毎号定期的に購入していた三国志DVD。
去年の終盤あたりからバタバタしていて、中々見る機会がなく、未見の号がたまっていたのだが、このほどやっと最終巻まで見終わることができた。
全巻見終わってのおおまかな感想としては、序盤はそれなりに細かく描かれていたが、終盤は駆け足で終わっていった感がある。
もっとも、三国志をフルに映像化した場合、そんなケースは多い。
一番多いのは、諸葛孔明が死んだ後は、一気にあっさりと「その後」という感じで終えられてしまうケース。
で、その次に多いのは、劉備死後を駆け足で進めてしまうケース。
今回見終わった三国志シリーズは、その後者パターンだった。
ともかく劉備死後の展開が、時にはバッサリという感じで駆け足で進んだ印象。
残念だったのは、孔明の南蛮制圧と、姜維の帰順の下りがバッサリとカットされていたこと。
孔明の南蛮制圧は、劉備死後の大きな見せ場の一つだと思うし、姜維といえば三国志最後のスーパースター的な存在なので、姜維の蜀への帰順はかなり大事な場面だと思うのだが・・。
まあ、その分、司馬懿にスポットを与えていた感はある。
司馬懿にスポットが当たった場面は、面白かったし、そこは大いに評価したい。
だが、やはり孔明の南蛮制圧と姜維帰順のカットは、拍子抜け。
南蛮制圧では、南蛮の孟獲や祝融という得難いキャラクターが出てきて、孔明とやりあうのだが、そのくだりは実に面白いはずなのだが、孟獲も祝融は名前すら出てこなかった。
もっとも、祝融は架空の人物と言われてるけれど。
姜維に関しては、いつの間にか孔明のそばに脈絡もなく味方に加わっていた・・という登場の仕方。
尺をもう少し延ばしても、その辺は描いてほしかったなあ。
三国志は「三国演技」の影響もあって、劉備が主役に描かれるケースが多い。
だが、物語的には、前半は曹操が主役で、後半は孔明が主役・・とされているのも事実。
今回見終わった三国志は、その辺はちゃんと押さえていた。
前半は曹操中心に描かれ、後半は孔明が中心に描かれていた。
前半の曹操中心に物語が進んでいたくだりでは、劉備は「胸に大望を抱いているようだが、何を考えているかわからない部分がある、油断ならない、少し不気味な人物」として描かれていた。たとえ不遇な状況にいたとしても、大物の風格もある・・そんな面も。
これは、曹操の視点で劉備を見た場合の描き方だったのだろう。
前半が曹操中心、後半が孔明中心・・ではあったが、厳密には、各エピソードごとに主役が変わっていた。
なので、三国志の大きな魅力である「多彩な人物群像編」という意味では、けっこう楽しめた。
メイン的な人物を少しひろってみる。
序盤の呂布。最強の武力を誇る武将だが、長期ビジョンがなく、その場その場の展開に流されてしまう。素直といえば素直なのだが、あまりにも短絡的。性格的には子供のような性格を持っていた。色恋沙汰が、自身の生き方に大きくかかわったという意味では、史記の項羽とイメージがかぶるが、実際以前の作品で項羽を演じた役者が、この三国志では呂布の役をこなしていた。この三国志ドラマでは、大まかには前半が曹操主役ではあるのだが、序盤に関しては、むしろこの呂布がメイン人物と言いたい程の存在感。序盤で消えてしまうのが惜しい登場人物ぶり。
董卓。三国志きっての悪役だが、この三国志では、さほど悪の部分は誇張されてなかったようにも思う。個人的なイメージでは、もっとでっぷり太った人物なのだが。
袁紹。記録では、曹操に「優柔不断」と評されていたが、この三国志でも、その「優柔不断」さはしっかり押さえられていた。
見ていて、こういう君主に仕えた参謀は大変だったろうなと思った。
曹操。さすが前半の主役。特に若い頃の曹操は、まさに主役を張るにふさわしいキャラクター。もしもリアルにこの人がいたら、とても友達にはなりたくないが、物語の主役として見れば、さすがに魅力ある人物で、中心になって物語を進めていた。
荀彧。私の個人的な思いでは、この人は曹操の優秀な配下ではあったが、どちらかというとその思想を考えると、むしろ劉備に仕えたほうがよかったのではないか・・と思える。
司馬懿。この三国志では、思ったよりも早く登場してきた。三国志最後の勝利者ともいえる人物だが、一般的にはさほど人気は高くない。曹操にはその才能を買われながらも、警戒されていた人物だが、それがなぜか・・がこの三国志では、しっかりわかるように描かれていた。不気味で何を考えているかわからないが、視聴者としてはしっかり感情移入できる人物としても描かれており、主役のひとりとしても存在感が際立っていた。この三国志を見て、私は司馬懿も好きになった。
劉備。一般的な三国志では主人公になることが多いが、この三国志では序盤は曹操の視点から描かれた劉備像が面白い。曹操に、「天下に英雄と呼べる人物は、わしと劉備しかいない」と言わしめた、曹操にとっては「一目置いており、出来れば味方にしたいが、両雄並び立たずで、それは難しい。それだけに油断ならない」人物であった。
関羽、張飛。さまざまな三国志作品に共通する、イメージ通り。
龐統。私の好きな人物の1人。軍師として並び称された孔明とは対照的なキャラクターとして登場。孔明と比べると、ちょっとつきあっただけだと、中々理解されにくい、損な性分。でもその志は、孔明にひけをとらないぐらい、高い。アクが強く、汚れ役も引き受けることができるところが、味方としてみると頼もしい。軍師としては、けっこう型破りな人物像ぶり。
孔明。様々な三国志作品と共通する描かれ方。孔明のイメージは、変えるのが難しいのかもしれない。ともかく、いかにも・・・と言いたいぐらいの、孔明だった。
ただ、劉備との関係上、関羽や張飛からうとまれている部分を「長く引きずってる」部分がある描かれ方だったのが印象的だった。孔明は、関羽や張飛には、生涯「遠慮」があったのかもしれない。
孫権。子供の頃から優秀な人物として描かれていた。曹操や劉備と比べると若いが、その2人に勝るとも劣らない優秀で聡明な君主ぶり。
葛藤する面も見せてくるので、他の三国志作品以上に、感情移入できる描かれ方。一般的に三国志の他の2人の君主・・曹操、劉備と比べるとやや地味に描かれがちだが、この三国志での孫権は、曹操や劉備に負けないぐらい魅力的に描かれていた。
周瑜。孔明への対抗心が強い・・・という意味では、一般の三国志モノと共通するイメージでの描かれ方。実際にこれほど孔明に対抗心があったかどうかはわからないが、いつもながら三国志モノでは、周瑜の孔明に対する対抗心は相当なものとして描かれている。孔明を意識しすぎじゃないか?と思いたいぐらい。
魯粛。一般的な三国志では、孔明と周瑜の間に「板挟み」にあって苦労する人物として描かれているが、この三国志では、周瑜に匹敵する優秀な人物としての側面も描かれており、その点は好きだ。外交面も、長期ビジョンも。
三国志を見ていると、視聴者から嫌われることのない好人物のイメージがあるが、この三国志でも非常に魅力的。しかも単なるお人良しではない、優秀な人物であり、しかも人格者。
陸遜。登場した時、役者さんのルックスが、私の思い描いていた陸遜とは少し違うかな・・とも思った。ゲームなどでは、かなり美形の人物として登場するせいだろう。
きりがなくなるので、このへんで人物をピックアップするのはやめておくが、各人物にまつわる各エピソードでは、そのエピソードに関わる人物が主役になり、物語の視点もその人物の視点になって進む。そういう場合では、主役格の曹操や劉備や孔明はわき役的になる。
このへん、多彩な登場人物を誇る三国志ならではで、どの人物にもその人物なりの正義や立場はあるわけで、一概に誰が正義で誰が悪かという区別はない。
なので、多角的な視点で楽しむことができる。
きっとこの物語を見てると、視聴者は敵味方関係なく、色んな人物に感情移入できることだろう。
劉備などは、絶えず大義名分や大志を抱いているが、他者の視点で見ると劉備は時には「正論をふりかざす、偽善者」みたいに見えることもある。
そんな一つの視点だけでは見れない、多角的な面白さが三国志の醍醐味であり、その点はこの三国志でもしっかり押さえられている。
この三国志、前述の通り、やはり孔明の南蛮制圧や姜維の帰順などは描いてほしかったかな。
以前見た中国製の大河ドラマ「三国演技」では、孔明死後のことも、駆け足ではあったが、描かれていた。
孔明が死んだ後の姜維の奮戦ぶりなどが。
さすがに羊祜と陸抗のエピソードまでは描かれてなかったが。
最後まで見終わっての感想としては、劉備死後のことがあっさりしすぎていた感はあるが、司馬懿へのスポットライトは面白かった。
劉備が死ぬまでのような細かさで、劉備死後のことももっと描いてほしかったかなあ。
それまではそれなりに細かくて、面白かったから。
十分に長い尺のドラマになっているが、個人的には劉備死後、孔明死後のことももっと描いてほしかったので、もう少し長い尺でもよかったと思えた。
ただ、前述の「三国演技」の大河ドラマと違い、主要人物がある日突然役者が変わっている・・ということがなかったのには安堵した。
「三国演技」では、主要メンバーの一人である趙雲などが、いきなり役者が変わってて面くらったりしたから。少年時代の役者と大人になってからの役者交代ならまだしも。
ちなみに、このDVDに付属されていた、解説本は、中々楽しめた。
ともかく言えることは・・・以前にも書いたことだが・・・それは・・
「三国志は、長ければ長いほど、面白い」ということ。
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