ダイオードスイッチの検証 その2
【2017.03.12】
前回の続きになるが、その前に「その37」を投稿した頃から気になっていた事が有ったので今回は、その部分から入っていく。
空中配線状態のフィルター基板を、しっかりとした形で製作し直した結果、各部の調整点が微妙に変化した。
特に気になっていたのは、フィルターの出力側に接続したL2コイル(3.3μH)のフェライトコアが完全に抜けきってしまうという点だった。
フェライトコアが抜け切るという事はコイルのインダクタンスが多い為で、今回は、これを減らそうと試みた。
さて、どうやってインダクタンスを減らそうか・・・
コイルの巻き数やピッチを変えるのは大変そうだから、L2コイル (3.3μH)に18μHのチョークコイルを並列接続して合成インダクタンスを低下させる事にした。
下の回路図のL3がそれで、基板のスペースの関係上、裏側に取り付けた。(写真参照)
基板の裏側の写真公開は、今回が初めてで銅箔テープを貼った箇所がアースパターンである。
物事の背後に「裏事情」が潜んでいるように、基板にも表事情と裏事情が有る。
ところで、コイルの合成インダクタンスの求め方は、抵抗の合成抵抗を求める方法と全く同じで直列接続で有れば、インダクタンスが増加し並列接続で有ればインダクタンスは低下する。
因みに、今回私が行った例では、3.3μHと18μHの並列接続であるから合成インダクタンスは(3.3×18)÷(3.3+18)≒2.8μHと言う事になる。
こうして改造した回路で、L2のコイルに再びフェライトコアを入れて調整してみた結果、ゲインが約10dB上がった。
フェライトコアの位置は、奥に入った側となったが明らかに特性が改善された。
受信感度の基準として私が考えるのは、「0dBμVemf以下の信号が検出可能な事」である。
今回の対策により、-5dbμVemfの信号も確実に検出できており満足している。
さて、ここからが今回のサブタイトルである「ダイオードスイッチの検証その2」へ入っていく。
「その38」で尻切れトンボになった話の続きになる。
まず、ダイオードの両側に入れた可変抵抗器を変化させた結果について。
結果は下の回路図の通りで、ダイオードの左側 (カソード側)に入れた可変抵抗Bは827Ωの時に感度が最大となり、ダイオードの右側 (アノード側)に入れた可変抵抗Aは750Ωの時に感度が最大となった。
電流制限抵抗の51Ωは、実験中にうっかり可変抵抗器を0Ωにした場合でもダイオードに過電流を流さない為のもので有る。
この抵抗を、DC+5V側に挿入する方法も有るが今回はアース側に入れて見た。
以上の結果から、挿入する抵抗の値は大きすぎても小さすぎてもまともな動作にならないと言う事だけははっきりした。
【コイルの挿入の検証】
一度やり始めると、次から次へと色々試してみたくなると言う困った性格である。
今度は、回路内にコイルを挿入して結果を見たくなった為、早速基板の改造に着手する。
構想は、下の回路図の通りでL1とL2の箇所に1.2mHのインダクタンスを入れてどうなるのかを確かめる。
実験結果は、回路図内に記した通り可変抵抗Aは、0Ωの時が感度最大で、可変抵抗Bは約900Ωの時が感度最大となった。
何故、L1、L2を入れて見たかと言うと10.7MHzの信号をL1,L2のコイルから先へは通したくない、つまり「遮断」したい為である。
そうすれば、大切な信号エネルギーは全てフィルターに注ぎ込まれることになる。
因みに、1.2mHのインダクタンスは10.7MHzの信号に対しては、約80KΩの抵抗として動作し、直流に対しては、ほぼ0Ωとして動作する。
【では何も入れなければどうなる?】
さて、次はDC+5Vの電源からダイオードのアノードまでの間に抵抗もコイルも入れなかったら
どうなるのか?である。(下の回路図)
実際にやってみると、結果は全くダメで著しい受信感度の低下となった。
【あれ? ダイオードは一方通行じゃなかったの?】
「ダイオードは、アノードからカソードへ電気が流れる」、「逆向きには流れない」と教科書には書かれている。
今回、実験しているフィルターの入力側に入れたダイオードの方向は信号が入ってくる方向に対して「逆向き」であるが、何故信号が通過できるのか?と言う疑問が発生する。
調べてみると、ダイオードには端子間やガラス管に静電容量が有って、高周波等の交流に対しては通過させることができる様だ。
事実、今回の実験でその事を十分に体験することができた。
色々な疑問や問題にぶつかるから苦労はするが、問題解決の方法を探りながら自分で考えて実践することが機械いじりの真髄と言えるのではないだろうか。
次回からは、フィルターの出力側にもダイオードスイッチを入れて見る予定でいる。
本稿続く・・・