”人間て、糸で操られてんだよね”
そんなこと、10才のガキに
言われて
一体どうすりゃいい?
”いっぱい喋るとさ、ママが怒るんだ”
大人には説明できないが
あのガキが見つめてる世界観にも
一理あり、俺はと言えば
理屈をこね回し、そうとも思うけど
お前も糸に操られてんだよな
とは
決して言えない
ガキには全てを言い当ててる部分もあり
それ故、
このガキは聡明だと思ったりも
するけど
”操られてても喜ぶことが出来たら
お前は勝者だよ”
って上手く伝えられるか
俺には自信がない
さげすみ、人を見抜く術も身に付けた
10才には
まだ、
親に愛されるということを
ありのまま知るのは、きっと
無理だろう
まして女を愛するということ
それを感じるにもまだ早いだろう
10年間、朝起きて
3度飯を食い
クソをたれ、また寝れば
次も同じだと
いうことを3650回繰り返し
”いい加減うんざりだね”
ってことにしか気付いてないかも
しかしその通り
お前の気付く通りさ
たしかに、
繰り返しがほとんど全てのような
人間の営みで
これは、生きるってのは
操られてるってことにも感じるさ
確かに愛もセックスも音楽も
芸術も
見て見りゃ
大したもんではないさ
所詮、もがくだけの人間の
哀れな、暇つぶしかも……
でも
君はまだ恋を知らない
まだ
いろいろ嫌になっても
恋にある高まりを知らない
確かにそれこそ
恋こそ
不遜な、ぞんざいな、やる気のない、頭でっかちな
人間に
神が操る奇妙な糸かもな
でもな、
その高まりをまだ
10才のお前は知らないのだから、
操られて、淋しく
なって、ママにぶたれて
黙る前に
此処に来るといい、
俺のところに来て
音楽を聴いたり、絵を見たり
いい歳こいたおっさんや,年増やらが
感じたことを見聞きしていけばいい
俺達全て、
操られてんだとしても
ちっぽけな愛が
高まって
それが山より高く、
10才のお前だってより良く生かす…
神の糸の力を、知って欲しい
糸がどうだとか、嫌になる前に。
操られたっていいんだ、
楽しむことだ……