私の所有レコードが飛躍的に増えたのは主に10代終盤あたりから20代前半にかけて。
その時期は私は貧乏学生だったから、たとえ欲しいレコードが山のようにあっても、そのどれもを購入することなど、できなかった。
まあ、そのへんは、多くの人がそうではなかったろうか。
限りある所持金。
でも、欲しいものがたくさんあるレコード。
そのギャップを埋め合わせるのに強い味方になってくれたのが、輸入レコードショップであった。
レコードには国内盤と輸入盤とがあり、洋楽ミュージシャンのアルバムは輸入盤でなら国内盤よりも安い値段で購入することができた。
確か・・・国内盤が当時2500円前後の値段で、輸入盤はそれより500円~1000円近く安く購入することができた。
なので、海外ミュージシャンの新譜は輸入盤で買うことは多かった。
レコードを買う場合、厳密にはレコードには3種類の選択肢があった。
ちなみに、盤そのものを「入手する」ためなので、レンタルはカウントに入れていない。
レンタルだとジャケットが手に入らないし、なにより「持っている」という実感が、若干希薄だったので。また、当時は今ほどレンタルという手段が一般的ではなかったこともある。
1、国内盤
2、輸入盤
3、中古盤
の3種類だった。
この3つの選択肢を、私は自分なりの基準で選び分けていた。
まず、国内ミュージシャンの新譜は問答無用で国内盤を買うしかなかった。国内ミュージシャンのアルバムには輸入盤というものがないのだから、これは仕方なかった。
だが、海外ミュージシャンの新譜に関しては、解説や訳詞を読みたい場合は国内盤で買っていた。
例えばボブ・ディランなどは訳詞が絶対に読みたいので、訳詞があるわけがない輸入盤はダメだった。
あと、超大物ミュージシャンの数年ぶりの新作だと解説も読みたいので、国内盤で買っていた。例えばイーグルスやツェッペリンやスティービーワンダーなどがそうだった。
本当は国内盤で買えるのが一番いい。国内盤だと付録でポスターも貰えることがあったし、解説も付いていたし、ものによっては訳詞もついている。ジャケットに付いている帯も楽しい。サービスが一番良くて、安心して買えるのが国内盤であった。だが国内盤は高い。そうそうなにもかも国内盤では買っていられない。
まだ聴いたことのない馴染みの薄いミュージシャンンや、国内盤が出ていないミュージシャンや、ジャケットが気に入ったアルバム、中身が明らかにインストアルバムであることが分かっている場合・・などは輸入盤で買っていた。
そして、欲しいアルバムが新譜じゃなかったりした場合は、中古盤屋で探していた。
まあ、上記の基準にあてはまらず、気まぐれに国内盤で買ったり輸入盤で買ったりする場合もあったが、基本は上記の基準で「買い分けて」いた。
で、レコードを買う場合、いつしか馴染みの店というものがはっきりしてきたりした。
いつも行っている店だと、店の傾向も分かるし、誰のアルバムがどこのスペースに置いてあるかも分かっているし、利用しやすかったからだ。
国内盤は、だいたいどこで買っても一緒なので、店のサービス券を集めている店で買っていた。
中古盤は、迷わずディスクユニオン。特に中古盤のバーゲンの時などは、鬼のように在庫を探したものだ。
で、輸入盤屋では・・・私がよく行っていたのが、CISCO、ディスクロード、新宿レコード、キニーなど。他にもあったと思うが、すぐに思い出せるのは、そのあたり。
この中で特に私が頻繁に通っていたのがCISCOだった。
特に買う予定がない時でも、暇な時にブラッと立ち寄ることも多かった。
店の中にいるだけでなにやら楽しかったのだと思う。その際、衝動買いも多かった。
音楽雑誌などの新譜レビューで気になる洋楽の新譜を見つけた時は、まずはとりあえずCISCOに行ってみる・・・というのも、よくあるパターンだった。
今思うと・・本当にCISCOにはお世話になったと思う。
当時の新譜をあれこれ買って聴きあさることができたのは、輸入盤屋・・特にCISCOの存在は大きかった。
買った新譜は数えきれない。
輸入盤はたいがいビニールの袋で密閉されていた。
新譜を買って家に持って帰って、輸入盤レコードジャケットを密閉しているビニールをカッターなどで開けると、独特のにおいがすることがあった。
その匂いが私は好きだった。
何かの音楽雑誌に、「輸入盤を買って密閉ビニールを開けたら、ジャケットの中にある空気を吸ってみるといい・・・それはアメリカの空気なのだ」という主旨のことが書かれていたことがあった。
なるほどと思った私は、何度もそれをやった記憶がある。
それがアメリカ盤ではなくイギリス盤でも私は同じことをやっていたはずだ。
それだけ私には、ロックの本場であるアメリカやイギリスに憧れがあったのだと思う。
最近、昔よく通ったCISCOが今もあるのかどうか気になって調べてみた。
すると・・今はもうCISCOは廃業してしまっていることが分かった。
なんだか残念。
もっとも最近はレコード屋そのものにもあまり行かなくなっている私には、そういうことを言えた義理じゃないのかもしれないが。
ただ、レコード屋さんにあまり行かなくなっているのは、街から大きなレコード屋さんがなくなってしまっているから・・というのも大きいのだ。売られているものはなにもLPじゃなくてもいい。CDでもいい。
そういう店が無くなってきているという現状が、寂しい。あれば行ってるとは思うから。
やはり地元の街にレコード屋さんがなくなった・・というのは、何気に大きい。
社会人になってからの私は、さすがに学生時代のようには自由な時間がとれなくなった。
また、就職して、学生の頃よりは多少なりとも自由になるお金が増え、普段ほしいアルバムがある時は、国内盤を買うことが多くなった。
国内盤は輸入盤よりも割高だが、それでも、国内盤の店では見かけないアルバムを探す時には、例えばタワーレコードのような大きな店に行き、輸入盤をさがすようになった。
タワーレコードは在庫の数も多いし、タワーレコードで探して見つからない時は、もうしょうがない・・と思えたから。
また、私がよく行ったタワーレコードは駅の近くにあった・・というのも大きかった。
CISCOは、駅からけっこう離れていたから。
そんなこんなで、いつしかCISCOから私の足は少しづつ遠のいていった。
やがてはレコードやCDを買う時、通常はいつも利用している普通のレコード屋さんを利用し、その店にないアルバムを探す時はタワーレコードで輸入盤を探すのが私のパターンになった。
そして・・気付けば、学生時代にさんざん利用していたCISCOには・・・行かなくなっていた・・。
っ
それでも・・今思うに、貧乏学生だった時代に、なけなしのお金を握りしめ、暇さえあれば・・・というか、ある意味「定期的」に駅からえっちらおっちら歩いてCISCOに通ってた時期は忘れられない。
帰る時には、どんなアルバムを手にしているか分からない・・という楽しみもあった。
もちろん、買うアルバムをあらかじめ決めてあった場合も多かったが、店でジャケットを見て衝動買いすることも、ままあったから。
私のレコードコレクションが飛躍的に増えたのには、中古盤のディスクユニオンと、輸入盤のCISCOのおかげである。
CISCOの店内に入り、新譜の陳列棚に新譜のジャケットが飾られてるのを見ると、いつもわくわくした。
しかも国内盤よりもぐっと安い値段で。
後のタワーレコードに比べたら規模は小さかったが、その分、欲しいアルバムは見つけやすかったし、新譜のジャケットをあれこれマジマジと鑑賞できた気がする。
ジャケットの素敵なアルバムがたくさん壁に陳列されていた店内は、ちょっとした画廊にも似た楽しさがあった。
しかも、1枚2000円以内(2枚組は除く)で買える画展・・・みたいな。
なにせ、アルバムジャケットというものは、たいがいのアーティストのこだわりがあるから、趣向を凝らしたジャケットが多いのは今も昔も変わらない。
中には、ジャケットだけで買いたくなるアルバムもあるから。
ともあれ、買いたいアルバムはいくつもあるのに、お金が追いつかなかった貧乏学生にとっては、輸入盤屋は強い味方に思えた。
今や輸入盤屋だけでなく、レコードショップそのものが減っている。
現に、私の住む町でも大きなレコードショップが撤退し、今では私の住む町にはレコード屋は・・・なくなっている。
ネットショッピングでは、アルバムを衝動買いすることはまずないけど、レコード屋では衝動買いは多かったし、それもまた店に行く楽しみの一つだった。
やはり、ジャケットの現物をこの目で見ることができたからだ。
国内盤屋さんでは、新譜などを買うと、おまけにポスターなどをつけてくれた。
でも、ネットショッピングでは、そういうのは・・・ないのでは。
やはり、町にレコードショップがない状況というのは、寂しい。
ちなみに、やがてレンタルという手段が浸透していくようになると、レンタルで入手することも多くなった。レンタルショップが普及した時、聴きたいアルバムがあると、すぐにショップからレンタルしてくるようになった。おかげで、聴けるアルバムが、以前にも増して増えた。
ただ、レンタルで入手してしまうと、前述の通り「持っている」という実感は薄い。
やはりジャケットがないと、どうも・・・。ジャケットというものは、確実にアルバムの一部だと思うので。
なお、写真は、当時CISCOで買ったアルバムの中の1枚で、ジェシ・コリン・ヤングの「アメリカン・ドリームス」。
これなどは、店でジャケットを見て、衝動買いしたアルバムの中の1枚だった。
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