Linの気まぐれトーク

映画と小説の観賞日記

配信『希望のかなた』

2022-11-07 09:52:00 | 映画
偶然見かけて、
何となく見始めて、
気付けば最後まで観ていた。

フィンランド・ヘルシンキが舞台らしいことはわかった。
確か解説にあった。
でも、映像にそれらしさはなく、
地味で、
美男美女は出ず、
難民と高齢者離婚を背景にした真面目な作品だった。

石炭に埋もれて密入国したアレッポは、シリア難民。言葉にも不自由している様子。フィンランドに来たのは全くの偶然で、追われて隠れた貨物船がヘルシンキ行きだったのだ。

一方、冴えない中年男ヴィクストロムは、鍵と指輪を女の前に置いて、家を出る。
女は黙って酒を飲み、指輪は灰皿に捨てる。
ずっと無言だ。
なのに状況がわかってしまうのが、すごい。

2人の男に、はじめ接点はなく並行して描かれるが、シリア難民の方が行き場をなくしてゴミ捨て場を寝ぐらにしようとし、ヴィクストロムと出会う。
彼も含め、フィンランドの人たちは地味に暖かい。
難民を突き放さない。
過度に甘やかしもしない。
その空気感がよくて、気付けば癒されていた。
シリア難民のアレッポは、ネオナチの男に襲われるし、警察は杓子定規だし、決して優しい国ではないのに。

いいところも悪いところも描いて、淡々としている感じがいかにもフィンランド的だと思った。
見終えた後にアキ・カウリスマキ監督と知る。
兄のミカ・カウリスマキの『世界で一番しあわせな食堂』もフィンランド的善良さの溢れる作品だった。

どこか時代遅れで、洗練されていなくて、気取らなくて、普通に生きる。
なかなかそれが難しいと最近思うから、余計心に沁みたのかもしれない。


配信『ラ・ラ・ランド』

2022-11-05 12:45:00 | 映画
もちろん公開時には映画館で観ているし、話題作だったので「観た、観た」と言った記憶もある。
アカデミー賞もたくさんもらった。



なのに、あまりいい印象がない。

今回はGYAO!配信をタブレットで観る。
無料版なのでCMばかり。
それでも自分の部屋で、寛いで観られる効用は大きい。
だって、感動してしまったのだ。
それとも〈6年後〉だから?
夢にピリオドを打ち、現実に即した思考をする今だからこそ、このストーリーにグッと来た?

音楽もいい。
ダンスも魅せる。
映像は美しく、おとぎ話のようだ。
そこそこシビアだがロマンチックは忘れず、夢に批判的だが夢に生きている、そんなファンタジーだ。

若い頃、映画は一度観れば充分だと思った。でも今は何度でも観たい。
繰り返しの鑑賞に耐える映画が、よい映画。
観るたびに意味が変わる。
そんな映画に一本でも多く出会いたいと思う。

いい映画は気持ちのありようを変えてくれる。
思いがけず、前向きになれた。
ありがたい。


映画『天間荘の三姉妹』

2022-11-05 11:05:00 | 映画
『アムステルダム』を観る予定でした。
思いがけず視聴してしまった『天間荘の三姉妹』
やっぱり気弱になってます。
理解を求めています。
消化不良になるかもしれない映画よりは、〈わかりやすい〉邦画に流れる。

実はちょっとウツ気味で、何もやる気が起きない、未来時間に希望を持てない状態になっていて、
ブログや日記の更新はやめ、最低限の義務だけこなして生きてました。
LINEのお付き合いも、面倒くさいのでパス。でも、何とかしなければとの思いはあり、こうして映画観て気分転換を図ろうとしているのです。
そんな邪道な観方ですみません。

結果から言うと、気分は晴れませんでした。脱日常を図れるほどの作品ではなく、かといって気分が悪くなるような描写もなく、淡々と長い映画を見終わったわけです。でも、それがよかったのかもしれません。
知らなかったのですが、東日本大震災で犠牲になられた方々の鎮魂のストーリーでした。
生と死の間にある天間荘、そこに来るのは臨死状態の人。ゆっくり時間をかけて来し方を振り返り、死か生かを選ぶのです。

ヒロインは「のん」さん、ゆっくりしたペースに合わせるかのように、作品もゆっくり進みます。
姉の大島優子さん、門脇麦さん、高良健吾さん、朝ドラでお馴染みの人たちを劇場で観ることで、同時代に生きることを確認する。それもいいもの。
脂の乗った寺島しのぶさんの演技。
貫禄の三田佳子さんは先達です。

打たれ弱くなったのか、言いたい放題の孫に腐されて落ち込んだり、急遽、3歳児のお弁当を作ることになって慌てたりのウツなんです。
老人性、季節性、何でもいいけど、気持ちに振り回されるのは、やることがないから。それをまず受け入れなくちゃ。
70代は老いを受け入れることから始まるのかも。
ゆっくり時間をかけて死に向かう、
私も天間荘の住人なのかもしれません。



DVD『八月の狂詩曲』

2022-11-01 15:25:00 | 映画
吉岡秀隆が出演しているというので鑑賞。
彼はまだ若く、大学に入ったばかりという設定。

黒澤明監督の作品だし、まあ間違いはなかろうとの思いで借りたのですが、ならどうしてリアルタイムで観なかった?というギモンは残ります。
まあ、当時は子育てに忙しくそれどころじゃなかったのでしょう。

さて、何の前知識もなく観たのですが、
これは長崎への原爆投下の意味を問いかけた、重い作品でありました。
誰も晩年になれば、既成の価値観に倚かかりたくなるものですが、クロサワも〈反戦〉〈反核〉というテーマに、無難にまとめたのか。
アソビの少ない作りを支えているのはおばあちゃんと4人の孫たちでした。
吉岡の頼りないキャラも、よく合っていて、子どもたちをメインに据えなければ、つまらない作品だと思います。
どの子もちょっとお行儀が良すぎましたが。

ところで長崎といえば、キリスト教のミサが大晦日や原爆記念日には映し出されます。が、ハワイやリチャード・ギアを出しながら、祈りは般若心経なのです。
しかも、謎の一節「ぎゃーてーぎゃーてー はーらーぎゃーてー」が繰り返し唱えられ。
自由に行け、というような意味らしいのですが、おばあさんたちが声を揃えて読むお経は、なまじな祈りよりも迫力がありました。

実は吉岡秀隆がオルガンを弾きながら歌うシーンも期待していたのですが、音程の狂ったオルガンがやっと直った時、歌う声は狂っていたという設定はおかしい。
そしてラストシーンで、今度は児童合唱団らしき声の「童はみたり〜野中のバラ」
うーん、これが正解はいいとして、これで終わり?
この歌にどれほどの意味があったのか、最後までよくわかリませんでした。

おばあさんと子ども。
人生の始まりと終わりの自由な時間。

本当はそれを描きたかったんじゃないか。
私はその部分しか楽しめなかったけど、まあそれでいいか。