昨年12月だったか、理学療法士のMさんが、「紹介したい人がいる」と院内ピッチで連絡をしてきた。
Mさんは、私が股関節の手術をしたときにお世話になった。
紹介されたのは、現在通院治療中のTさん。
銀行員であるけれど、実は音大でチェロを専攻したという経歴があり、それを知ったMさんが、私と彼女は話が合うのではないかと、わざわざ紹介してくれたのであった。
その後、外来エリアで会うと彼女のほうから話しかけてきてくれて、立ち話的ではあったけれど、チェロの話で盛り上がったりしていた。
私から病状を聞くことはなかったけれど、9月に乳がんの手術をして、その後まもなく脳転移がみつかり、放射線治療を行ったのだと、経過を彼女が教えてくれた。
チェロは病気になってから弾いていなかったそうだが、Global Cello Projectの動画を見てもらったり、マスタークラスのことなどを話すと、彼女の中に弾きたい気持ちが沸き上がってきたのか、久々にチェロを弾いてみたら、術後リハビリでなかなかほぐれなかった腕まわりが、とても楽になって驚いたと喜んでいた。
年末には音楽仲間と久しぶりに会って、カルテットを楽しんだとも言っていた。
先日、採血室の前にいる私のところに、いつものようにふらーっとやってきた彼女。
様子が少し変だったので、体調を尋ねたら、左胸に近いわきの下に局所再発してしまったという。
その時はあまり話ができなかったが、気になったので、来院日を確かめて、抗がん剤治療室に訪ねて行った。
その時の彼女の一言目が「一緒にチェロ弾きたい」だった。
こんな曲はどう?と彼女が提案してくれたのが、OffenbachのDuo。
その日のうちにすぐに楽譜を検索・コピーして、まだ点滴中の彼女に渡して、LINEの交換もした。
彼女にかかわっている専門看護師によると、病状はかなり厳しく、主治医からは予後についてはっきりと言及され、かなり落ち込んでいるということだった。
楽譜を共有してから1週間。
週末、誰もいないリハビリ室で、初合奏。
一人で練習しているときは、すぐ疲れてしまって、6曲のうち1曲しかさらえなかったということだった。
私もほぼ初見の状態であったけれど、ゆっくりおしゃべりしながら弾いて、6曲すべて合わせることができた。
Mさんも途中顔を出してくれた。
弾いていた時間は、だいたい1時間くらい。
鎮痛剤を飲んでいても、常に違和感・痛みを感じながら弾いていたというから、今後いつまで楽しく弾けるかはわからないし、弾きたくなくなる日もくるかもしれない。
けれど、近くに住むチェロ友ができて、私はすごくうれしい。
できるかぎり一緒に弾いてもらいたいなあと思っている。
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