1)
課外授業で入った神殿で、クオラ・バロニア・ティルル・ポエニカは、困惑していた。
目の前には、宝物の番人のレッドドラゴンが、出入り口を背に唸り声をあげているし、絶体絶命の彼女の手には、この部屋の宝箱から出てきた革製のポシェットが握られている。
「 見て。クオラ。ここの魔素量、極端に薄いよぉ。」
一緒にまわっていた班の少女が、大気中の魔力の素となる物質の量を測る魔素量計がついたブレスレットを、クオラに見せて怯えている。
「 ほ、ほんとだ…。これじゃあ、魔法がつかえない。」
なんで、こんなことになったんだろう。クオラは、数時間前の出来事を思い出していた。
2)
その日のアネモネアの空は、青色光を反射する魔素粒子が満ちているからか、どこまでも、高かった。
「 ん~~~~っ!いい天気っ!」
アネモネ魔法学園の校庭のベンチで、亜麻色のショートカットの少女が、仰向けのまま、背伸びをした。
「 中等科ウンディーネ組のクオラ・バロニア・ティルル・ポエニカさん。クオラ・バロニア・ティルル・ポエニカさん。いらっしゃいましたら、職員室までおいでください。」
校庭にひょこんと立っている鉄塔の頂きに備え付けられた、遠くからの声を飛ばして増幅させる魔導機から、何度も、少女の名を呼ぶ声がする。
それもそのはずで、肝心の授業をさぼって、工程のベンチで寝ているのだから、また、担任の教師に厳重に注意されるのだろう。
少女は、面倒くさそうに、あくびをすると、再び、布団替わりのマントに潜ったが、亜麻色のショートだけが、外に見える。
「 ふぁぅ。おちこぼれ、独り、ほっておいてよね~。」
いじけた調子で少女が、毒を吐くと、業を煮やした担任の、魔導機を破壊するほどの怒鳴り声が、ハウリングを起こしつつ、校庭に響いた。
「 くぉらああっ!クオラ!早く、来ないと補習増やすぞ~。」
「 きゃああっ!分かった、わかりました~。」
そう言って、布団替わりのマントを羽織ると、少女は、校舎へと、歩を進めた。
3)
少女、クオラが、不承不承、職員室に赴くと、案の定、担任の大目玉を喰らった後で、ため息をつきながら、語り掛けられた。
「 クオラ。お前、真面目に授業出たらどうだ?」
「 そんなこと言われても、うち、才能ないし…。」
しょんぼりとクオラはつぶやいて、落ち込んだのも、無理はなかった。
彼女は、魔法の才能がからっきしだったのだ。
「 それなんだが、おかしいんだよな~。」
これは、クオラ本人には聞かされていないことだが、学園に入学時に、魔力がどれくらいあるのかを入学試験の一環で計ったときに、クオラは、学園はじまって以来の最高値を弾きだしていた。
にも関わらず、おちこぼれなのは、担任も困惑するところだった。
「 先生・・・?」
「 ん?何でもない。とにかく、午後の課外学習の授業には出るんだぞ。」
それだけ言われると、クオラは放免されたのだった。
4)
そして、今、何かないかと、クオラは、手にした革製のポシェットの中身を、まさぐっていた。
すぐに、何か柔らかいものの手ごたえがあったので、クオラは、手に取って取り出してみると、
「 ふうせん・・・????」
だった。
「 ど、どうしろっていうのよ~。」
【つづく】
課外授業で入った神殿で、クオラ・バロニア・ティルル・ポエニカは、困惑していた。
目の前には、宝物の番人のレッドドラゴンが、出入り口を背に唸り声をあげているし、絶体絶命の彼女の手には、この部屋の宝箱から出てきた革製のポシェットが握られている。
「 見て。クオラ。ここの魔素量、極端に薄いよぉ。」
一緒にまわっていた班の少女が、大気中の魔力の素となる物質の量を測る魔素量計がついたブレスレットを、クオラに見せて怯えている。
「 ほ、ほんとだ…。これじゃあ、魔法がつかえない。」
なんで、こんなことになったんだろう。クオラは、数時間前の出来事を思い出していた。
2)
その日のアネモネアの空は、青色光を反射する魔素粒子が満ちているからか、どこまでも、高かった。
「 ん~~~~っ!いい天気っ!」
アネモネ魔法学園の校庭のベンチで、亜麻色のショートカットの少女が、仰向けのまま、背伸びをした。
「 中等科ウンディーネ組のクオラ・バロニア・ティルル・ポエニカさん。クオラ・バロニア・ティルル・ポエニカさん。いらっしゃいましたら、職員室までおいでください。」
校庭にひょこんと立っている鉄塔の頂きに備え付けられた、遠くからの声を飛ばして増幅させる魔導機から、何度も、少女の名を呼ぶ声がする。
それもそのはずで、肝心の授業をさぼって、工程のベンチで寝ているのだから、また、担任の教師に厳重に注意されるのだろう。
少女は、面倒くさそうに、あくびをすると、再び、布団替わりのマントに潜ったが、亜麻色のショートだけが、外に見える。
「 ふぁぅ。おちこぼれ、独り、ほっておいてよね~。」
いじけた調子で少女が、毒を吐くと、業を煮やした担任の、魔導機を破壊するほどの怒鳴り声が、ハウリングを起こしつつ、校庭に響いた。
「 くぉらああっ!クオラ!早く、来ないと補習増やすぞ~。」
「 きゃああっ!分かった、わかりました~。」
そう言って、布団替わりのマントを羽織ると、少女は、校舎へと、歩を進めた。
3)
少女、クオラが、不承不承、職員室に赴くと、案の定、担任の大目玉を喰らった後で、ため息をつきながら、語り掛けられた。
「 クオラ。お前、真面目に授業出たらどうだ?」
「 そんなこと言われても、うち、才能ないし…。」
しょんぼりとクオラはつぶやいて、落ち込んだのも、無理はなかった。
彼女は、魔法の才能がからっきしだったのだ。
「 それなんだが、おかしいんだよな~。」
これは、クオラ本人には聞かされていないことだが、学園に入学時に、魔力がどれくらいあるのかを入学試験の一環で計ったときに、クオラは、学園はじまって以来の最高値を弾きだしていた。
にも関わらず、おちこぼれなのは、担任も困惑するところだった。
「 先生・・・?」
「 ん?何でもない。とにかく、午後の課外学習の授業には出るんだぞ。」
それだけ言われると、クオラは放免されたのだった。
4)
そして、今、何かないかと、クオラは、手にした革製のポシェットの中身を、まさぐっていた。
すぐに、何か柔らかいものの手ごたえがあったので、クオラは、手に取って取り出してみると、
「 ふうせん・・・????」
だった。
「 ど、どうしろっていうのよ~。」
【つづく】
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