アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

日々の読書記録を勝手きままに書き記す

残されていた数少ない未訳作品

2010-09-24 23:00:27 | フィリップ・K・ディック
「未来医師」 タイムトラベルを道具にした恋愛物語、もしくは種族の誇りはいかして保たれるのか


「未来医師」“DR.FUTURITY” 1960年作品
佐藤 龍雄訳 創元SF文庫 2010年

「時は乱れて」が発表された翌年1960年の作品で、今年になるまで訳されず
この年発表されたもう一作品“Vulcan's Hammer”はまだ未訳のままである
解説では「この時期のディックは主流文学で身を立てようと奮闘していて
SFに対する積極的な関心を失っていた。ありていに言えば「未来医師」は
生活のための売文である。」と語っている。

ディックの作品紹介のために
遠い昔の記憶を呼び覚まそうと、結局読み直すようなはめになり
新しい本を読む時間が取れなくなってしまった。
過去に縛られていたのだが、この「未来医師」は買ったもののまだ読んでいなかった
思い起こすも何もまず読まなければならない
比較的初期の作品が最も新しい翻訳作品で、久しぶりのディック体験となった
作品を過去から未来、そして順番を遡ったりもどったり
ディックワールドを時間旅行をしている毎日に
作品の出来不出来は別として、主人公パーソンズの気持ちを今の自分を重ね合わせてみる

ディックファンとしてはすべて読んでみたいと
残された1冊もいずれは訳されるのではないかと期待する
そのことが満足されることでこの本を評価してしまう
これから正しいディックファンになろうとする人は
まず傑作短編集から読み始めるべきで
最初の1冊にこの本を選んではいけない
過去にさかのぼって誤りを正そうとする時間旅行者ではないが
これから読もうとする読者にそのように伝える使命があるかもしれない

 面白くないと言うわけではないが、ディックを読み始めるのにわざわざ選ぶことのないようにと伝えたい1冊

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