天体写真メモ

天体写真を撮る上でわかったこと、気がついたことをメモしていけたらいいかな?

dual Stage サイクロ減速機

2022-03-31 21:36:34 | 3Dプリンタ

KENさん(雨男時々嵐を呼ぶ男のBLOG)という凄い方が赤道儀を丸ごと3Dプリンタで作成している。次々に更新されるブログをワクワクしながら眺めているが、やはり興味の的は「Cycloidal Drive」という減速機のお話。私には難しくてなかなか理解できず何度も投げ出したが、紹介されているHPなどを眺めているうちにどうにかその「しくみ」が理解できてきた。

「しくみ」が分かるとその利点もわかるようになってくる。他の紹介ページなどの内容も「なるほど!」と読めるようになってより興味が湧いてくる。

取り敢えず、「赤道儀」への利用はハードルが高すぎるが、単純に減速機を印刷できたら楽しいかな? などと思いながら、さらに関連動画などをみているうちに、減速比が気になってきた。3Dプリンタで作成すること、作成する大きさ等を考えると1:100とかはかなり難しそうだ。

SkyWacherの赤道儀はtotalの減速比がどれも1:700という記事を見かけたが、Cycloidal Driveだけでこれを実現するとなると一段ではちょっと厳しそう。

それでは2段重ねにしたら・・・と考えると仕組みが複雑になるし大きくなってしまうよなぁ・・・。などと調べているうち「Double Dual Stage Cycloidal Gearbox」というのを発見。最初は単に2段にしただけかと思ったけど、よく見るとそれより単純。

Cycloidal driveは、外歯と内歯と、内歯から「回転を取り出す機構」があって、外歯を固定し、偏心した軸をまわすことで内歯をグニョグニョと揺らすと外歯にこすれて内歯がゆっくり回転する(振動を抑えるために内歯を2つ使っている場合が多いが)。その内歯のゆっくりとした回転を「回転を取り出す機構」で取り出す。内歯の歯数n (外歯の歯数-1)なら、1:nの減速比が得られる。



Double Dual Stage Cycloidal Gearboxは 普通のCycloidal driveから「回転を取り出す機構」を取り除いたものを2つ向かい合わせにして、内歯を張り付けた機構になってる(厳密にはどちらも内歯は2枚構成)。「回転を取り出す機構」が無いし内歯同士貼り付けてしまっているので仕組みはかなり単純。これでDouble Dual Stage Cycloidal Gearboxは1:100の減速比を実現している。


 

では歯数はどうなっているか?

数えてみると最初のステージは外歯10 内歯9、もう一方は外歯11 内歯10。それぞれは減速比1:9、1:10だから掛け算では1:90・・・ではないですね(笑)

この計算、結構頭を抱えたんだけど、要は、 1:10でまわっているものを逆側に1:9で回しているという感じ。1:9のほうが少し速いから速い分、全体として1:9のほうにその「少しだけ」回るという感じ。

じゃぁそれで1:100になるのか??

 

では、式を考えて見よう(ちょっと複雑)。ある程度汎用的で考えるために、

A: 外歯n+1、内歯n
B:外歯n+2、内歯n+1  とする。

ここで、軸が一周したとき、aはAの外歯に対して、Aの内歯がどのぐらい回転するか(軸に対して逆方向を正とする)、bはBの内歯(=Aの外歯と同じ)に対して、Bの外歯がどのぐらい回転するか(軸に対して順方向を正とする)、m はAの外歯に対して、Bの外歯がどのぐらい回転するか(軸に対して順方向を正とする)をそれぞれ表すとする。

すると、

     a = 1/(n+1)   ....  軸が一周=Aの外歯に対して軸が一周
     b = (1+a-b)/n  ....  軸が一周=Bの外歯に対して軸が(1+a-b)周

なので、

         b = (1 + 1/(n+1) - b)/n
       b = 1/n + 1/n(n+1) - b/n
 b+b/n  = 1/n + 1/n(n+1)
 b(1+1/n) = ((n+1)+1)/n(n+1)
 b(n+1)/n = (n+2)/n(n+1)
           b = (n+2)/(n+1)(n+1) 

となる。m=b-aだから、

m = b - a
    =  (n+2)/(n+1)(n+1) -1/(n+1)
    =  ((n+2)-(n+1))/(n+1)(n+1)
    =  1/(n+1)(n+1)

となることが分かる。つまり減速比は 1/(n+1)(n+1)(あってます?? Double Dual Stage Cycloidal Gearbox ではn=10だから 減速比1/100ですね)。

よーし、これ作ってみようかな~。1/700ぐらいを目標にするとして、

Aの外歯 28、内歯27、B層の内歯26、外歯27として、 n=26だから、

m = 1/(n+1)(n+1) = 1/27x27 = 1/729

となり、減速比は1/729 となるはず。

(以下2022.04.03 追記)

折角なので、より一般的に 1:n  と 1:p を組み合わせた場合の減速比の計算式を書いておきますね。

     a = 1/n                  ....  軸が一周=Aの外歯に対して軸が一周
     b = (1+a-b)/p  ....  軸が一周=Bの外歯に対して軸が(1+a-b)周

なので、

        b = (1 + 1/n-b)/p
        pb = 1+1/n-b
      pb+b = 1+1/n
    b(p+1) = (n+1)/n
         b = (n+1)/n(p+1)

となる。m=b-aだから、

m = b - a
  =  (n+1)/n(p+1) - 1/n
  =  (n+1)/n(p+1)  - (p+1)/n(p+1)    
  =  ((n+1)-(p+1))/n(p+1)
  =   (n-p)/n(p+1)

となります。例えば、1:15  と 1:11 を組み合わせた場合、

 m = (15-11)/15(11+1)
     = 4/15*12
     = 1/15*3 =1/45

となり、減速比は1:45。かなりの自由度がありそうです。 


小型自作二軸赤道儀 V2 P2

2022-03-19 21:09:56 | 小型二軸赤道儀

さて。小型自作二軸赤道儀 V2 P2。
p1が悲惨な運命だったので、気力を絞って作り直してみました。
p1との違いは、

  1. ステッパーモータを28mm角から42mmへ。
  2. モータの大型化に伴う設計変更各種
  3. 重りの重さは3Dプリンタで作成した部分にはかからない様に修正
  4. 全体的に強度を上げた
  5. ABSからPETGへ

という感じ。モータの大型化は全体の大きさが変わっただけでなくかなりの重量アップにつながって、「小型二軸・・・」というには大きくなりすぎてないかという感じがあります。サイズについては、ラズパイとアルディーノ、そしてコードまわりを吟味すればもう少し小さくは出来そうですね。

重りについては、こんなジョイントを使うことで樹脂の固定と重さを本体にのみかけるようにできたので特に問題なし。

PETGはABSよりかなり積層の強度が強いので自然に強度もあがったかな。
動作音のキーキーはどっかがこすれてる感じですがおいおい見ようと思います。

まだ使っていないけど、オールインワン設計なので、気楽に使えていいんじゃないかな。

うーん。ただちょっと完成まで時間かかりすぎたというのが正直な感想。なんか既に色々改良したい点も多いしなぁ。

また、ベースとして利用した「Skywather Star Quest」にはいろいろ不満ありかな。 当たり前ではあるけど安いのには理由がありますね。


L-eXtremeフィルタ

2022-03-14 18:38:46 | 天体写真

Facebookの天体関連のグループに入れてもらっている。
素晴らしい写真が次々に投稿されていて、感動し自分もぜひこんな写真を撮ってみたいものだ・・・と考えるがなかなか腕は上がらないし、そもそも根性がない。

で、道具に走る。と言っても高価なものは買えない。というかほとんどのものが高価で手が出ない。

そんな中、デュアルバンドフィルタというものが目についた。
赤い星雲のHa領域と青緑の星雲のOIII領域という2つのバンドに絞ったナローバンドフィルタのようだ。Ha領域に絞ったフィルタは過去に使ったことがあったがOIII領域というのは面白い。早速購入していざ、出陣。

過去に挑戦して、全く浮かび上がらなかったミルクポット星雲を撮ってみる。


1BKP150 f750 f5 コマコレ 、D5300改 ISO3200 20minx11枚 Vixen SE2赤道儀オートガイド。
さすがに暗い。露出時間は20min でも足りない感じ。
星雲自体は、けして綺麗ではないが取り敢えず初めて写すことができたので感動。

また、フクロウ星雲も撮ってみたが過去に撮ったものよりはいいかな。

BKP150 f750 f5 コマコレ 、D5300改 ISO3200 20minx5枚 Vixsen SE2赤道儀オートガイド 。


もう一つ、M81, M82も頑張ってみた。

BKP150 f750 f5 コマコレ 、D5300改 ISO3200 20minx11枚 Vixen SE2赤道儀オートガイド 。

右のM82は爆発的な星生成(スターバースト)が起こっていることで有名で、Ha領域のナローバンドフィルタで写すとそのスーパーウィンドが写るらしいということで撮ってみたのだが、ちょっとあんまりな写真になった。
それではと、M82,M81は昔、通常のフィルタで撮ったことがあったのを思い出し、それと無理やり合成してみた。

少し、らしくなったかな?

ということで、デュアルバンドフィルタ。なかなか面白い。カメラのレンズでも撮影してみたいので、Astro Duo-Narrowband Filter(Nikon用)も購入してみる予定。

ちなみにミルクポットを撮っているとき、裏ではV1にてプレアデスとカリフォルニア星雲を写してみた。


Tamron SP70-200mm f70mm D5300改 絞り F2.8  iso3200  2min x 90枚。自作2軸赤道儀オートガイド。

分子雲を写したかったのだけど、なかなか浮き上がってくれない。