〜かたることばが歌になる風になる〜

感性を磨こう

ヤマハミュージック主催の實川 風(じつかわかおる)という若手のピアニストのコンサートを聴いてきた。
当然ピアノはヤマハ。

ヤマハの創始者は和歌山の山葉さんという人で、この人がオルガンの修理を手がけたことがきっかけだったことを、随分前に何かで読んだ記憶がある。
自分の恩師が和歌山在住だったこと、恩師の計らいで学生時代、和歌山在住のヴァイオリンの生徒さんの伴奏もよくさせて頂いたし、先生に習っていたピアノの門下生や作曲科の学生さんがみな東京芸大に行ったり、和歌山は音楽家が沢山輩出されている地でもある 。

東京芸大で教授をされているここ出身のヴァイオリン奏者の方の中学、高校の初めのころ、言うのもおこがましいが、少しだけ伴奏をさせて頂いたことがあった。
最年少で日本音楽コンクールに入賞されて、受賞者たち出演のコンサートが催され、彼はタルティーニ作曲の「悪魔のトゥリル」という曲を演奏した。
その伴奏をさせて頂いた時私は大学3回生で、私にとって本格的なコンサートとして、ファッションのデザイン専門学校で勉強をした同級生の友人に衣装を作ってもらった。
高めに立ち上がったパフスリーブの(独裁で悪名を売ったフィリピンの、元大統領夫人イメルダさんが着ていたような)袖口は生地で作ったくるみボタンが沢山付いた長めのカフス、表身ごろは縦に細いピンタックが何本もある、高めのハイネックの白い光沢のあるサテンのブラウスと、ウエストが高めの黒のベルベットのストレートなロングスカート。
本番前に私の姿を見た彼の言った言葉「王子さまみたい」私の先生は笑いながら「あなた違うでしょう。王女さまでしょう!」
スカートを黒のニッカポッカ風ズボンに置き換えたら「ベルサイユのばら」のオスカルのような出で立ちに見えたかもしれない。
彼のインスピレーションから出た咄嗟の言葉が印象的で、彼の感性の一端を見た気がする。

實川さんのプログラムは、前半はショパンの「英雄」ポロネーズ、ベートーヴェンのソナタ「ワルトシュタイン」
休憩後はショパンエチュード作品25-1「エオリアンハープ」と作品10-12「革命」 スケルツォ2番
あとはリストの巡礼の年 第2年「イタリア」より
1,婚礼 6,ペトラルカのソネット第47番 7,ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」

日本列島が極寒の日の演奏は、ピアニストにとってかなり酷なことだったのだろうと思う。
演奏が始まった最初、低音部がやたら響いて中間から高音が響かないバランスの悪さに、やっぱりスタインウェイとは違うんだと思ったり、實川さんの音がソフトすぎて、ここっというところのキメ、キレがないなどと偉そうな感想を抱いていたが、実はピアノも演奏者も寒さのために中々あったまらなかったようで、深層部分の内面を深く追求したリストと、アンコールの「ショパンのノクターン遺作」と「ドビュッシーの花火」、3月に発売する自身のCDの宣伝だろう、収録曲の「ショパンのスケルツォ3番」の演奏で、本来のこの方のテクニックや音と情感、最後には圧倒的な凄みが会場を包み込んで聴衆を魅了した。

コンサート会場を出ると乾いた雪が舞っていた。息が白く刺すような寒さの中で、自分はこのような域まで中々たどり着くことはないけれど、それでもまだまだアンテナを張って感性を磨かねばならないと思い直した日だった。


我が家の庭の花などに散水するために貯めていた雨水が凍っている。風に吹かれてか波打っている

活動を終了した「女声合唱団風」のこと、「コーラス花座」のこと、韓国ドラマ、中国ドラマなど色々。

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