Linの気まぐれトーク

映画と小説の観賞日記

映画『ウエスト・サイド・ストーリー』

2022-02-17 16:30:00 | 映画
先週の封切り日に観賞し、もう1週間になる。
初めて観たのは高校生だったか。
もちろんロバート・ワイズ監督の『ウエストサイド物語』の方だ。
150分ほどの長さだが、確かインターミッションがあった。トイレ休憩だろうか。
その時にパンフを購入している子がいて、トニーが撃たれるシーンを観てしまったのはショックだった。
そんなことも知らずに観ていた高校生の私はウブだった。

制作は1961年というから、私の観たのはそのずっとあと。
『サウンド・オブ・ミュージック』のヒットで上映したのかも知れない。
(一般受けする作品ではなかったのか)
アメリカのスラムも、人種問題も、何も知らなかった。
不良のバッコする映画を観ていいものかと、生活指導の先生の顔がちらついた。
レナード・バーンスタインが音楽を担当したということで話題になった。
シェークスピアの『ロミオとジュリエット』のNY版ということでも。

さて今回のリメイク版



巨匠スピルバーグ監督とあって前評判は高い。
挿入歌もストーリーも大きくは変わっていない。
マリア役の女優は3万人のオーディションを勝ち抜いただけあって、歌唱力も文句なく、美声に聞き惚れた。
1961版ではマリアとトニーの声は吹き替えだったという。今では考えられないけれど。

映画に感動しながら、それは昔を懐かしんでのことなのか、スピルバーグ版が素晴らしいからなのか、だんだんわからなくなった。
帰宅するや、旧作のDVDを借りて観た。

60年の歳月を感じた。
記憶の中では決して古びてはいないのに、映画はやはり60年前のものだった。
六本木の東宝シネマズで「午前10時の映画会」で観たのも10年以上前になる。
そんな古い映画になってしまったのだ。

今回はリタ・モレノがジェット団の溜まり場である店の主として出演し、歌声まで披露した。
彼女は61年版でアニタ役を演じ、助演女優賞を手にしている。
その女優が90歳になり、製作陣に名を連ねているのだ。

でも究極のラブストーリーは変わらない。






『ロミオとジュリエット』が永遠のラブストーリーである由縁だ。


今日も雪。
もううんざりするほどの寒さ。



桜の写真を載せられるのはいつになるのだろう。









映画『クライ・マッチョ』

2022-01-21 12:56:00 | 映画
封切り日とはいかなかったけれど、月曜日(17日)に観賞。
近くのシネコンでは新作なのに小さなスクリーンしか与えられていない。
平日ということもあり単独の高齢者が目立つ(私もそう)。2割程度の入りか。

彼の若き日の西部劇は父の世代が夢中になっていた。
私は20数年前の『マディソン郡の橋』で、やっとこの俳優を知った。その時既に彼は老人の印象だった。
もちろん今から思えばまだ若いのだが、誰が91歳まで現役俳優であり続けると思うだろう。その意味でだけでも只事ではない。

しわがれて今にも折れてしまいそうな老人なのに、なぜか強さを感じさせる。
連れの少年は〈マッチョ〉に憧れるが、老人は〈マッチョ〉を揶揄する。
強いだけじゃダメだ、と言っているようだ。
家族はいないが、少年の面倒はきちんと見ようとする。
動物にやさしい。荒馬も彼の言うことは聞く。
それが彼の言う〈マッチョ〉なのかもしれない。
枯れた老人のはずなのに、女性に人気があるのは、男の願望といえばそれまでだが、目の輝きがその時は増すのがリアルだ。
もしかしてそれが〈マッチョ〉?

イーストウッド監督お得意のロードムービー仕立てで、アメリカの広野を存分に楽しめた。
この無駄のなさ、キレのよさは何だろう。
50年を経ても大御所ぶらない清々しさ。

彼の作品、もっと観てみたい。

暖かな思い

2021-12-04 15:40:00 | 映画
『劇場版 きのう何食べた?』を映画館で観て、ドラマ版をDVDで観た。
通常版プラス特別編の計5枚。



観れば観る程、知れば知る程、シロさんとケンジの日常が愛おしくなり、心がほかほかと温かくなる、この不思議さ。
もう一度映画観ようかなんて思うのは、かなりのぼせてしまっているな。

オネエ言葉を話すゲイの存在はアメリカのドラマではよく見かけるし、芸能界(テレビ界?)では驚くほどゲイが多いと聞いたこともある。
体を張って上を目指す世界では、本当の愛情はゲイに求めるしかないとか、もっともらしい話も聞いたことはあるけれど、
私が惹かれるのもやっぱりその点かもしれない。

愛情は冷めても結婚という制度で社会的に認められている夫婦とは違い、
何の社会的保証もなく、かすがいとなる子どももなく、お互いの気持ちだけが頼りの関係は、けっこうシビアだ。

シロさんが倹約しながら買い物して作る手料理。それを感激しながら食べるケンジ。
美味しいという言葉を迷わず口にして、
それを嬉しそうに聞くシロさんも幸せそうで、対等だけどお互いに気遣いは欠かさない関係は本当にステキだ。
2人の老後を真剣に考えるシロさん、それにグッときているケンジもいい。
大手を振れない関係だからこそ大切にし合う、そんなふたりに癒される人がこんなに多いなんて。
そういう私も、マンネリ化した夫との老後に口も利かない日が多い。
お互い好きなものを食べたいからと食事も別にしているけれど、やっぱりふたりの食卓が羨ましい。
料理は美味しいと言って食べてくれる人がいればこそ。
下手な料理でも子どもたちが美味しいと目を輝かせてくれた食卓は幸せだった。 

歳を取れば楽しみは減る。
これも順番だから仕方ない。

そんな日常だからこそ?電気ストーブを購入した。



自分ひとり暖まる分は、これで十分。
ほんわかした遠赤外線があったかい。
こんなことも幸せを感じる自分、
愛おしく思わなくちゃ。








映画『ディア・エヴァン・ハンセン』

2021-11-27 15:03:00 | 映画



やっと観たい映画がかかり始めた。
このままコロナ収束となれば嬉しいけれど、海外を見ればそれも楽観かも知れない。

映画館はやっぱりいい。
一度しか観れなくても、2時間はその世界に
浸りきれるのだ。
『ディア・エヴァン・ハンセン』は今日公開されたミュージカル映画。
舞台では数々の賞を席巻しているというから、作品としての出来も保障されているのだろう。主役も舞台の人らしい。
孤独な青年が、ひょんなことから関わったコナーという学生と〈親友〉だった、と勘違いされる。
(セラピーの課題で)自分宛に書いた手紙をコナーに横取りされてしまい、それをコナーの遺書だと勘違いしてしまった彼の両親から、息子との思い出を語ってほしいと頼まれる。
コナーは人付き合いに問題があり、友だちがいなかったのだ。
やむなく〈それらしく〉振る舞ったことが仇になり、輪はどんどん広がってしまう。

コナーやエヴァンに限らず、登場人物はみなどこか孤独の影がある。
人はみな孤独だという前提がある。

内語のように歌われるミュージカルナンバーは心地よく映画観賞の醍醐味に浸れる。が、内容は決して軽くない。
50年前の『サウンド・オブ・ミュージック』とは、もう成立基盤が違う。
敵はナチスドイツではなく、内にいる。
観るこちらも中学生ではないように。

映画が終われば、現実が戻る。
正しく2時間分の別世界だった。
現実と向き合い、ひとりで遅い昼食を取った。


映画『男はつらいよ』寅次郎の縁談 寅次郎頑張れ

2021-11-08 13:44:00 | 映画
「寅次郎の縁談」はシリーズ第46作。
満男役を吉岡秀隆が。
実は彼が目当てでシリーズの初めからコツコツ観ていますが、20作も飛ばす気はなかったのです。

舞台は香川県の離島。
マドンナは松坂慶子。
「瀬戸の花嫁」が背景に流れる、そんな時代。
満男は就活が思うように行かず、ヤケになって家を飛び出す。
オイルショックの頃でしょうか。
私も新卒の就活に勤しんでいましたが、、企業は軒並み採用見合わせ、公務員に応募が殺到したのです。
わたしが受けた名古屋市の公務員試験の倍率はなんと50倍でした!

満男が行き着いたのは、瀬戸内海の小さな島。そこで松坂慶子の家に寄宿しながら、彼なりの生活を始めるのですが、
若い力を必要としてくれる島の暮らし、若い看護師との淡い恋、
満男は島の暮らしに手応えを感じ始めていた。
そこに迎えに来た寅さんは都会の人、
田舎暮らしを嫌がり早々に帰ろうとするが、松坂慶子を見て態度が変わるのです。
ここからはお馴染みのパターン。

ところで思いもかけない時計の早回し、
満男の成長は嬉しいけれど、おいちゃんやおばちゃんにかつての元気はなく、タコ社長の太宰久雄のやつれようといったら!
持病の糖尿病が悪化して、撮影も辛かったという。渥美清も病状が進んで、台詞も減らして配慮したらしいですが、
ああ、これが時の流れなんだと、しみじみ。

老化を避けることはできない、でもどう受け入れたらいいのか。
同じ悩みが繰り返される、それが映画なんですね。