えると意外な組み合わせのようにも思えた。

 

当時日本の音楽シーンでは、フォークやロックのミュージシャンの間では、はっぴいは「良い音を出すバンド」として知られていた。

いわゆる「玄人受けするバンド」であった。

拓郎さんなどは、当時彼のバックバンドに「ミニバンド」というバンドがあったのだが、「ミニバンドをはっぴいえんどのような良い音を出すバンドにするのは無理」などと、半分冗談・半分本気のような感じで語っていた。

もっとも、ミニバンドは拓郎さんはそれなりにお気に入りだったようではあったが。

ちなみに私も、拓郎さんがミニバンドと組んでた時の家族的な雰囲気は好きだった。

まあ、それはそれとして。

 

雰囲気的には、当時のフォークミュージシャンの間では、はっぴいのサウンドはけっこう羨望の的だったのではないか。私はそんな印象を持っていた。

 

なにせ、あのスーパーメンバーである。そりゃ他のバンドとは一味違っていただろうし、進んでもいただろうし、今考えると当然だったかもしれない。

 

ドラムだった松本さんは、その後日本の歌謡界において、超一流の売れっ子作詞家になった。歌謡界を代表する作詞家になったといっても過言ではあるまい。小林旭さん、松田聖子さんなどをはじめ、大物からトップアイドルまでの作詞を手掛け、大ヒットを連発。

 

大瀧さんは、音楽プロデューサーとして、ソングライターとして、数多くのシンガーに曲を提供し、これまた大ヒットを連発。自身のソロアルバムも、ベストセラーを記録。

世の中にはスタンダードナンバーと呼ばれる名曲が多数あるが、大滝さんのアルバム「ロング・バケーション」などは、さしずめスタンダードアルバムと言ってもいいだろう。

 

細野さんは、独自のソロアルバムを発表した後、泣く子も黙るメジャーバンド「YMO」を結成し、一世を風靡した。

ソロワークのトロピカル3部作も私は好きだが、YMOに関してはあまりにメジャーすぎて、今更私が言及するまでもあるまい。

 

鈴木さんははっぴい解散後、名作アルバムを発表し、ブレイク。またギタリストとしても数多くのレコーディングに参加し大活躍。特にファーストソロアルバム「バンドワゴン」の出来は不滅で、レコーディングにはリトルフィートのメンバーが参加した。日本のロックアルバム名盤ランキングでは、必ず入ってくる名作だ。

 

私自身、細野さんのアルバムも、大瀧さんのアルバムも、鈴木さんのアルバムもリアルタイムで追いかけていた覚えがある。

ほんと、誰のアルバムも良かった。

全体的に言えたのは、誰のどのアルバムも、センスが素晴らしかった。

そして何より凄いのは、今聴いても古さを感じない内容であること。

 

それぞれの個性やセンスは、はっぴいえんどでの体験が大きく「根っ子」になったのだろう。

 

そんなはっぴいえんどのラストアルバム「Happy end」の最後を飾った曲「さよならアメリカ、さよならニッポン」には、感慨深いものを感じる。

まだ無名だった4人のスーパーミュージシャンが集結し、音楽を追求し、当時一般的には中々理解されなかった状況にジレンマを感じ、とりまく状況に決別の意味を込めて制作したようなこの曲。なにやら、4人の心の叫びにも思えた。

はっぴい解散後の4人の大活躍、大ブレイクを考えると、この曲には特別な意義を感じずにはいられない。

シンプルな曲であるぶんだけ、余計に。

 

彼らが決別した「状況」は、その後やっと彼らに追いついていったのだろう。

 

はっぴいえんどの曲には良い曲が多い。

一番世間的に有名なのは「風を集めて」という曲かもしれない。

私的には、この「さよならアメリカ さよならニッポン」は、いつまでも忘れられない曲である。

ともかく、この曲の持つ余韻が、私の中では大きかった。

心の中に、大きなタネを植えられたような気分だった。

十代の頃に、この曲に出会えて、よかった。得した(笑)。

 

今のリスナーがこの曲を聴くと、メンバーがメンバーだけに、特にその歌詞に肩透かしをくらうかもしれない。

でも、その後の4人の大活躍を思い浮かべて、なおかつこの曲のリアルタイム時には一般的にはあまり認められてなかった・・という状況を考えて、聴いてみてほしい。

シンプルな歌詞の行間に、何か見えてくるものが、きっとあると思う。

多くを語らないからこそ、多くのことが伝わってくる、力強いメッセージソングだ。私は、そう受け取っている。

 

聴き終わって、知らず知らずのうちに、この曲をつい口ずさんでしまう方が、きっといるはずだと思う。

私がそうだったように。

 

https://www.youtube.com/watch?v=g2fz0B977VM

 


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2 コメント

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Unknown (鮎川愛)
2021-04-24 20:45:52
短いオープニングは、アマチュア・バンドのような乗りですが、内容は素朴だけど、何か深いものがありますね。

きちんとした歌詞を付けようと思えば、彼らなら必ず出来たはずです。

しかし敢えて「さよならアメリカ、さよならニッポン」をひたすら繰り返すだけ…。

故に深い真相を追及したくなりますね。

彼らにとって「さよなら」は、そのまま再出発宣言でもあったのでしょう。
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Unknown (だんぞう)
2021-04-25 07:00:40
この曲のサウンドって、リアルタイムで最初に聴いた時は、不思議なサウンドに思えたものでした。
なんか、つかみところがないような、色んなものが混ぜ合わされてるような。

そう、彼らなら多くを語ろうと思えばできたはずです。
なにせ、後に日本の音楽界を代表する作詞家になった松本隆さんか、このバンドにはいたのですから。

でもあえてそうはしなかったところに、この短く象徴的な歌詞に込められていた思いを私はなんとなく感じてました。
リスナーの想像力に託されてる気がしました。

このバンドは、解散しても、彼らの絆はその後も続いていたのですよ。
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