今では電車の駅の改札には自動改札が導入されているが、自動改札が導入される前は、改札で駅員が独自のはさみを持って、乗客の切符を切っていた。
切る・・とはいっても、切符の片隅を四角く小さく切り取る作業だった。
そのはさみは特殊なはさみで、普通のはさみとはちょっと違うアイテムだった。
ネットで調べてみたところ、そのはさみには正式な名称があることがわかった。
正式名称は「改札鋏(かいさつきょう。または、かいさつはさみ)」というそうな。
そして、そのはさみによって切符の片隅を小さく四角く切り取った「切り口」は「鉄こん(きょうこう)」というそうな。
特殊なはさみだとは思っていたが、やはり正式な名称があったんだね。
まあ、それはともかく。
自動改札が登場するまでの駅の改札では、駅員が客ひとりひとりが差し出す切符に、改札鋏で穴をあけて、客を通していた。
そういう日々が続くと、当然のことながら駅員は改札鋏の扱いに慣れてくる。
で、切符を切る時は、一定のリズムを持って作業していた。
客が切符を差し出した時はもちろんだが、そうじゃない時も、一定のリズムで、改札鋏をカチカチやってリズムをとっていた。
その場合、空でカチカチわけである。
その様を見ると、さすが駅員、カチカチ鋏(当時私は改札鋏をそう呼んでいた)の扱いに慣れているなあ・・なんて思ったもんだった。
ある意味、その姿は粋にも思えた。
だが最近はご存知のように駅の改札には自動改札が導入され、駅員が改札鋏で切符を切る光景はあまり見かけなくなった。
駅員が改札でそれぞれのリズムで改札鋏をカチカチやってる姿は、いかにも駅らしい風景に思えたし、駅員は「いかにも駅員」という感じがした。
改札鋏の扱いに慣れている様は、その道のプロという感じもした。
ただ、その改札を利用する客があまりに多いと、客が差し出す定期や切符をもらさずにチェックできるのだろうか・・という思いも、傍で見ているとあった。
実際そこを突いて「キセル乗車」をする人もいた。
自動改札が導入され、そういう問題の解決には役にたったのだろう。
また、人員削減や負担軽減にも役には立ったのだろう。
ただ、その反面、駅の名物的な光景(私にはそう思えた)であった「改札鋏をカチカチする駅員の姿」は無くなってしまった。
無くなってみると、ちょっと寂しい思いは・・・ある。
あの光景を見ると、「駅だなあ」という気がしたからだ。
今となっては、「残しておきたかった光景」ではあった。
時々、どこかの地方に旅行し、古い改札などを見かけると、改札鋏を持ってカチカチやってリズムをとりながら、客の切符を切る駅員の姿を見たくなることがある。
また、都心の駅に居る時でも、自動改札の不具合があって人の流れが止まったりすると、そう思ったりする。
自動改札って、融通がきかない面があると思うから。
駅員さんが切符が並んだ棚から1枚抜いて日付のスタンプをポン。
改札に差し出すと鋏でパチン…うん、懐かしいです。
お客さんに「いってらっしゃい」とか「おはよう」なんて気さくに挨拶してくれる
駅員さんもけっこういらっしゃいましたね。
町の電気屋さんや八百屋さんなどがなくなり、大型のスーパーやチェーン店に取って代わられ、応対が無機質になった気がしますが、駅もそうなのかもしれませんね。
そう、キップを切る駅員は、客がいないときでも、リズミカルに改札挟をカチカチやってました。
手慣れた手つきで。
あれは、駅員の仕事そのもののリズムでもあったんでしょうね。