かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

夜の話

2011年10月06日 | がん病棟で
「夜の話で悪いんですけど、ぜんぜんダメなんですよ。病気のせいですか?」

吐き気や頭痛や胸焼けの症状の具合や薬の効果についてひとしきり聞いて、ワタシがカルテのほうに向かった隙をねらって(と感じた)、彼女が不意に質問してきた。

一瞬、?マークがアタマの中をよぎったが、その1秒後に「ダメな」当の本人が、「ぜんぜんタタナイっすよ。元気になる薬ありませんか?」と発言したので、ああ、そのことかと理解できた。


自分よりも年下のがん患者の主治医になることが珍しくなくなってきた。
泌尿器科や婦人科、心療内科などでは、病気の症状や治療の副作用として日常的に交わされる会話かもしれないが、肺癌の患者さんの年齢層は高いこともあって、こういう話をすることはめったにない。

でも、患者さんや、そのパートナーがこういう相談をしてくれるのは、主治医として信頼してくれているからなのではないかと解釈した。
こちらも、ドギマギしてしまうような年齢でもないし。


性欲の減退は抑うつの一表現としてよく知られている。
彼の場合も、傍目にはいつも明るく振舞って、冗談を言ったりしているけれど、よく聞けば「ひとりになると色々考えたり、頭痛がすると、このまま死ぬんじゃないかと心配になる。がんが広がって、頭の血管につまっているから頭痛がしているんじゃないかとかいう想像をしたりもする」という。


「考える」ことは決して悪いことではない。
ただ、悪いイメージを常にアタマに描くのは良くない。
抑うつを助長させるし、自己免疫力だって落ちるに違いない。
良いイメージを持つことが大事だ。
その結果ストレスが減れば、自然と夜だって元気になる。


「センセイが言うと、説得力あるなあ」

『だって、プロだもん』

「かっこえー! オレは病気のプロだけどね(笑)」


病人にとって、夜は怖い時間帯だ。
太陽が沈むと、みな不安になって、昼間よりも痛みが強くなったり、いらぬことを考えたりして眠れなくなる。

患者さんたちには、幸せな夜を、1日でも多く過ごしてもらいたい。
一緒にいて欲しい人が傍らにいてくれるなら、なおのこといい。

















コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 秋雨避難 | トップ | BARのある人生 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

がん病棟で」カテゴリの最新記事