スティーヴン・イッサーリスのチェロを聴きに三鷹市芸術文化センター・風のホールへ出かけた。オール・シューマン・プログラムである(「ローベルト・シューマン没後150年記念:スティーヴン・イッサーリス,チェロ・リサイタル~シューマン・プロジェクト2006」)。ガット弦を使用し,日本から貸与されたストラドを奏でるイッサーリスを初めて聴くと思うと年甲斐もなく興奮して約束の時間よりもだいぶ早く着いてしまった。
今日は来日中?の大石さんとご一緒である。地階のレストランでワインを飲みながら待っていると,やがて現れたご本人はコメント同様の語り口と豊富な話題の持ち主。ワインと料理も進み,開場時間になる頃にはボトルが一本空いてしまった。これはちょっと飲み過ぎたと反省しながら前方右側の席でイッサーリスのガット弦の音を愉しむことになった。
身構えて待っていた最初の音は肩すかしをくらったようにふわっと通り過ぎていってしまった。ガット弦はそれほど柔らかく,奥ゆかしくウォームな音がする。伴奏のピアノがうるさく聞こえてしまうほど。実際,柔らかい音にワインがきいて気持ちが良くなり,プログラムの2曲目まではレム睡眠状態だったと思われる(笑)。
聞き耳を立てだしたのは3曲目のイッサーリス編曲のヴァイオリン・ソナタ第3番から。イッサーリスの両手は生き生きとした音楽を創っていく。ガット弦の柔らかさを十分に活かしながらもダイナミックで強靱なトーンになっている。そこに「疾風怒濤」を見るような思いがした。
休憩後の3曲はCDも出ておりより親しみやすい。繊細でロマンチックな音作りが曲想に活かされていた。前半の時よりもピアノの音が後退し,チェロがよく聞こえるようになったのはよかった。シューマンのロマン性の中に一種,バッハにも似た陶酔や熱狂を見る思いがして,この作曲家を見直してみようかと思った。
事故が起きたのは後半開始直後の「3つのロマンス」。静かに始まった曲の冒頭で突然バンッという音とともにA弦が切れてしまったのだ。最前列に近かった私たちの席からは事態がよく見えた。上下に分断されたA弦はスローモーションのようにクルクルと舞い,弦に付着していた松脂が飛散した。イッサーリスは済まなそうに,あるいは「(ガットだから)仕方がないね」という風にジェスチャーして楽屋に下がってしまった。その間10分くらいだったろうか,再び登場したイッサーリスは(さすが,プロ!)難なく代わりの弦に張り替えている。同じ曲を再開。こちらの方がドキドキしてしまった。が,無事冒頭部分を通過し,その後もピッチが下がるようなこともなく,ホッとした(心配してどうする(笑))。
まさしく,ガット弦は柔らかい音で表現も繊細,豊かなのだがピッチが安定せず,よく切れることが難点なのはよく知られている。この日は昼から雨。満員の客席。温度や湿度の影響。前半で弓の毛が切れていたりしたので悪い予感がしたのだが不幸にも当たってしまった。でもプロだけにリカバリーが早かった。私はあんなに早く弦を取り替えられない(比較してどうする(笑))。
いつもなら中央付近の席をとるのだが,今回は大石さんのご意見もあり前方の席になった。お陰で演奏者の弓使いや指使い,息づかいまで如実に見ることができ大変参考になった。特に今日は弓の弦に対する角度を注意深く観察させていただいた(観察ばかりしてどうする(笑))
大石さん,今日はありがとうございました。機会がありましたらまたご一緒させてください。
曲目など
幻想小曲集,作品73
おとぎの絵本,作品113(ピアッティ編曲)
ヴァイオリン・ソナタ第3番(イッサーリス編曲)
(休憩)
3つのロマンス,作品94
アダージョとアレグロ,作品70
5つの民謡風の小品集,作品102
アンコール:フォーレ;子守歌
2006年11月19日(日),15:00~17:30,三鷹市芸術文化センター・風のホール
スティーヴン・イッサーリス(チェロ),ネルソン・ゲルナー(ピアノ)
今日は来日中?の大石さんとご一緒である。地階のレストランでワインを飲みながら待っていると,やがて現れたご本人はコメント同様の語り口と豊富な話題の持ち主。ワインと料理も進み,開場時間になる頃にはボトルが一本空いてしまった。これはちょっと飲み過ぎたと反省しながら前方右側の席でイッサーリスのガット弦の音を愉しむことになった。
身構えて待っていた最初の音は肩すかしをくらったようにふわっと通り過ぎていってしまった。ガット弦はそれほど柔らかく,奥ゆかしくウォームな音がする。伴奏のピアノがうるさく聞こえてしまうほど。実際,柔らかい音にワインがきいて気持ちが良くなり,プログラムの2曲目まではレム睡眠状態だったと思われる(笑)。
聞き耳を立てだしたのは3曲目のイッサーリス編曲のヴァイオリン・ソナタ第3番から。イッサーリスの両手は生き生きとした音楽を創っていく。ガット弦の柔らかさを十分に活かしながらもダイナミックで強靱なトーンになっている。そこに「疾風怒濤」を見るような思いがした。
休憩後の3曲はCDも出ておりより親しみやすい。繊細でロマンチックな音作りが曲想に活かされていた。前半の時よりもピアノの音が後退し,チェロがよく聞こえるようになったのはよかった。シューマンのロマン性の中に一種,バッハにも似た陶酔や熱狂を見る思いがして,この作曲家を見直してみようかと思った。
事故が起きたのは後半開始直後の「3つのロマンス」。静かに始まった曲の冒頭で突然バンッという音とともにA弦が切れてしまったのだ。最前列に近かった私たちの席からは事態がよく見えた。上下に分断されたA弦はスローモーションのようにクルクルと舞い,弦に付着していた松脂が飛散した。イッサーリスは済まなそうに,あるいは「(ガットだから)仕方がないね」という風にジェスチャーして楽屋に下がってしまった。その間10分くらいだったろうか,再び登場したイッサーリスは(さすが,プロ!)難なく代わりの弦に張り替えている。同じ曲を再開。こちらの方がドキドキしてしまった。が,無事冒頭部分を通過し,その後もピッチが下がるようなこともなく,ホッとした(心配してどうする(笑))。
まさしく,ガット弦は柔らかい音で表現も繊細,豊かなのだがピッチが安定せず,よく切れることが難点なのはよく知られている。この日は昼から雨。満員の客席。温度や湿度の影響。前半で弓の毛が切れていたりしたので悪い予感がしたのだが不幸にも当たってしまった。でもプロだけにリカバリーが早かった。私はあんなに早く弦を取り替えられない(比較してどうする(笑))。
いつもなら中央付近の席をとるのだが,今回は大石さんのご意見もあり前方の席になった。お陰で演奏者の弓使いや指使い,息づかいまで如実に見ることができ大変参考になった。特に今日は弓の弦に対する角度を注意深く観察させていただいた(観察ばかりしてどうする(笑))
大石さん,今日はありがとうございました。機会がありましたらまたご一緒させてください。
曲目など
幻想小曲集,作品73
おとぎの絵本,作品113(ピアッティ編曲)
ヴァイオリン・ソナタ第3番(イッサーリス編曲)
(休憩)
3つのロマンス,作品94
アダージョとアレグロ,作品70
5つの民謡風の小品集,作品102
アンコール:フォーレ;子守歌
2006年11月19日(日),15:00~17:30,三鷹市芸術文化センター・風のホール
スティーヴン・イッサーリス(チェロ),ネルソン・ゲルナー(ピアノ)
ガットは音も柔らかく優雅でプロっぽくカッコイイのですが,緩む,切れるは当たり前の世界ですね。いつかは私も試してみたいとは思っていますが,現在は手間のかからないスチール弦で十分です(笑)。弦については大石さんのコメントが詳しいです。
薪ストーブは,今のところ順調に運転しています。薪も本物になってから火力も強くなり,より長い時間燃えています。まだ寒さは本格的ではありませんが,これから雪でも降ろうものなら,薪ストーブの暖かさがこたえられなくなるだろうと,今から過大な期待をしている馬鹿さ加減です。暖かいストーブの前でレム睡眠状態になるのも乙なものです(笑)。いえいえ,そんなわけはありません。Leafさん,飲み過ぎにはご注意を。。。
先日は、お供頂きありがとうございました。
私も夢心地で、数曲寝ていましたが、概して、そのようなときは、演奏が良いからだと考えています。
でも、Isserlisの無邪気な、やさしい語りかけるような笑顔は、人気の源です。技術、音質、選曲、志向性
全て気に入りました。
また、予断ですが、彼は、ViolinのJosha BellとRobert Shumannについて意見が合うらしく、主に
Europeで集中的にSchumannのコンサートをやっていますしシューマン研究も2人でやっているそうです。
Violin Sonataを自分で編曲したのは、Josha Bellの影響です。
Why Beethoven threw the stew? Isserlis薯は、Schumannについて述べてあります。是非、読んでみて
ください。
それでは、
また、コンサート行きましょう。
大石
私もイッサーリスの三鷹でのリサイタルを聞きに行きました。
初めて聞く生イッサーリス。
トランス系ヒーリングミュージックですね。
暖かい音なのだけれど、聞いている人を自分の内側へ内側へと連れて行ってしまう音というか、幽明のあわいに橋を架けるような演奏だと思いました。
もったいぶらずに言うと、私も寝ました。w
でも退屈で寝たのではなく、身の回りも自分もきらめく光に包まれるような体験でした。
USに戻られてサウナで読書を愉しんでいることと思います。
三鷹ではごいっしょできて楽しかったです。実は先週は疲れ気味だったのですが,やはり出かけて良かったです。ガットは聴けたし,三鷹事件?(弦の断裂)にも遭遇?できたし(笑)。(これはアクシデントなのでしょうが,かえってチェロに愛着が増します)
Why Beethoven~是非,読みたいと思います。
では,また機会がありましたら,よろしくお願いします。
「内側へ内側へと連れて行ってしまう音」。確かに,頷けます。そのようなトーンを必要としているのがシューマンの音楽とも言えるでしょう。レム睡眠が夢とうつつの間をつないでくれるのでしょうか(笑)。
今度,ご一緒のときはお声をかけてくださいね。