酒馬鹿三兄弟、次男の岸壁はしご酒

酒は飲んだら飲まれましょう、しかし仲良く。拙い酒と乱暴ポエトリ月夜の酩酊ランデブー

百もの能書き

2013-12-28 08:05:31 | 





俺は俺の役割を終えもせず
ソファーで赤ワインを飲んでいる、
瓶から直接
猫はとにかく寒いのは懲り懲りだと言わんばかりに
傍のクッションに埋もれている
食べ物はきっと腹をこわしそうなテリーヌだけが
冷蔵庫で半分傷み
冷えて美しいビールだけが冷蔵庫に鎮座まします


俺はワインを飲んでいる
グラスもなく、瓶に口をつけ
俺はただ待っている、
役割も終えず
ただそのまま何もかも終わってしまうことを






Ugry all day

2013-12-27 12:31:37 | 





俺は何かをぶち壊した様な気がしているが、
また別の事にも係わり合っていて、それどころでもない

消え入りそうな冬の太陽を眺め
朝からウォッカを求めている、少々クレイジーだが


そんな日に、
電話一本でも気分は変わるものだ、と
あの女と話し終えて思う

大した話はしていない、
小さな娘のこと
これから産まれる子供の事




俺は全てを思い出す、
あの娘はその全てを知らなかっただろう、

ただその姿を見たかったためだけに
芝居がかった、ハイキングのようなチームを作ったことを

あの娘が好きだと言ったオレンジの色、
だから俺は20周年パーティーとか言うやつに
沢山のオレンジのガーベラやアルス、
グロリオサの花を会場中に飾ったこと


あの娘がランウェイを、モデルの様に歩いたらサマになるだろうか、
そう思って、夜のパーティーで
俺は音楽を鳴り散らかし、
彼女は、赤い帽子を着飾り、ポーズを取ったことを


全ての取るに足らないことは常に彼女の為にあったことを



この街を出て行く女たちに、俺は何度か花を贈ったが、
それも、最後にはあの娘に一番の大きな花束を
それも沢山のオレンジの花の、
それを贈る為の前説にしか過ぎなかったことを


しかし、あの娘に花束を贈るチャンスはもうないだろう


それでも今日声が聴けたことで

何かをぶち壊した様な一日は





クソのような日ではなくなった








8ヶ月

2013-12-09 14:01:04 | 





俺は素面でそれが見られるか心配だ
しっかりと目を合わせられか、自信はまるでない

朝の8時半、ホテルのロビーで
俺は素面で、何気ない振りで
心臓と言うか魂が萎えているのが分かる


が、しかしガッツを振り絞る
どうしてって、
それは彼女のもっとも栄光に映えた姿だからだ
娘と一心同体になって
すでに俺には届かない光の中から
なんと笑って手招きをし、俺にその子に触れろと腹を突き出す

その目を見つめていたら
忘れていたものがいくつも呼びだされ
危うく膝をつきそうなほど
ガッツは萎えていた

それでも俺は詩の朗読の為に
バッジを受け取り、胸にネームを貼り付け
堂々と踵を返す、
振りをする。

どいつもこいつもの聴衆の為に
俺は来たくもない海辺にいるが、

気付けばかがんだ俺の隣には
眩しいあの女が同じ姿勢で微笑んでいた。




不覚にも俺は泣いていた








10の螻蛄

2013-12-02 10:56:33 | 


男は
若く、野性的でいながら
煙草を咥え、俺のやることには意味があるんだろうかと
将来を夢見ながら息を切らしているようだった

若く、それでいてインテリで
どうしてもキルケゴールやダンテを読み続け、
深く自分の内部を探っていく

理知に富めば、明日の自分の危うさを
嫌でも知るだろう
図太くなるには、まだ彼には少々敗北が足らない
アントニオは、”バカになれ”と叫ぶが、
かといって誰もが無神経になれるわけでもない

または
カート・コーベンが言ったように
ショウビジネスの世界では
もっと鈍くないと生きていけない
だとしても、それはヘロインに溺れた内省的な男の哀れな言葉に過ぎない

“男はタフでなければ生きていけない”
古めかしい私立探偵の名台詞には
優しく無ければ生きていく資格が無い
と言う追いの句があるのは有名な話だが

だがそれでも
やはりタフでなければ生きていく資格が無いだろう

敗北の味はきみをきっとタフにするだろう

詩を書く男の中に、タフな男を見かけたことがあるが
大抵は臆病者だ、俺も例外にもれない

敗北のあとの苦い酒は、臆病者を少しだけ奮い立たせてくれるものさ

だから俺は
きっとその青年と、
一本のテキーラを分け合うだろう
そして6本のビールを続けるだろう、

この世に実現するかもしれない夢がある限り、
男に臆病風なんぞ許されるわけもない