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初期の角川映画で「野生号の航海」という作品があった。
この映画は、1977年に、当時の角川書店の社長だった角川春樹さんが建造した古代船「野生号」で、フィリピンから鹿児島までを航海したときの模様を収めたドキュメンタリー映画。
この映画は実は私は見たような気もするし、見てない気もする。
ともかく映画の内容はあまり記憶に残っていない。
だが、この映画に使われた主題歌はよく覚えている。
私の友人が、この映画に使われた主題歌のシングルレコードを持ってたので、それをしばらく借りていたからだ。
で、今回取り上げる「コーダ」という曲は、そのシングルのB面に入っていた曲である。
A面の曲は「終りのない旅」という表題曲で、、ちゃんとボーカルの入った曲。
で、B面が「コーダ」という曲で、曲はインストナンバーだった。
このB面の曲が、良くて・・・。
はっきり言って、A面の曲よりも数倍好きだった。あ、もちろん、A面の曲も良い曲だったけどね。
「コーダ」は、まさに隠れた名曲だったと思う。
この曲が映画のどこに流れたのかは分からないが、タイトルといい、曲調といい、おそらく映画の最後あたりに流れたのではないだろうか。
そういう場面に似合いそうな、広がりのある曲だった。
主旋律は最初ピアノの印象的なメロディから始まり、途中からストリングスが引き継ぎ、広がってゆく。
最初のピアノメロディの部分では、穏やかな波を連想させ、途中からのストリングスでは、海面から空に広がってゆく感じだ。
そのどちらのメロディも素敵で、覚えやすく、しかも印象深い。
その冒頭のメロディには私はかなり影響を受け、またインスパイアもされた。
当時私が作った曲に、「コーダ」からインスパイアされた部分を盛り込んだこともあるぐらいだ。
曲自体は「コーダ」は、決して長い曲ではなかったように思う。
でも、実際の長さ以上の内容の濃さはあった。
というか、ああいう曲を、よくあの長さにまとめあげ、しかも感動的に仕上げたものだと思う。
そのへんは、やはり井上さんの才能だったのだろう。
「コーダ」を聴いてると、映像が浮かんできたものだった。
この曲に出会った時は、「野生号の航海」という映画は、そういう映画があるということすら知らなかった。
だから、浮かんできた映像は、実際にその映画で出てきたシーンではない。
だが、シングルのジャケット写真から、海と船の映像が浮かんできたのは確かだった。
私が思い浮かべた船は、人が1~3人しか乗れない、小さなイカダ。
で、浮かんできた映像は、夕暮れの穏やかな海に、人が1人しか乗っていないイカダが浮かび、夕暮れに照らされて逆光で、シルエットになっている・・・そんな映像だった。
当時は、ウエストコーストブームのせいもあって、私は海を頭に思い浮かべることが多かった。
海といっても、近場の混雑した日本の海水浴客で埋まる海ではなく、ウエストコーストであったり、南太平洋の海であったり。
部屋には南太平洋の島のポスターを何枚も貼っていたし、聞く音楽は海を連想させる音楽が多かった。
姿恰好は、いわゆる「丘サーファー」みたいな格好をすることも多かった(笑)。
そんな当時の私にとっては、まさに当時の私の趣向に合った曲の一つが「コーダ」であった。
広がりがある割には、「ちょっとした小品」・・そんな感じの曲ではあったが、簡潔に短めの尺の中に凝縮された濃さゆえに、私にとっては忘れられない小品の名曲である。
この「コーダ」はもう長い間聴く機会がないままでいるが、この曲を再び聴いたら、また・・・イカダに乗って穏やかな夕暮れの海を漂ってみたくなるかもしれない。
角川映画は当時、派手な宣伝をしていた。「人間の証明」などがそのいい例だ。
だが、この「野生号の航海」は、あまり宣伝されてなかったように思う。
そのせいか、さほど知られていない作品であろう。
その「さほど知られていない」映画の主題歌の、しかもB面ということで、この曲を知らない方はきっと多いのではないかと思う。
ネットで検索してみても、せいぜいたまに映画のことについて少し解説があるぐらいで、この主題歌についての記述は・・ほとんど見かけなかった。
ましてやB面の音源など・・・・見当たらないのも仕方ないかもしれない。
そのへん、少し残念ではある。
でも、この「コーダ」は、私の中に深くインプットされている。
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