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ベートーヴェンの愛したピアノ

2018年10月01日 | 演奏会へ
久し振りのコンサートです。今回の主役はピアノの前身、フォルテピアノです。今年、製作から200年を迎える渡邊順生氏氏所有のナネッテ・シュトライヒャー作(1818)のフォルテピアノの音色を楽しみました。
ベートーヴェンとシューベルトの19世紀はじめの作品を通して、フォルテピアノの音、魅力、そして二人の作曲家が目指した音を探ろうという異色のコンサートでした。単にフォルテピアノの音の見本ではなく、連弾、声楽、弦楽器が加わるプログラムは、シューベルティアーデもかくやと思えるような当時のアットホームな雰囲気と音の世界が楽しめるものでした。

西原稔氏のプレトークにもありましたが、現在は強大化したピアノも当初はとても音の小さな存在で、室内合奏では他の楽器ともよく溶け合うという説明や、ベートーヴェンはシュトライヒャーのピアノフォルテを愛し、シューベルトはシュトライヒャーを望んでも得られなかったという興味あるエピソードの紹介もありました。ピアノの門外漢の私には大変面白いお話でした。

実際、フォルテピアノの音は実に愛らしく、ヴァイオリンやチェロの音がよく聞こえます。それぞれの楽器の音が溶け合って素晴らしいハーモニーを生んでいました。現代のピアノでは常に前に出るピアノですが、ピアノもひとつのパートということもできるくらい大人しい存在(笑)でした。もちろん、フォルテも出せますが、好ましい大きな音なのです。このチェンバロの格好をしたピアノ?は本当に音楽を楽しむための楽器であるように思えました。ベートーヴェンが愛した理由も分かるような気がします。

シューベルトはベートーヴェンを大変尊敬していたそうですが、この日のプログラムは、二人の作曲家の作品だけで構成されていますから、今夜の演奏をシューベルトが聴いたらきっと感涙にむせんだことでしょう(筆者の個人的想像です(笑))。作曲年もほぼ同時で、19世紀初めに古典派とロマン派の作品が呼応するさまを聴けたのも貴重な体験となりました。

今日は、台風24号の後片付けであたふたとした日になりましたが、超久しぶりに聴いた水越氏の「遥かなる恋人に」が素晴らしい歌唱であったことも含め、暖かい雰囲気の演奏会で締めくくることができたのは幸福でした。
つまらないことを添えれば、なぜ、フォルテピアノ以降、ピアノは巨大化し一人勝ちしているのかと自問してしまいました。現在のピアノ弾きは、すべからく、ピアノフォルテの音世界を体験すべきだよなあと思いながら家路を急いだことでした(笑)。


ベートーヴェンの愛したピアノ
ナネッテ・シュトライヒャー作フォルテピアノ製作200年記念

2018年10月1日(月) 19:00~21:10
浜離宮朝日ホール

プログラム
(西原稔氏によるプレトーク-1)
1 シューベルト:ピアノ五重奏曲「鱒」第4楽章 D667(1819)
2 ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第4番ハ長調作品102の2(1815)
3 ベートーヴェン:歌曲集「遥かなる恋人に」作品98(1816)
休憩
(西原稔氏によるプレトーク-2)
4 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調「告別、不在、再会」作品81a(1809)
5 シューベルト:四手連弾のためのデュオ「人生の嵐」、D947(1828)
6 ベートーヴェン:諸国の民謡(1816)
 (1)お聞き、愛しい人よ(ドイツ民謡)
 (2)日暮れに(スコットランド民謡)
 (3)女の子、まったく女の子ってな!(チロル民謡)

(アンコール)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58より第2楽章.
ベートーヴェン:ゴンドラの歌.WoO.158-12

渡邉順生(フォルテピアノ)、仲道郁代(フォルテピアノ)、崎川晶子(フォルテピアノ)、渡邊慶子(ヴァイオリン)、花咲薫(チェロ)、水越 啓(テノール)他.


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