1)
くっそっ!やっぱ、一筋縄ではいかないぜ…。アネモネ魔法学院魔法剣士科で、クオラの同級生。ユルギスは、レッドドラゴンを前に、心の中で毒づいた。
週に一度の課外授業で、モンスターに襲われることは、そう珍しくはない。、だが、死傷者も必ず何名かは出ている過酷な授業が、続けられている理由は、
ぶっちゃけ、実戦を積ませて、経験値をあげることだろうと、ユルギスは、あたりを付けている。それ故に、班分けしたパーティーの構成も、魔法剣士科より
一名、魔法科より二名の三名によると決まっている。
だから、ユルギス、クオラ、リルルのパーティーと決まったとき、クオラが居ることで、内心、しくじったと彼は思ったのだ。
そして、今、前方のモンスターから、目が離せない状況下で、背後からは、魔素が薄くて、魔法が使えないとパニくるリルルの声や、なぜか、風船という単語が聞こえていたが、
覚悟を決めたのか、それも、静かになった。なんとも妙な、すぅ、ぷぅぅぅ~、すぅ、ぷぅぅぅ~~という呼吸の音がするだけだ。
しかたない。魔法が使えないらしいのは、俺も同じことだ。
ユルギスは、覚悟を決めて、剣を握りなおした。
2)
さて、クオラが読んだ風船魔法の入門本には、魔素が薄いところでも平気、強力な魔法が使えちゃうよと記されていたのだ。
それなら、イチかバチかで使わない手は無い。なにせ、発動方法は、ひたすら、息で、ポシェットから出した風船をふくらませるだけなのだから。
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
青い風船は、透明度を増しながら、ふくらんでいき、クオラの上半身を隠すまでにふくらんだところで、その膜の表面に、見慣れた図形が現れてくる。
3)
今まで、レッドドラゴンが唸るばかりで、攻撃に転じなかったのは、特大の炎のブレスを、闖入者へと喰らわせるためだった。
準備はできたとばかりに、大きな口を開き、火炎放射器よろしく、炎を吐いた。クオラによって、頭上にトスされた青い風船は、当然の如く無視された。
それが、レッドドラゴンの敗因だった。
4)
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
ぷはぁっ!
「 これだけふくらませば、充分よね。」
クオラは、満足げに、愛らしいくちびるを、ふくらましていた青い風船から離した。
優に一抱えはあるだろう、その風船は、その表面に、青の魔法陣を明滅させながら、クオラに抱かれている。
その口から、息が漏れないように結わえようと、慣れた手つきで、吹き口を縛って両手を放すと、ふわりと浮きあがって、
ドラゴンの頭上へと、ふわふわと進んでいった。
5)
ユルギスが、やられると思い、不覚にも目をつぶったその瞬間。
「 あ…、れ…???」
いつまでたっても、レッドドラゴンの炎で、灰にならないので、目を開くと、
「 。。。。。。嘘だろ?炎ごと、凍結してる。」
何が起きたかはわからないが、とにかくチャンスなので、匠の手で掘られたかのような氷のドラゴンの彫像を、持っている剣で叩き割った。
6)
(ふぅ、うまくいったみたいね。)
レッドドラゴンが倒されるまでを、クオラが見ていると、ドラゴンが倒された後に、赤い風船が落ちている。
あれ?今までなかったよね?と、疑問を感じ、再度、風船魔法の入門書をひもとくと、
風船魔法で倒したモンスターは、その特性に応じた色の風船になります
なんて、記されてある。ユルギスとリルルは、風船に気付かずに部屋の外に出たようだった。
どうやら、とっくに、学校へと戻ったようである。
クオラは、赤い風船をひろって、マントの裏のポケットへと忍ばせて、二人の後を追っていった。
【つづく】
くっそっ!やっぱ、一筋縄ではいかないぜ…。アネモネ魔法学院魔法剣士科で、クオラの同級生。ユルギスは、レッドドラゴンを前に、心の中で毒づいた。
週に一度の課外授業で、モンスターに襲われることは、そう珍しくはない。、だが、死傷者も必ず何名かは出ている過酷な授業が、続けられている理由は、
ぶっちゃけ、実戦を積ませて、経験値をあげることだろうと、ユルギスは、あたりを付けている。それ故に、班分けしたパーティーの構成も、魔法剣士科より
一名、魔法科より二名の三名によると決まっている。
だから、ユルギス、クオラ、リルルのパーティーと決まったとき、クオラが居ることで、内心、しくじったと彼は思ったのだ。
そして、今、前方のモンスターから、目が離せない状況下で、背後からは、魔素が薄くて、魔法が使えないとパニくるリルルの声や、なぜか、風船という単語が聞こえていたが、
覚悟を決めたのか、それも、静かになった。なんとも妙な、すぅ、ぷぅぅぅ~、すぅ、ぷぅぅぅ~~という呼吸の音がするだけだ。
しかたない。魔法が使えないらしいのは、俺も同じことだ。
ユルギスは、覚悟を決めて、剣を握りなおした。
2)
さて、クオラが読んだ風船魔法の入門本には、魔素が薄いところでも平気、強力な魔法が使えちゃうよと記されていたのだ。
それなら、イチかバチかで使わない手は無い。なにせ、発動方法は、ひたすら、息で、ポシェットから出した風船をふくらませるだけなのだから。
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
青い風船は、透明度を増しながら、ふくらんでいき、クオラの上半身を隠すまでにふくらんだところで、その膜の表面に、見慣れた図形が現れてくる。
3)
今まで、レッドドラゴンが唸るばかりで、攻撃に転じなかったのは、特大の炎のブレスを、闖入者へと喰らわせるためだった。
準備はできたとばかりに、大きな口を開き、火炎放射器よろしく、炎を吐いた。クオラによって、頭上にトスされた青い風船は、当然の如く無視された。
それが、レッドドラゴンの敗因だった。
4)
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
すぅ、ぷぅぅぅぅ~~~っ!
ぷはぁっ!
「 これだけふくらませば、充分よね。」
クオラは、満足げに、愛らしいくちびるを、ふくらましていた青い風船から離した。
優に一抱えはあるだろう、その風船は、その表面に、青の魔法陣を明滅させながら、クオラに抱かれている。
その口から、息が漏れないように結わえようと、慣れた手つきで、吹き口を縛って両手を放すと、ふわりと浮きあがって、
ドラゴンの頭上へと、ふわふわと進んでいった。
5)
ユルギスが、やられると思い、不覚にも目をつぶったその瞬間。
「 あ…、れ…???」
いつまでたっても、レッドドラゴンの炎で、灰にならないので、目を開くと、
「 。。。。。。嘘だろ?炎ごと、凍結してる。」
何が起きたかはわからないが、とにかくチャンスなので、匠の手で掘られたかのような氷のドラゴンの彫像を、持っている剣で叩き割った。
6)
(ふぅ、うまくいったみたいね。)
レッドドラゴンが倒されるまでを、クオラが見ていると、ドラゴンが倒された後に、赤い風船が落ちている。
あれ?今までなかったよね?と、疑問を感じ、再度、風船魔法の入門書をひもとくと、
風船魔法で倒したモンスターは、その特性に応じた色の風船になります
なんて、記されてある。ユルギスとリルルは、風船に気付かずに部屋の外に出たようだった。
どうやら、とっくに、学校へと戻ったようである。
クオラは、赤い風船をひろって、マントの裏のポケットへと忍ばせて、二人の後を追っていった。
【つづく】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます