昔から、夏の終わりを感じさせる曲というのは数多くある。
今回取り上げるのも、夏の終わりを感じさせる歌だ。
加山雄三さんの「湘南ひき潮」。
加山さんの曲には有名な曲が多いが、その中ではこの曲は、さほど知られていない曲であろう。
でも、個人的には「隠れた名曲」だと思っている。
この曲は、「加山雄三通り」というアルバムに入っていた。このアルバムは、なんといっても「光進丸」という曲が入っている点が売りだったかもしれない。光進丸は、加山さんの持ち船の名前・・だったんじゃないかな。で、愛船のことを題材にしてできた曲が「光進丸」だった・・と思う。
キャッチーな曲だった。シングルカットされたことでも、それはわかる。
「光進丸」は、加山さんの曲の中でもよく知られている曲の中の一つで、ベストアルバムにはたいがい収められているだろう。
だが、「加山雄三通り」には、他にも良い曲がけっこうあった・・・そんな印象がある。
元々私は、このアルバムはカセットで持っていた。一時期よく聴いていた。だが、その時期から長い間私は聴いていないので、少し記憶もぼやけぎみ。
個人的には「フィジーにおいで」という曲なんかも、好きだったかなあ。
アルバムのメイン曲ともいうべき「「光進丸」という曲が良いのはもちろんだが、それに勝るとも劣らないくらい好きだったのが「湘南ひき潮」という曲だった。
割と地味な曲ではある。少なくても派手さはない。大がかりなアレンジでもない。
でも、味わい深いんだよね。
曲やサウンドの隙間の中に、リスナーの想像力を呼び起こさせるような出来上がりになっている。
シンプルなイントロ、のどかなメロディ、夏の終わりを感じさせる歌詞・・・・どれも好き。
イントロはエレキギターが1音1音を伸ばして、おだやかな海を連想させる。それでいて、賑わいの減った浜辺のガラーンとした様も見えてくる感じもする。海は時に荒れて多大な災害を人に与えるけど、おだやかな時は、その音といい、さざ波の様と言い、実に優しい。
松本隆さん作詞の歌詞もいい。
「砂の中のサンダル」なんて、光景が絵に浮かぶし、祭りの後みたいな「賑わいの跡」の象徴のような気にもなる。
「焼けた肌 袖に隠し 街へ行くバスに乗る」というくだりも好き。海から現実世界に帰ってゆく人の仕草を、簡潔な言葉で表している。
そして、なんといっても、メロディがいい。
私の思う加山さんのメロディの良さは、おおらかさ、明るさ、親しみやすさ、覚えやすさ・・・だと思っているが、「湘南ひき潮」にもそれは発揮されている。
「湘南ひき潮」は、おおらかで親しみやすいながらも、少し郷愁感のある切ないメロディになっている。
サビの終わりの部分の「君がふりむく」という歌詞の部分のメロディのまとめ方なんて、本当にうまいと思う。
メロディだけでも、夏の終わりを感じさせ、過ぎ去った夏を思う・・・そんな感じになっている気がする。
作曲家としても非凡なものがあるよね、ホント。
メロディの音程の幅を広げなくても、こんなにうまくまとめられる才能の持ち主。
そんな点も、加山さんの曲が広く親しまれていて、歌われている理由だと思う。
そう、覚えやすく、親しみやすく、歌いやすいのだ。
時々思うのだが、あの時代に出てきた加山さんが、もしも音楽1本に絞って芸能活動されていたら、どうなっていただろう。
まあ、加山さんならではの人生の送り方をしたからこそ、ああいう楽曲を作れたのだろうとは思うけど。
そういえば・・加山さんで思い出したのだが・・・
学生の頃、私は音楽サークルに入っていたのだが、夏合宿に行った時に、学園祭でのライブに備えてサークル員はバンドなどを組んだりしていた。
後輩がバンドを組む際に、そのバンドのヘルプを私は頼まれたのだが(ヘルプ・・というのは、確か、私は自分のユニットを持ってたからだ)、そのバンドでやる曲の候補として加山雄三の曲も上がった。その後輩は熱烈な加山ファンだった。
で、加山雄三のどの曲をやるかという話し合いになった時、当初「光進丸」を推す声があったが、私はこの「湘南ひき潮」を推した覚えがある。
結局そのバンドはお流れになってしまった(メンバーそれぞれが自分のユニットを持ってた・・ってのが大きかったのかもしれない)ので、この「湘南ひき潮」をやる機会はなくなってしまった。
そんなことがあったせいかどうかはさだかではないけど、フォーク居酒屋などに行った時に、ふとこの曲「湘南ひき潮」を私はたまに歌うことがある。
やはり・・・いい曲だなと思う。今も。
夏の終わりってのは、歌の題材になりやすい。
この日記の冒頭でも書いたが、夏の終わりを歌った歌というのはたくさんある。
私自身も、夏の終わりを題材にした歌は、過去に何曲も作ってきている。
HPで紹介してる私の自作曲の中でも「ラスト・サマー・クラブ」という曲などは、そうだ。
公開してない自作曲の中で、今思いだせる「夏の終わりを題材にした自作曲」のタイトルを、思いだせる範囲で羅列してみると・・
● 彗星の流れた夏(HPでの公開を考えたこともある)
● 夕陽のスケッチ(相方とセッションしたことがある)
● たそがれのモニュメント(多重録音で音源を作ったことがある)
● サンセットビーチ(学生時代にバンドでやってたこともある)
● さらば この夏(完全に埋もれた曲)
● なぎさ フライデーナイト(←冗談のようなタイトル(笑))
● ひとつぶの夏(アルペジオによる、おとなしい曲)
● 早く現実になじまないと(HPで公開済み)
・・・確か、まだあったはずだ。でも、すぐには思い出せない(笑)。
作ったのは、「早く現実になじまないと」以外は、大学時代に作った若い曲ばかりだ。
でも、今こうしてすぐに思い出せるタイトルだけでも、こうして何曲もある。けっこう私も作ってたんだなあ~。
これら以外に、真夏のことを歌った曲もけっこう作ったけど、ここでは「夏の終わり」の自作曲のみをあげてみた。
やはり・・夏の終わりは、歌になりやすいし、題材として魅力があるということなんだろうね。
ともあれ、加山さんの「湘南ひき潮」は、夏の終わりを題材にした曲の中でも、名曲の一つであることは間違いないと思う。
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