このアニメはちと変わってる背景がある。実は日本のアニメじゃない。一見日本のアニメに見えるが実は中華アニメだ。
出てくるスタッフ名が全員中国人なんで初見はビビる。
掲示板で書かれてる文字も思いっきり中国本土で使われている「簡体字」だ。
原作は「小説家になろう」掲載作(今期では珍しく「完結済」だ)。書籍版は角川が販売してて、本邦の放送は一見角川枠に見えるが、実は制作自体は中華の会社が行っていて、つまり角川制作、じゃないんだ。今期放送してるのは「アニメとしては中国語でフルで制作されてるモノ」を日本語に翻訳・吹き替えしたものを放送してて、なおかつ、厳密な意味で言うと「新作」でもない。中国での発表は昨年(2022年)の7月に遡る。半年くらいタイムラグがあるわけだな。
つまり、中国での角川の子会社が中国版として翻訳・発表した作品が向こうで人気が出て、かつての「アニメ」の通り、出版社が主導で作るのではなく、あくまで中国の会社がアニメ化権を得てアニメ化し、逆輸入として日本に入ってきて「吹き替え」で観れるようになった、と言う、珍しいケースの作品になっている。
ビックリするのが、ノリが日本のアニメと遜色がない辺りだ・・・。90年代辺りから下請けとして海外のアニメ会社に発注する、っつーのが当たり前になったわけだが(※1)、それから30年近く経った結果、日本特有(だった筈)のアニメ的な「演出テンポ」なんかも丸ごと向こうの「技術」になってる、ってのに驚いた。なるほど、もはや「日本的アニメ演出」は「日本的」でも何でもないらしい。
ずーっとIT系の「技術流出」と「日本の不況」は関連付けて語られて来て久しいんだけど、それだけじゃない、って事が良く分かる。中華人民共和国では既に「日本っぽいアニメ」が独自に作れるくらいになってるんだ。ヘタすれば、将来的には「中華人民共和国制作の日本っぽいアニメ」の下請けを「人件費が安い日本が」やるハメになるかもな(笑)。既に「テクノロジーの流出」だけの話じゃないんだ。
とまぁ、SF恐怖的な日本の将来像を見る事は可能なんだけど、それはそれとしてアニメとしての出来はイイ。話も面白い。
タイトルがストーリーをそのまま表している、んだけど、要は「生贄」として捧げられた女の子であるレーコは(本人は自覚がないんだけど)魔法の天才で、本人は「邪竜の眷属になった」と言う思い込みでその才能を開花。やたら「邪竜の眷属」ムーヴをするレーコに人畜無害な筈な主人公(主竜公?)が巻き込まれる、と言うコメディだ。
コメディなんだけど、原作を読んでみれば分かるが「非常に優しい」話だ。主人公は激弱で、それがおかしさを生んでるんだが、根底的にはプロットには「優しさ」が流れている。
余談だけど、この話を読んだら、ちと筒井康隆の「九死虫」を思い出した。
筒井康隆の方が悪意に塗れてる(笑・※2)。
※1: 当時の笑い話で、石灯籠を含む彩色を発注したら石灯籠が中華風に真っ赤に塗られて返ってきた、と言うものがあったが、このテの「笑い話」は既に本当に過去のモノとなってしまった。
※2: 当然、筒井康隆はブラックユーモアなんでそれで良い。